営業権はなぜ資産になるのか M&A時代の無形資産編

税理士
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会社を買収した際、工場や土地、機械設備だけでは説明できない価額が発生することがあります。

例えば純資産が1億円の会社を2億円で買収した場合、差額の1億円は何なのでしょうか。

その答えが「営業権(のれん)」です。

のれんは目に見えない資産でありながら、M&Aの世界では企業価値を左右する重要な存在です。

近年は中小企業の事業承継やM&Aが増加しており、税理士にとっても避けて通れないテーマとなっています。

今回は無形固定資産シリーズ第11回として、営業権(のれん)の本質について解説します。

のれんとは何か

営業権、いわゆる「のれん」とは、企業が持つ超過収益力を表すものです。

例えば、

・長年の顧客との信頼関係

・有名なブランド

・優秀な従業員

・独自ノウハウ

・地域での知名度

などです。

これらは貸借対照表に直接表れないことが多いものの、企業の収益力を支えています。

買収する側は、その価値を評価して純資産以上の金額を支払います。

その差額が営業権として認識されるのです。

なぜ目に見えないものが資産になるのか

営業権には形がありません。

土地のように登記もできません。

機械のように触ることもできません。

それでも資産として扱われる理由は、将来の利益を生み出す力があるからです。

例えば地域で圧倒的なシェアを持つ会社には、顧客基盤という大きな価値があります。

その価値が将来の利益につながる以上、経済的価値を持つ資産として評価されるのです。

これは特許権や商標権と同じ無形資産の考え方です。

中小企業でものれんは存在する

のれんという言葉を聞くと、大企業のM&Aを想像するかもしれません。

しかし実際には中小企業でも日常的に発生しています。

例えば、

地域の人気飲食店

老舗の製造業

固定客の多い理美容業

専門技術を持つ建設会社

などです。

帳簿上の純資産は小さくても、高い収益力を持つ企業は数多く存在します。

その価値を評価した結果として営業権が発生します。

むしろ中小企業M&Aでは、営業権の割合が大きくなるケースも珍しくありません。

のれんの正体は信用力

営業権の本質を一言で表すなら「信用力」です。

顧客が繰り返し利用してくれる。

従業員が定着している。

取引先との関係が安定している。

地域社会から信頼されている。

こうした要素は決算書には表れません。

しかし企業価値には大きく影響します。

実は税理士事務所にも営業権があります。

長年築いてきた顧問先との信頼関係こそが最大の資産だからです。

AI時代ほど営業権の価値は高まる

AIが発達すると、多くの業務が自動化されます。

会計処理や単純作業の価値は相対的に低下していくでしょう。

しかし、

顧客との信頼関係

ブランド力

提案力

専門性

といった営業権の源泉は簡単には代替できません。

だからこそAI時代には、有形資産より無形資産の重要性が高まると考えられています。

企業価値の中心は工場や設備から、信頼や知識へ移りつつあるのです。

税理士が理解すべき理由

近年は後継者不足を背景に、中小企業のM&Aが急増しています。

その際、

「なぜ純資産の何倍もの価格になるのか」

という質問を受けることがあります。

その説明の中心になるのが営業権です。

税理士が営業権を理解していなければ、企業価値の説明もできません。

これからの税理士には、申告書作成だけでなく企業価値を説明する能力も求められています。

営業権は一朝一夕には作れない

設備投資はお金を出せば購入できます。

しかし営業権は違います。

顧客との信頼関係は長年かけて築くものです。

ブランドも一朝一夕には生まれません。

つまり営業権は企業活動の積み重ねそのものなのです。

だからこそ買収時には高く評価されることがあります。

目に見えないから価値がないのではありません。

目に見えないからこそ真似しにくい価値なのです。

税理士事務所にも営業権がある

税理士業界でも事業承継やM&Aが増えています。

その際に評価されるのは、

・顧問先数

・継続率

・地域での信用

・専門分野

などです。

つまり税理士事務所にも営業権があります。

これは税理士自身にとっても身近なテーマです。

顧問先との信頼関係を築くことは、将来の事務所価値を高めることにもつながるのです。

結論

営業権(のれん)は、企業が持つ信用力や超過収益力を表す無形資産です。

目に見える資産ではありませんが、将来の利益を生み出す力があるため企業価値の重要な要素となります。

中小企業M&Aが増える時代において、営業権の理解は税理士にとって必須の知識になりつつあります。

AI時代だからこそ、信頼やブランドといった目に見えない資産の価値はさらに高まっていくでしょう。

参考

近畿税理士会研修資料(2026年)
「個別論点講座 無形固定資産の税務」 税理士 中嶌祥貴先生

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