同じパソコンを購入したにもかかわらず、会社によって固定資産の取得価額が違うことがあります。
例えば本体価格100万円、消費税10万円の場合、
ある会社は100万円で資産計上し、
別の会社は110万円で資産計上しています。
どちらかが間違っているのでしょうか。
実はどちらも正しい場合があります。
その違いを生み出しているのが「税込経理」と「税抜経理」です。
今回は無形固定資産シリーズ第8回として、取得価額と消費税の関係について解説します。
なぜ取得価額が違うのか
企業が資産を取得した場合、消費税の取扱いによって取得価額が変わります。
例えば、
本体価格 100万円
消費税 10万円
合計支払額 110万円
の場合を考えてみます。
このとき取得価額が100万円になる場合と110万円になる場合があります。
その違いは経理処理方法にあります。
税務上は消費税をどのように処理するかによって取得価額が変わるのです。
税抜経理とは何か
税抜経理では、消費税を本体価格と区分して処理します。
先ほどの例では、
固定資産 100万円
仮払消費税 10万円
となります。
つまり消費税部分は資産の取得価額に含めません。
なぜなら仮払消費税は後日、消費税申告の際に控除できる可能性があるからです。
会社にとって実質的な負担ではないという考え方です。
そのため取得価額は100万円になります。
税込経理とは何か
一方、税込経理では消費税も含めて処理します。
先ほどの例では、
固定資産 110万円
となります。
消費税を区分せず、支払った総額を取得価額として扱います。
そのため減価償却の対象となる金額も110万円になります。
実際に支払った金額全体を資産の取得価額と考える処理方法です。
免税事業者はどうなるのか
ここで重要なのが免税事業者です。
免税事業者は消費税の仕入税額控除を受けられません。
つまり支払った消費税は実質的なコストになります。
そのため税務上は消費税を含めた金額が取得価額になります。
例えば、
本体価格 100万円
消費税 10万円
の場合、
取得価額は110万円です。
インボイス制度導入後も、この基本的な考え方は変わっていません。
同じ資産でも減価償却費が変わる
取得価額が違えば減価償却費も変わります。
例えば耐用年数5年の資産なら、
取得価額100万円の場合と
取得価額110万円の場合では、
毎年の減価償却費に差が生じます。
つまり消費税の処理方法は法人税計算にも影響するのです。
単なる消費税の問題ではなく、所得計算にも関係してきます。
ソフトウェア取得でも同じ
この考え方は無形固定資産にも適用されます。
例えばソフトウェアを購入した場合、
本体価格だけを取得価額にするのか、
消費税を含めるのか、
という判断が必要になります。
AIシステムや業務ソフトの導入費用でも同様です。
近年はIT投資が増加しているため、この論点はますます重要になっています。
特に中小企業では設備投資よりもソフトウェア投資の方が多いケースも珍しくありません。
税務調査で確認されるポイント
税務調査では、
「会社の経理処理方針と実際の処理が一致しているか」
が確認されます。
税抜経理を採用しているにもかかわらず、一部だけ税込処理している場合などは問題になります。
また、
固定資産
少額減価償却資産
一括償却資産
の判定にも取得価額が関係します。
そのため消費税の処理方法を誤ると、思わぬ税務リスクにつながることがあります。
インボイス制度後に増えた注意点
インボイス制度開始後は、仕入税額控除の可否がさらに重要になりました。
適格請求書が保存されているかどうかによって、実質的な税負担が変わる場合があります。
取得価額の考え方そのものは変わりませんが、
・課税事業者か
・免税事業者か
・仕入税額控除できるか
という視点は以前より重要になっています。
税理士には法人税と消費税の両面から判断する力が求められています。
税理士に必要な総合的な視点
取得価額の計算は固定資産税務だけの問題ではありません。
法人税
消費税
インボイス制度
減価償却
これらすべてが関係しています。
税理士は単に仕訳を確認するだけではなく、
その会社がどの経理方式を採用しているのか、
消費税の取扱いはどうなっているのか、
を総合的に理解する必要があります。
そこに実務家としての力量が表れるのです。
結論
同じ資産を購入しても、税込経理か税抜経理かによって取得価額は変わります。
税抜経理では消費税を取得価額に含めず、税込経理や免税事業者では含めることが一般的です。
この違いは減価償却費や法人税額にも影響するため、決して小さな論点ではありません。
固定資産税務を正しく理解するためには、消費税との関係を含めて考えることが重要なのです。
参考
近畿税理士会研修資料(2026年)
「個別論点講座 無形固定資産の税務」 税理士 中嶌祥貴先生