企業のAI導入が加速するなか、国内コンサルティング業界がかつてない拡大局面を迎えています。2026年度には大手コンサルティング会社7社の人員が初めて10万人を超える見通しとなりました。
一方で、生成AIの進化によって「コンサルタントは不要になるのではないか」という声も聞かれます。実際、米国では大手コンサルティング会社が人員削減を進めています。
では、AI時代にコンサルタントの仕事は本当に減るのでしょうか。それとも新たな価値を生み出すのでしょうか。
今回は、コンサルティング業界の変化から、これからの時代に求められる専門家の姿について考えてみたいと思います。
国内コンサル市場はなぜ急拡大しているのか
日本のコンサルティング市場は過去最大規模へ拡大しています。
背景にあるのは企業を取り巻く環境変化です。
DX推進、AI導入、サプライチェーン再構築、人的資本経営、ESG対応、アクティビスト対策など、企業経営者が向き合う課題は年々複雑化しています。
ところが、多くの企業にはその分野の専門人材が十分に存在しません。
日本企業は終身雇用を前提としてきたため、社内に蓄積された知識は豊富でも、新しい分野への対応力には限界があります。
そこで外部専門家としてコンサルタントへの需要が高まっています。
特にAI分野は企業自身にも正解が分からない世界です。
分からないことを一緒に考えながら進める「伴走支援」が求められているのです。
AIはコンサルタントの敵なのか味方なのか
生成AIの登場によって、コンサルタントの仕事は大きく変わり始めています。
従来、若手コンサルタントが担当していた業務には次のようなものがありました。
・情報収集
・市場調査
・競合分析
・資料作成
・議事録作成
・データ整理
こうした業務の多くはAIが短時間で実行できるようになりました。
数時間かかっていた調査が数分で終わることも珍しくありません。
その意味では、AIはコンサルタントの仕事を奪っています。
しかし同時に、AIはコンサルタントの能力を大幅に高める道具にもなっています。
電卓が会計士を不要にしなかったように、AIもコンサルタントを不要にはしないでしょう。
むしろ優秀な人材ほどAIを活用して生産性を高める時代が始まっています。
これから消えるコンサルタントとは
AI時代に最も厳しい立場になるのは、知識の仲介だけを行うコンサルタントです。
過去には、
「制度を説明する」
「事例を紹介する」
「資料を作成する」
だけでも価値がありました。
しかし現在は、AIが膨大な知識を瞬時に提供できます。
単なる情報提供だけでは差別化が難しくなります。
税理士業界でも同じ現象が起きています。
税法の条文や通達を説明するだけならAIでもできます。
しかし、
「この経営者の場合はどう考えるべきか」
「家族関係を踏まえると何が最適か」
「実行するために誰を巻き込むべきか」
という判断は簡単にはAIに代替できません。
専門知識そのものの価値は下がりますが、知識を現実に適用する能力の価値はむしろ高まるのです。
これから求められるのは伴走型専門家
記事の中で印象的だったのは、コンサルティング会社がFDE(顧客企業に常駐してAI導入を支援する専門人材)の育成を進めている点です。
これは単なる助言業から実行支援業への変化を意味しています。
企業が本当に求めているのは報告書ではありません。
変化を実現することです。
実際には、
計画を作る
↓
関係者を説得する
↓
制度を設計する
↓
実行する
↓
定着させる
という長いプロセスがあります。
このプロセス全体を支援できる人材が求められています。
つまり専門家の価値は「答えを知っている人」から「変化を実現できる人」へ移行しているのです。
税理士にも同じ変化が起きている
この流れは税理士業界にも当てはまります。
申告書作成や会計処理の多くはAIやクラウド会計によって自動化されていくでしょう。
しかし、
相続対策
事業承継
年金戦略
老後資金設計
家族信託
認知症対策
国際相続
といったテーマは、人間同士の対話と意思決定が欠かせません。
むしろ人生100年時代には、こうした複雑な相談需要は増えていく可能性があります。
だからこそ今後は「計算代行型」よりも「相談伴走型」の専門家が求められるのではないでしょうか。
結論
国内コンサルティング業界はAI需要を背景に10万人規模へ拡大しています。
しかし、その成長が永続するとは限りません。米国では既にAIによる効率化を背景に人員削減が始まっています。
今後減少するのは、情報収集や資料作成を中心とする業務でしょう。
一方で増えていくのは、組織や人を動かし、変化を実現する伴走型の専門家です。
AIは知識を提供できますが、人の不安を理解し、利害関係者を調整し、行動を後押しすることは簡単ではありません。
AI時代に価値を持つのは、「知っている人」ではなく「実現できる人」です。
コンサルタントも税理士も、そしてあらゆる専門職も、その方向へ進化することが求められているのだと思います。
参考
日本経済新聞(2026年6月20日 朝刊)
国内コンサル、10万人超え 大手7社、AI導入支援で膨張 米国は削減の傾向強く