住宅ローンの適正額はどこで決まるのか 金利上昇時代の家計防衛術

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

住宅ローンは人生で最も大きな借金といわれます。

これまでは超低金利が続き、「借りられるだけ借りる」という考え方も一定の合理性がありました。しかし、日本銀行の利上げによって状況は変わり始めています。

住宅価格は高騰したまま、住宅ローン金利は上昇局面に入りました。これから住宅を購入する人だけでなく、すでに変動金利で借りている人にとっても無関係ではありません。

今後の住宅ローンとの向き合い方について考えてみたいと思います。

借りられる額と借りてよい額は違う

住宅ローンを検討するとき、多くの人はまず金融機関の審査額を確認します。

しかし、ここで注意しなければならないのは、「借りられる額」と「借りてよい額」は全く違うということです。

金融機関は返済能力を一定の基準で審査しますが、その基準はあくまで貸し手の視点です。

一方で、家計の幸福度や将来の生活の安定は借り手自身の問題です。

たとえ審査に通ったとしても、

・教育費が払えない

・老後資金が積み立てられない

・旅行や趣味を諦める

という状況になれば、その住宅ローンは適正とは言えません。

住宅ローンは「審査通過額」ではなく、「安心して返済できる額」で考えるべきです。

返済比率30%が一つの分岐点

住宅ローンを考えるうえで重要な指標が返済比率です。

返済比率とは、

年間返済額 ÷ 年間手取り収入

で計算されます。

記事でも紹介されていましたが、実際に返済している人の調査では、返済比率が30%を超えると負担感が大きくなる傾向があります。

例えば手取り月収40万円の場合、

・返済比率20%=月8万円

・返済比率25%=月10万円

・返済比率30%=月12万円

となります。

月12万円の返済ができるかどうかではなく、

「12万円払いながら将来の資産形成もできるか」

という視点が重要です。

住宅ローンだけで家計がいっぱいになる状態は避けたいところです。

見落としやすい住宅購入後の支出

住宅購入時に注意したいのは、住宅ローン以外の支出です。

マンションなら

・管理費

・修繕積立金

・駐車場代

があります。

戸建てでも

・外壁塗装

・屋根修理

・給湯器交換

・設備更新

など将来の修繕費が発生します。

さらに近年は建築コストや人件費の上昇で修繕費も高騰しています。

住宅ローン返済額だけで判断すると、購入後に思わぬ負担に苦しむ可能性があります。

住宅ローンは「家にかかる総コスト」の一部に過ぎないことを忘れてはいけません。

教育費と住宅費は同時にやってくる

住宅購入世代の多くは子育て世代でもあります。

住宅ローン返済が本格化する時期は、子どもの教育費が増える時期と重なります。

大学進学時には、

・入学金

・授業料

・下宿費用

など大きな支出が発生します。

住宅ローン返済に余裕がないと、教育費のために借金をしたり、老後資金を取り崩したりすることになります。

住宅ローンは35年という長期契約です。

現在の収入だけでなく、

・子どもの成長

・転職

・介護

・病気

なども想定した余裕が必要です。

繰上返済だけが正解ではない

住宅ローンを抱える人の中には、

「余裕資金はすべて繰上返済に回すべきではないか」

と考える人もいます。

もちろん、繰上返済には利息負担を減らす効果があります。

しかし現在の変動金利は1%前後です。

仮に長期投資でそれ以上の期待リターンが得られるなら、資金を投資に回した方が合理的な場合もあります。

また、繰上返済をしすぎて手元資金が不足すると、病気や失業などの緊急事態に対応できません。

まずは生活費半年から1年分程度の緊急予備資金を確保することが優先です。

そのうえで、

・繰上返済

・NISA積立

・iDeCo

・現金預金

のバランスを考えることが大切です。

人生100年時代の住宅購入は資産形成とセットで考える

かつては住宅ローンを完済すれば老後は安心と言われました。

しかし人生100年時代では考え方が変わります。

住宅ローンを返済しながら、

・老後資金

・医療費

・介護費

・長寿リスク

にも備えなければなりません。

住宅は重要な資産ですが、住宅だけでは老後の生活費は生み出しません。

住宅取得と資産形成を同時に進める発想がこれまで以上に重要になります。

結論

金利上昇時代の住宅ローンで最も重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら豊かな人生を維持しながら返済できるか」です。

返済比率30%以内は一つの目安ですが、それだけで安心とは言えません。

教育費、老後資金、修繕費、趣味や旅行など、自分が大切にしたい支出を守りながら返済できるかを考える必要があります。

住宅ローンは人生を豊かにするための手段です。家を買うことが目的になり、将来の自由を失ってしまっては本末転倒です。

人生100年時代の住宅購入では、「住宅」と「資産形成」を両立できる借入額こそが、本当の適正額なのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞(2026年6月20日 朝刊)

「<メインストーリー>住宅ローン、適正な借入額 返済額、手取り30%以内目安」

タイトルとURLをコピーしました