節税はどこまで許されるのか 税理士倫理編 第3回

税理士
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税理士に相談する人の多くは、少しでも税金を減らしたいと考えています。

それは当然のことです。

法律で認められた範囲内で税負担を軽減することは、納税者の正当な権利だからです。

しかし、その一方で税理士は常に難しい問題に直面します。

「法律上は問題ないが、本当にやるべきなのか」

という問題です。

資産税の第一人者である本郷尚税理士は、若い頃の経験を振り返りながら、税理士として最も大切な教えとして「法形式の濫用の禁止」を挙げています。

人生100年時代において、税理士の価値を考えるうえで避けて通れないテーマだと思います。

節税と脱税は違う

まず確認しておきたいことがあります。

節税と脱税はまったく違います。

脱税は法律違反です。

一方で節税は法律が認めた範囲内で行うものです。

税理士は脱税を支援してはいけません。

これは当然です。

しかし現実には、節税と脱税の間には広いグレーゾーンが存在します。

法律の文言だけを見れば問題ない。

しかし制度の趣旨から考えると疑問が残る。

そのようなケースは決して少なくありません。

税理士はその境界線を常に考えながら仕事をしています。

法の穴を探す仕事ではない

本郷先生は若い頃、負担付贈与を活用した大規模な相続対策に関わった経験を語っています。

当時の制度上は違法ではありませんでした。

しかし結果として家族間の大きな対立を招きました。

税法上は成功だったかもしれません。

しかし人生全体で見れば成功とは言えなかったのです。

この経験の後、本郷先生はTKC創業者の飯塚毅氏から重要な教えを受けます。

それが「法形式の濫用の禁止」です。

法律の網の目をくぐるような仕事をするな。

堂々と仕事をしなさい。

この教えは税理士だけでなく、あらゆる専門家に通じるものだと思います。

正しいことと得することは違う

人は利益を求めます。

税金が安くなると言われれば魅力を感じます。

しかし、得することと正しいことは必ずしも一致しません。

例えば相続対策です。

税負担を減らすために特定の相続人だけが利益を受ける仕組みを作ったとします。

税金は減るかもしれません。

しかし家族の信頼関係は壊れるかもしれません。

税金はお金で解決できます。

しかし家族関係は簡単には修復できません。

税理士が見るべきものは税額だけではありません。

相談者の人生そのものです。

制度の趣旨を考える力

税法は非常に複雑です。

条文だけを追いかけても本質は見えてきません。

なぜその制度が作られたのか。

何を守ろうとしているのか。

制度の趣旨を理解することが重要です。

例えば相続税には資産格差の固定化を防ぐという側面があります。

事業承継税制には中小企業を守る目的があります。

住宅取得支援税制には住環境整備という政策目的があります。

制度には必ず背景があります。

その背景を無視して形式だけを利用すると、制度本来の目的から外れてしまうことがあります。

AI時代だからこそ倫理が重要になる

近年はAIによって税務情報へのアクセスが容易になりました。

節税スキームも検索すればすぐ見つかります。

将来的にはAIが複雑な税務判断を支援する場面も増えるでしょう。

しかしAIは善悪を判断しません。

法律上可能かどうかは教えてくれます。

しかし、それを実行するべきかどうかは教えてくれません。

そこに人間の役割があります。

税理士の価値は知識だけではありません。

経験です。

倫理観です。

価値判断です。

AI時代になるほど、その重要性は高まるのではないでしょうか。

信頼は一瞬で失われる

税理士にとって最大の資産は何でしょうか。

知識でしょうか。

資格でしょうか。

顧客数でしょうか。

もちろんどれも大切です。

しかし最も重要なのは信頼です。

信頼は長い年月をかけて築かれます。

しかし失う時は一瞬です。

目先の利益を優先し、無理な節税提案を行えば、信頼を失う可能性があります。

人生100年時代の税理士には長く活躍することが求められます。

だからこそ短期的な利益よりも長期的な信頼を選ぶ姿勢が重要になります。

結論

税理士は納税者の味方です。

しかし、単に税金を減らすだけが仕事ではありません。

法律の趣旨を理解し、依頼者の人生全体を見ながら助言することが求められます。

本郷尚先生が大切にしてきた「法形式の濫用の禁止」という考え方は、まさにその原点です。

人生100年時代では、専門家との付き合いも長くなります。

だからこそ、目先の節税ではなく、長期的な信頼を重視する姿勢が重要になります。

税理士の価値とは、税金を安くすることではなく、依頼者が胸を張って生きられる選択を支援することにあるのかもしれません。

参考

税のしるべ 2026年6月15日

インタビュー等「私が見た 税を巡る 点と線」

本郷尚氏に過去のエピソード、資産税関係の最近の動向を聞く、貸付用不動産の相続税評価額の改正は根本的な問題に触れず

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