近年、コンサルタントという職業は人気を集めています。独立開業のハードルが比較的低く、知識や経験を活かして働けるためです。特に定年後のセカンドキャリアとしても注目されています。
しかし、その一方で経営コンサルティング業界では倒産や休廃業が過去最多を更新したという報道がありました。
「コンサルタントは儲かる仕事」というイメージがありますが、現実はそれほど単純ではありません。なぜコンサルタントが増える一方で、廃業する人も増えているのでしょうか。そして人生100年時代に本当に求められるコンサルタントとはどのような存在なのでしょうか。
今回は、コンサルティング業界の現状から、これからの士業や専門家の生き残り戦略について考えてみます。
コンサルタントの倒産が増える理由
帝国データバンクによると、2026年1~5月の経営コンサルティング業の倒産・休廃業解散件数は242件となり、過去最多を記録しました。
背景には市場環境の変化があります。
近年はSNSやAIの発達によって、知識そのものの価値が低下しています。以前であれば専門家しか知らなかった情報が、今では誰でもインターネットで入手できます。
また、生成AIの普及によって簡単な分析や提案書作成は短時間で行えるようになりました。
つまり、
「知識を教えるだけのコンサルタント」
の価値が急速に低下しているのです。
顧客が求めるものは情報ではなく、実行支援や意思決定支援へと移りつつあります。
専門知識だけでは差別化できない時代
コンサルタントの増加は競争激化を意味します。
税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、FPなどの専門家も例外ではありません。
かつては資格を持っているだけで一定の差別化ができました。しかし現在は資格保有者が増え、さらにAIが知識提供を代替し始めています。
その結果、
「知識を持っている人」
ではなく、
「顧客の課題を解決できる人」
が選ばれる時代になりました。
例えば相続相談でも税法の説明だけでは価値になりません。
家族関係や認知症対策、年金、介護、住まい、資産運用などを総合的に考えながら相談者を支援できる人が求められています。
人生100年時代は伴走型コンサルタントが強い
人生100年時代になると、一度の相談で終わる課題は減少します。
老後資金の準備、退職金の活用、年金受給戦略、相続対策、認知症対策などは数十年単位で続くテーマです。
そのため、
「答えを教える専門家」
よりも
「一緒に考え続ける伴走者」
の価値が高まります。
顧客は単なる知識ではなく安心感を求めています。
税金の計算はAIができても、
「私はどうしたらいいのでしょうか」
という不安に寄り添うことは人間にしかできません。
今後のコンサルタントには専門知識と同じくらい信頼関係を構築する力が求められるでしょう。
シニア専門家に大きな追い風が吹いている
興味深いのは、人生経験が豊富なシニア世代ほど有利になる可能性があることです。
企業経営、住宅購入、子育て、親の介護、資産形成などを実際に経験した人の助言は重みがあります。
特に50代後半から70代にかけては、自らも老後や相続を現実的に考える世代です。
同じ悩みを持つ相談者に対して共感しながら助言できることは大きな強みになります。
知識だけならAIが提供できます。
しかし経験から生まれる判断力や共感力は簡単には代替できません。
人生100年時代のコンサルタント市場では、経験を資産化できる人ほど競争力を持つのではないでしょうか。
これから生き残るコンサルタントの条件
今後のコンサルタントに求められる条件は大きく三つあります。
第一に専門性です。
誰にも負けない得意分野を持つことが重要です。
第二に発信力です。
顧客は専門家を探す前にインターネットで検索します。ブログ、note、YouTubeなどを通じて価値を発信し続けることが必要です。
第三に伴走力です。
単発の相談ではなく、継続的な関係を築きながら顧客を支援する力が重要になります。
この三つを兼ね備えた専門家はAI時代でも強い競争力を維持できるでしょう。
結論
経営コンサルティング業界で倒産や休廃業が過去最多となった背景には、知識提供型ビジネスの限界があります。
AIの普及によって情報の価値は低下し、専門知識だけでは差別化が難しくなっています。
しかし悲観する必要はありません。
人生100年時代に求められるのは、知識を売る専門家ではなく、相談者とともに考え、行動し、長期的に伴走する専門家です。
これからの時代は資格や肩書よりも、経験、信頼、発信力が大きな価値になります。
コンサルタントの倒産増加は業界の衰退ではなく、本物の専門家が選ばれる時代の到来を示しているのかもしれません。
参考
日本経済新聞 2026年6月18日夕刊
「コンサル倒産・休廃業が過去最多 1~5月11%増、242件」