住宅価格や家賃の上昇が続いています。特に東京都心では再開発が進み、街は便利になる一方で、一般家庭にとっては「住み続けられる街」でなくなりつつあります。
こうした状況の中で東京都が力を入れ始めたのが「アフォーダブル住宅」です。相場より安い家賃で提供される住宅を増やし、子育て世帯や若い世代の居住を支援する仕組みです。
これは単なる住宅政策ではありません。人生100年時代における新しい住まい方や資産形成の考え方にも大きな影響を与える可能性があります。
家賃高騰が家計を圧迫する時代
東京23区のマンション賃料は上昇が続いています。
住宅価格の上昇だけでなく、賃貸住宅の家賃も毎年のように値上がりしています。都心部では共働き世帯であっても住居費負担が大きくなり、子育て世帯にとっては深刻な問題になっています。
人生100年時代では教育費、医療費、老後資金など長期的な支出を考えなければなりません。その中で住居費が家計を圧迫し続ければ、資産形成どころではなくなります。
住居費を抑えることは、投資のリターンを高めること以上に重要な資産防衛策になる場合があります。
アフォーダブル住宅とは何か
アフォーダブル住宅とは、おおむね市場家賃の8割以下で提供される賃貸住宅です。
米国のニューヨークや英国のロンドンでは以前から導入されており、住宅価格高騰への対策として活用されてきました。
東京都では新婚世帯や子育て世帯を主な対象として整備を進めています。
例えば築地再開発では住友不動産が子育て世帯向け住宅を整備し、渋谷区神南でも東急不動産が同様の取り組みを検討しています。
これまで再開発は高級マンションやオフィスビルが中心でした。しかし今後は「誰が住める街をつくるのか」という視点が重視されるようになります。
再開発の価値基準が変わり始めた
今回の制度で注目すべきなのは、東京都がアフォーダブル住宅を整備する事業者に対して容積率の緩和を認める点です。
従来の再開発では、
・広場を作る
・歩行者空間を整備する
・地下鉄と接続する
といった公共貢献が評価対象でした。
これに対し今回の制度では、
「住める住宅を供給すること」
そのものが公共貢献として評価されます。
都市開発の目的が単なる不動産価値の向上から、住民の生活基盤の維持へと変わり始めているのです。
これは今後の日本の都市政策における大きな転換点になるかもしれません。
持ち家神話はさらに変化する可能性がある
日本では長らく「家は買うもの」という価値観が主流でした。
しかし人生100年時代になると話は変わります。
60歳以降も働き続ける人が増えます。
子どもの独立後に住み替える人も増えます。
医療や介護の事情で移動する可能性もあります。
こうした時代においては、住宅を所有することよりも柔軟に住み替えられることの価値が高まります。
アフォーダブル住宅の供給が増えれば、無理に高額な住宅ローンを組まなくても都市部で暮らし続ける選択肢が広がります。
「家を買うことが人生のゴール」という発想は徐々に変化していくかもしれません。
空き家活用が新たな住宅供給を生む
もう一つ注目したいのが空き家活用です。
政府は都心通勤圏の空き家リフォーム支援を始めています。
日本全国では空き家が増加していますが、一方で都市部では住宅不足が続いています。
これは住宅そのものが足りないのではなく、住宅が必要な場所と余っている場所が一致していないことを意味します。
今後は
・空き家のリノベーション
・オフィスから住宅への転換
・既存マンションの再活用
といった方法が重要になります。
新築だけではなく、既存ストックを活かす時代が始まっているのです。
人生100年時代の住まい戦略とは
人生100年時代において住まいは単なる生活の場ではありません。
家計管理、資産形成、働き方、子育て、介護、健康のすべてに関わる基盤です。
今後は
・持ち家か賃貸か
・都心か郊外か
・購入か住み替えか
という二者択一ではなくなります。
その時々のライフステージに応じて最適な住まいを選択する柔軟性が重要になります。
アフォーダブル住宅はその選択肢を増やす新しい社会インフラとして期待されています。
結論
東京都が進めるアフォーダブル住宅政策は、単なる家賃補助策ではありません。再開発による都市の成長と住民の暮らしを両立させる新しい試みです。
人生100年時代では、住まいは一生に一度の買い物ではなく、生涯にわたって最適化していく生活インフラになります。
これからの時代は「家を持つこと」よりも、「自分に合った住まいを選び続けること」が豊かな人生を支える重要な力になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年6月18日朝刊)
「都心再開発で割安賃貸 家賃高騰、都が規制緩和」
日本経済新聞(2026年6月18日朝刊)
「アフォーダブル住宅 家賃は相場の8割以下」