銀行の不動産融資はなぜ123兆円まで増えたのか 不動産価格上昇と融資額が同時に膨らむ仕組み編

政策

銀行が不動産会社などに貸しているお金が大きく増えています。

国内銀行の不動産業向け融資残高は2026年6月時点で約123兆円に達しました。前年同月と比べても8パーセント程度増えています。

なぜ銀行から不動産業への融資がこれほど増えているのでしょうか。

背景には、不動産取引そのものが活発になっていることだけではなく、不動産価格が上昇するほど1件当たりの融資額も大きくなりやすいという仕組みがあります。

不動産価格と銀行融資は別々に動いているのではありません。

両者は密接につながっています。

不動産業向け融資とは何か

銀行の融資というと、一般企業への運転資金や設備資金を思い浮かべるかもしれません。

しかし、銀行にとって不動産業は非常に大きな融資先の1つです。

例えば不動産会社がマンションを開発するときには、土地の取得費や建築費など多額の資金が必要になります。

オフィスビルや物流施設、ホテル、データセンターなどを開発する場合にも巨額の資金が必要です。

すべてを自己資金で賄う企業は少なく、多くの場合は銀行などから資金を借ります。

こうした不動産会社や不動産関連事業者に対する貸し出しが不動産業向け融資です。

融資残高は123兆円まで増えました

日本銀行の統計によると、国内銀行の不動産業向け融資残高は2026年6月時点で123兆円を超えています。

前年同月比では約8パーセント増加しています。

さらに長い期間で見ると増加の大きさが分かります。

2022年6月には約93兆円でした。

それが2026年6月には約123兆円となっています。

わずか4年間で約30兆円増えた計算になります。

もちろん、この数字だけで不動産融資が危険だと判断することはできません。

重要なのは、なぜ融資残高がこれほど増えているのかを見ることです。

不動産価格が上がると必要な借入額も増えます

分かりやすい例を考えてみましょう。

ある不動産会社が10億円の物件を購入するとします。

自己資金を2億円用意して、残りの8億円を銀行から借りれば、銀行融資は8億円です。

ところが同じような物件の価格が15億円まで上昇したらどうでしょうか。

同じような割合で銀行融資を利用すれば、必要になる借入額も大きくなります。

物件の数が増えていなくても、物件価格が上がるだけで1件当たりの融資額は膨らむのです。

これが不動産価格上昇と銀行融資が同時に拡大しやすい理由の1つです。

建築費の上昇も融資額を押し上げます

不動産価格だけではありません。

マンションやオフィス、ホテルなどを新しく建設する場合には建築費も重要です。

資材価格や人件費が上昇すれば、同じ規模の建物を建設する場合でも必要な資金が増えます。

以前なら100億円で完成した事業が、建築費の上昇によって120億円必要になることも考えられます。

自己資金の割合が同じなら、銀行から調達する金額も増えることになります。

つまり銀行の不動産融資が増える背景には、物件価格だけでなく土地代や建築費など不動産事業全体の大型化があります。

融資が増えるとさらに不動産を買いやすくなります

不動産価格と融資の関係には、もう1つ重要な特徴があります。

銀行が積極的に融資すれば、不動産会社や投資家は大きな物件を購入しやすくなります。

購入できる人が増えれば、不動産への需要が強くなります。

需要が強くなれば、不動産価格を押し上げる要因になります。

すると高くなった不動産を購入するため、さらに大きな融資が必要になります。

不動産価格が上昇するから融資額が増える。

融資を受けやすくなるから不動産を購入できる人が増える。

この2つが同時に進むことがあります。

銀行にとって不動産は融資しやすい面があります

不動産融資には銀行側から見た特徴もあります。

不動産には土地や建物という目に見える資産があります。

銀行はこれを担保として利用できます。

借り手が返済できなくなった場合には、担保となっている不動産を売却して融資したお金の回収を図ることができます。

そのため、無担保融資と比べると銀行が融資判断をしやすい面があります。

ただし、ここには注意点があります。

担保となっている不動産の価値がいつまでも同じとは限らないからです。

融資が大型化すると1件の失敗も大きくなります

不動産価格が上昇すると、銀行の融資額も大型化します。

例えば1件10億円の融資と1件100億円の融資では、同じ1件の融資でも銀行に与える影響は大きく異なります。

融資先が順調に返済している間は問題ありません。

しかし、事業が失敗して返済できなくなった場合には、大型融資ほど銀行が被る可能性のある損失も大きくなります。

特定の企業や特定の不動産分野に融資が集中していれば、さらに影響が大きくなる可能性があります。

そのため銀行は融資残高だけでなく、どの分野にどれだけ融資しているかという集中リスクも管理する必要があります。

金利上昇で状況が変わる可能性があります

不動産融資を考えるうえで、これから特に重要になるのが金利です。

低金利であれば、多額のお金を借りても利息負担を抑えられます。

ところが金利が上昇すると、同じ借入額でも利息負担が増えます。

不動産から得られる賃料収入が変わらないのに支払う利息だけが増えれば、不動産事業の採算は悪化します。

さらに不動産投資に慎重になる投資家が増えれば、不動産価格にも影響する可能性があります。

不動産価格の上昇と融資拡大が同時に進んできた局面から、金利上昇によって環境が変わる可能性があるわけです。

123兆円という数字だけで判断してはいけません

不動産業向け融資が123兆円に達したという数字を見ると、その大きさに目が向きます。

しかし本当に重要なのは金額そのものではありません。

融資先に十分な返済能力があるのか。

不動産価格が下落しても返済を続けられるのか。

特定の企業や分野に融資が集中していないか。

銀行が担保となる不動産を適切に評価しているか。

こうした融資の中身を見る必要があります。

不動産価格が上昇しているときほど問題は表面化しにくくなります。

だからこそ価格が高い時期に、銀行の融資審査やリスク管理が重要になります。

結論

銀行の不動産業向け融資が123兆円規模まで増えた背景には、不動産取引の増加だけではなく、不動産価格や建築費の上昇によって1件当たりの必要資金が大きくなっていることがあります。

物件価格が上がれば、それを購入するための借入額も増えます。

銀行から資金を借りやすければ不動産への需要が増え、それが価格を支える方向に働くこともあります。

こうして不動産価格と銀行融資が同時に膨らむことがあります。

問題になるのは、この流れが逆回転したときです。

金利上昇によって不動産事業の採算が悪化し、不動産価格が下落すれば、銀行が融資するときに前提としていた担保価値も下がる可能性があります。

不動産融資を見るときには123兆円という残高だけではなく、不動産価格、金利、担保価値、借り手の返済能力を一体として考えることが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 不動産融資のリスク注視

日本銀行 2026年8月10日 貸出先別貸出金

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