金利が上昇しているときには、変動金利の商品が注目されます。
市場金利が上昇すれば、それに合わせて受取利子も増える可能性があるからです。
しかし、金利の方向が反対になれば有利な商品も変わります。
市場金利がピークを迎え、これから低下すると考えるのであれば、固定金利商品のメリットが大きくなります。
固定金利商品は、購入時点の金利を満期まで確保できるからです。
例えば年2パーセントの金利を5年間固定したあと、市場金利が年1パーセントまで低下しても、保有している商品の金利は年2パーセントのままです。
一方、変動金利商品では市場金利の低下に伴って受取利子も減少する可能性があります。
固定金利は金利上昇には弱い一方、金利低下には強い商品なのです。
金利低下とは何か
金利低下とは、銀行預金や国債などの基準となる市場金利が下がっていくことです。
例えば10年国債の利回りが、
年3パーセント
年2.5パーセント
年2パーセント
年1.5パーセント
というように低下していく状況です。
市場金利が低下すると、新しく募集される定期預金や国債などの金利も低下する傾向があります。
これから金融商品を購入する人にとっては、以前ほど高い金利を得られなくなるということです。
しかし、すでに固定金利商品を購入している人は違います。
購入時に決められた金利が満期まで続くからです。
固定金利は購入時点の金利を確保する
例えば1000万円を年2.5パーセントの5年固定商品で運用したとします。
単純化すると税引前の年間利子は25万円です。
その後、市場金利が低下して、新しく購入できる同様の商品が年1.5パーセントになったとします。
新しく1000万円を運用する人が受け取れる税引前利子は年間15万円です。
しかし、すでに年2.5パーセントで固定している人は年間25万円を受け取り続けられます。
年間10万円の差です。
さらに市場金利が年1パーセントまで低下すれば、新しく運用する人との差はさらに大きくなります。
固定金利には、将来の金利低下から受取利子を守る働きがあります。
高い金利を先に確保する意味
固定金利商品を購入するということは、現在の金利を将来まで予約することだと考えると分かりやすくなります。
例えば現在の5年固定金利が年2パーセントだったとします。
今後、
1年後に年1.5パーセント
2年後に年1パーセント
3年後に年0.8パーセント
まで低下したとしても、すでに年2パーセントで契約していればその影響を受けません。
現在の金利が将来より高ければ、固定する価値が生まれます。
逆に、今後さらに金利が上昇するのであれば、早く固定したことが不利になる可能性があります。
固定金利商品の有利不利は、購入時点の金利の絶対的な高さだけでなく、その後の金利との比較によって決まるのです。
個人向け国債の固定5年なら金利は変わらない
個人向け国債には固定5年があります。
固定5年は、発行時に決められた利率が満期まで変わりません。
例えば年2パーセントで購入した固定5年なら、その後市場金利が低下しても、購入した国債の適用利率は年2パーセントのままです。
新しく募集される固定5年の利率が年1パーセントまで下がったとしても、以前購入した固定5年まで年1パーセントに変更されるわけではありません。
財務省が公表した2026年8月募集の固定5年では、税引前の利率は年2.06パーセントでした。
この利率は満期まで変わらない固定金利です。
固定金利とは、購入した時点の条件を将来まで持ち続ける仕組みなのです。
変動10年では金利が下がる可能性がある
これに対して個人向け国債の変動10年は、半年ごとに適用利率が見直されます。
現行制度では基準金利に0.66を掛けて適用利率を計算します。
例えば基準金利が3パーセントなら、単純計算では適用利率は1.98パーセントです。
その後、基準金利が2パーセントまで低下すれば1.32パーセントになります。
さらに基準金利が1パーセントになれば0.66パーセントです。
実際の適用には最低金利などのルールがありますが、基本的には市場金利が低下すると受取利子も減る可能性があります。
金利上昇を取り込めることは、裏返せば金利低下の影響も受けるということです。
固定金利と変動金利は鏡のような関係にある
固定金利と変動金利には、それぞれ反対の特徴があります。
固定金利では市場金利が上昇しても受取利子は増えません。
その代わり、市場金利が低下しても受取利子は減りません。
変動金利では市場金利が上昇すれば受取利子が増える可能性があります。
その代わり、市場金利が低下すれば受取利子も減る可能性があります。
つまり、
金利上昇への強さを重視するなら変動
金利低下への強さを重視するなら固定
という基本的な関係があります。
どちらかが常に優れているのではなく、金利環境によって有利不利が入れ替わります。
金利ピークで固定できれば有利になる
固定金利商品のメリットが最も大きくなるのは、金利がピークに近いところで購入できた場合です。
例えば市場金利が、
年1パーセント
年1.5パーセント
年2パーセント
年2.5パーセント
と上昇し、年2.5パーセントをピークとして低下に転じたとします。
この年2.5パーセント付近で長期固定できれば、その後市場金利が年1パーセントまで低下しても高い金利を維持できます。
逆に年1パーセントだった時点で長期固定してしまえば、その後の金利上昇を取り込めません。
固定金利では「どの金利で固定するか」が非常に重要です。
債券では金利低下による価格上昇も期待できる
市場で売買される固定利付債券には、もう一つ特徴があります。
市場金利が低下すると、すでに発行されている高い固定金利の債券価格が上昇する可能性があります。
例えば年3パーセントの固定金利国債を持っているとします。
その後、新しく発行される国債の金利が年1パーセントになったとします。
年3パーセントの利子を受け取れる既発債は魅力的です。
そのため額面金額を超える価格でも買いたいという投資家が現れる可能性があります。
結果として市場価格が上昇します。
つまり市場性のある固定利付債券では、金利低下によって、
高い利子を維持できる
債券価格が上昇する可能性がある
という二つの効果が生まれることがあります。
個人向け国債の固定5年では価格上昇益を狙う商品ではない
ただし、個人向け国債の固定5年は、市場価格の値上がりを狙って売買する商品ではありません。
募集価格は額面100円につき100円で、償還金額も額面100円につき100円です。
原則として発行から1年経過後に中途換金できますが、一般的な市場性国債のように市場価格で売却する仕組みではありません。
したがって、金利が低下したから固定5年を高値で売って利益を得るという商品ではありません。
固定5年のメリットは、購入時の金利を満期まで維持できるところにあります。
同じ固定金利の国債でも、個人向け国債と市場性国債では利益の得方が違います。
定期預金でも同じ考え方ができる
固定金利のメリットは国債だけの話ではありません。
定期預金でも基本的な考え方は同じです。
例えば1000万円を年2パーセントの5年定期預金に預けたとします。
その後、5年定期預金の金利が年1パーセントまで低下しても、すでに契約した定期預金の金利は原則として年2パーセントのままです。
高い金利を先に確保した効果です。
反対に預けた直後に金利が年3パーセントへ上昇すれば、年2パーセントで固定したことが不利になります。
固定金利の基本的な性質は、国債でも定期預金でも共通しています。
問題は金利ピークを事前に判断できないこと
ここまで考えると、「金利が一番高くなったところで固定すればよい」と思うでしょう。
しかし、それが最も難しいところです。
金利のピークは、通常その瞬間には分かりません。
例えば年2.5パーセントまで上昇したとします。
過去と比べれば十分高く見えるかもしれません。
ところがその後、物価上昇が続いて年3パーセントまで上がる可能性があります。
逆に年3パーセントまで待とうとしている間に、景気悪化などによって年2パーセントへ低下する可能性もあります。
金利の天井を正確に予測することは困難です。
固定するタイミングを分ける方法がある
そこで考えられるのが、全額を一度に固定しない方法です。
例えば3000万円を運用するとします。
一度に3000万円すべてを5年固定するのではなく、
現在1000万円
半年後1000万円
1年後1000万円
というように購入時期を分けます。
金利が上昇すれば、後から購入する資金で高い金利を利用できます。
反対に金利が低下すれば、先に購入した部分について高い金利を確保できています。
金利ピークを一点で当てようとせず、時間を分散する考え方です。
固定と変動を組み合わせる方法もある
もう一つは固定金利と変動金利を組み合わせる方法です。
例えば1000万円のうち、
500万円を固定5年
500万円を変動10年
とします。
その後金利が低下すれば、固定5年部分では高い金利を維持できます。
金利がさらに上昇すれば、変動10年部分では半年ごとの見直しによって適用利率が上昇する可能性があります。
どちらか一方に将来の金利予測を賭けるのではなく、両方を持つことで金利変動への対応力を高める方法です。
金利が下がってから固定しても遅い
固定金利を考えるうえで重要なのは、金利低下が明確になってからでは、高い固定金利の商品がすでになくなっている可能性があることです。
例えば年2.5パーセントから年2パーセントへ低下したのを確認して、
金利低下が始まったから固定しよう
と思ったとします。
その時点では、新しく購入できる固定金利商品もすでに年2パーセント程度へ低下している可能性があります。
年2.5パーセントを固定する機会は過ぎています。
固定金利投資には、
金利上昇途中で早く固定しすぎるリスク
金利低下を確認してから動いて固定するのが遅れるリスク
の両方があります。
ここに固定金利商品の難しさがあります。
結論
金利低下局面で固定金利が有利になりやすいのは、購入したときの高い金利を満期まで維持できるからです。
例えば年2パーセントで固定したあと、市場金利が年1パーセントまで低下しても、固定金利商品の利率は原則として年2パーセントのままです。
一方、変動金利商品では市場金利の低下に伴って受取利子も減少する可能性があります。
固定金利は将来の金利低下から受取利子を守る仕組みと考えることができます。
理想的なのは金利がピークに近いところで固定することです。
しかし、金利のピークをその時点で正確に判断することは困難です。
早く固定しすぎれば、その後の金利上昇を取り込めません。
遅すぎれば、固定しようと思った時点ですでに金利が低下しています。
だからこそ全額を一度に固定するのではなく、購入時期を分散したり、固定金利と変動金利を組み合わせたりする考え方があります。
固定金利で重要なのは、単に「現在の金利が高いか」ではありません。
「現在の金利を何年間確保したいのか」「今後金利が下がったとき、その金利を確保している価値がどれだけあるのか」まで考えることです。
金利上昇局面では変動金利が注目されますが、金利が低下へ転じれば固定金利の価値が一気に高まる可能性があります。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 <ステップアップ>「変動10年」金利上昇に強く 中途売却でも元本確保
財務省 個人向け国債の商品概要