金利が上昇すると、定期預金や国債など元本重視の金融商品の魅力が高まります。
これまで年0.1パーセントだった商品が年1パーセントになり、さらに年2パーセントになれば、「今のうちに高い金利を長期間固定したい」と考えるのは自然です。
しかし、金利がまだ上昇している途中であれば、長期の固定金利商品を急いで購入しないという考え方もあります。
今後さらに高い金利の商品が登場する可能性があるからです。
一度固定金利商品を購入すると、その後市場金利が上昇しても、すでに購入した商品の金利は原則として上がりません。
特に長期間の固定金利商品では、「高い金利を確保したつもりが、数カ月後にはもっと高い金利の商品が登場した」ということが起こり得ます。
金利上昇局面では、現在の金利の高さだけでなく「これから金利がどこまで上がるのか」を考える必要があります。
固定金利のメリットは金利を確定できること
固定金利商品の最大のメリットは、購入時点の金利を一定期間確保できることです。
例えば年2パーセントの5年固定の商品を1000万円購入したとします。
単純化すると、税引前で年間20万円の利子や利息を受け取れます。
市場金利がその後、
年1.5パーセント
年1パーセント
年0.5パーセント
と低下しても、購入した商品の金利が年2パーセントで固定されていれば、その金利を維持できます。
これは大きなメリットです。
将来の金利低下から自分を守ることができます。
固定金利のメリットは同時にデメリットにもなる
しかし、固定金利には反対側の性質があります。
市場金利が上昇しても、自分が保有している商品の金利は上がりません。
例えば年2パーセントの5年固定商品を購入した直後に、新しく年2.5パーセントの商品が登場したとします。
さらに半年後には年3パーセントになったとします。
すでに購入した商品は年2パーセントのままです。
後から購入した人の方が高い金利を得られることになります。
固定金利とは、
金利低下の影響を受けない
代わりに
金利上昇の恩恵も受けられない
仕組みなのです。
金利上昇途中で固定すると低い金利を長期間抱えることになる
例えば市場金利が次のように上昇したとします。
現在は年2パーセント
半年後は年2.5パーセント
1年後は年3パーセント
この状況で現在の年2パーセントを5年間固定すると、その後の高い金利を取り込めません。
5年間という長い期間、年2パーセントの商品を保有することになります。
一方、1年待って年3パーセントで固定できれば、その後の受取利子は大きく変わります。
1000万円なら、
年2パーセントで年間20万円
年3パーセントで年間30万円
です。
年間10万円の差になります。
5年間なら単純計算で50万円です。
金利が上昇している途中では、固定するタイミングが長期間の収益に影響します。
長期間固定するほど機会損失が大きくなる
金利上昇局面で問題になるのが機会損失です。
機会損失とは、ある選択をしたことで、別の選択をしていれば得られた利益を逃すことです。
例えば年2パーセントの10年固定商品を購入したあと、金利が年3パーセントまで上昇したとします。
年2パーセントの商品を保有し続ければ、年3パーセントの商品に乗り換えた場合と比べて毎年1パーセント分の収益機会を逃します。
1000万円なら単純計算で年間10万円です。
固定期間が長ければ、この差が長期間続く可能性があります。
そのため金利上昇局面では、特に長期の固定金利商品を購入するタイミングが重要になります。
債券なら価格下落も起こる
固定金利の債券では、さらに価格変動にも注意する必要があります。
例えば年2パーセントの10年国債を購入したあと、市場金利が年3パーセントまで上昇したとします。
新しく購入できる国債の方が高い利子を受け取れるため、以前の年2パーセントの国債の魅力は低下します。
その結果、保有している国債の市場価格が下落します。
満期まで保有できれば、途中の価格下落による損失を確定させずに済みます。
しかし途中で資金が必要になって売却すれば、購入価格を下回る可能性があります。
つまり長期固定債では、
低い金利を固定してしまう
債券価格も下落する
という二つの問題が同時に起こる可能性があります。
定期預金なら価格下落はないが金利は上がらない
定期預金では、国債のような市場価格の変動はありません。
例えば1000万円の5年定期預金をしたあと、市場金利が上昇したからといって預金残高が900万円になるわけではありません。
この点は債券と異なります。
しかし金利上昇の機会損失はあります。
年1.5パーセントの5年定期預金を契約した直後に、同じ銀行の5年定期が年2.5パーセントになっても、すでに契約した預金の金利が自動的に上がるわけではありません。
途中解約して乗り換える方法も考えられますが、中途解約では当初より低い金利が適用される場合があります。
固定することによる機会損失は、定期預金でも存在します。
金利ピークとは何か
長期固定金利商品を購入する理想的なタイミングの一つは、金利がピークに近い時期です。
例えば金利が、
1パーセント
2パーセント
3パーセント
と上昇したあと、3パーセントをピークに、
2.5パーセント
2パーセント
1.5パーセント
と低下するとします。
3パーセントの時点で長期固定できれば、その後市場金利が低下しても高い金利を維持できます。
固定金利商品のメリットを最大限に生かせる状況です。
問題は、金利がピークに達したことをその時点で判断するのが非常に難しいことです。
金利ピークは後にならないと分からない
現在の金利が過去数年で最も高いからといって、そこがピークとは限りません。
例えば年2.5パーセントまで上昇したときに、
ここまで上がれば十分高い
これ以上は上がらないだろう
と考えて10年固定の商品を購入したとします。
しかしその後、物価上昇や金融政策の変更などによって金利が年3パーセント、年3.5パーセントへ上昇する可能性があります。
反対に、さらに上がると思って待っていたら、景気悪化などによって突然金利が低下する可能性もあります。
金利の天井を正確に当てることは困難です。
だからこそ、全額を一度に長期固定することにはリスクがあります。
期間を分散する考え方がある
金利のピークを予測できないのであれば、購入時期や期間を分散する方法があります。
例えば3000万円を固定金利商品で運用するとします。
3000万円すべてを一度に10年間固定するのではなく、
1000万円を短期
1000万円を中期
1000万円を長期
というように分ける方法があります。
あるいは購入時期をずらして、
今1000万円
半年後に1000万円
さらに半年後に1000万円
という形にすることもできます。
金利がさらに上昇すれば、後から購入する資金について高い金利を利用できます。
反対に金利が低下しても、先に固定した資金については高い金利を維持できます。
金利の方向を一点予測しない方法です。
変動金利を利用する方法もある
金利上昇局面では、変動金利商品を利用する方法もあります。
個人向け国債の変動10年が代表例です。
変動10年は半年ごとに適用利率が見直されます。
市場の長期金利が上昇すれば、適用利率も上昇する可能性があります。
例えば購入時の金利が年1.5パーセントでも、その後、
年1.8パーセント
年2パーセント
年2.2パーセント
と上昇する可能性があります。
最初から長期間の金利を固定しないため、金利上昇を取り込めるのが特徴です。
変動金利にも弱点がある
もちろん変動金利が常に有利なわけではありません。
市場金利が低下すれば、変動10年の適用利率も低下する可能性があります。
例えば年2パーセントで固定できるタイミングで変動10年を選び、その後金利が年1パーセントまで低下すれば、年2パーセントを固定しておいた方が有利だったことになります。
つまり、
金利上昇なら変動型が有利になりやすい
金利低下なら固定型が有利になりやすい
という基本的な関係があります。
どちらを選ぶかは、将来の金利環境によって結果が変わります。
待つことにもリスクがある
金利上昇局面では「もっと金利が上がるまで待とう」と考えることもできます。
しかし、待てば必ず有利になるわけではありません。
現在年2パーセントの商品があるのに購入せず、普通預金など低い金利の場所で1年間待ったとします。
予想通り1年後に年3パーセントになれば、高い金利で購入できます。
しかし1年間は年2パーセントの商品から得られたはずの利子を受け取れません。
さらに、予想に反して1年後に金利が年1.5パーセントへ低下する可能性もあります。
つまり、
今固定するリスク
待つリスク
の両方があります。
「金利上昇中だから何も買わない」という判断にも機会損失があるのです。
全額を一度に動かさないことが一つの考え方になる
将来の金利を正確に予測できない以上、一つのタイミングに全額を賭けないという考え方があります。
例えば1000万円のうち、
一部を固定金利
一部を変動金利
一部を普通預金など短期資金
として保有します。
金利が上昇すれば変動金利部分や後から運用する資金が恩恵を受けます。
金利が低下すれば、先に固定した部分が高い金利を維持します。
最も高い金利を一点で当てることを目指すのではなく、金利がどちらに動いても一定程度対応できるようにする考え方です。
結論
金利上昇局面で長期の固定金利商品を急いで購入しないという考え方があるのは、今後さらに高い金利の商品が登場する可能性があるからです。
固定金利商品は、購入時点の金利を長期間確保できることが最大のメリットです。
しかしそのメリットは、金利が低下したときに発揮されます。
金利がまだ上昇している途中で長期間固定すると、その後登場する高い金利の商品を利用できず、低い金利を長期間抱える可能性があります。
さらに固定金利の長期債では、市場金利上昇によって債券価格が下落し、途中売却すると損失が発生する可能性もあります。
理想的には金利がピークに近いところで固定できれば有利ですが、そのピークを事前に正確に判断することは困難です。
だからこそ金利上昇局面では、全額を一度に長期固定するのではなく、購入時期を分けたり、固定期間を分けたり、変動金利商品を組み合わせたりする方法があります。
重要なのは「今の金利が高いから固定する」と考えるだけではなく、「この金利を何年間固定するのか、その間にさらに金利が上昇したらどうするのか」まで考えることです。
金利のある時代には、金利の高さだけではなく、金利を固定するタイミングそのものが資産運用の重要な判断材料になります。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 <ステップアップ>「変動10年」金利上昇に強く 中途売却でも元本確保