遺言だけでは足りない 死後事務を別に準備する理由

FP
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終活というと、まず遺言を思い浮かべる人は多いでしょう。

自分の財産を誰に残すのかを決めておくことは、相続トラブルを防ぎ、自分の意思を死亡後に反映するために重要です。

しかし、遺言を作成しただけで死亡後の準備がすべて完了するわけではありません。

人が亡くなると、財産の承継とは別に、葬儀や火葬、納骨、住居の整理、公共料金などの契約終了といった多くの実務が発生します。

家族がいれば、こうした手続きを家族が行うことが一般的でした。

身寄りのない高齢者や家族に負担をかけたくない人の場合には、遺言と死後事務を分けて準備するという考え方が重要になります。

遺言の中心は財産の承継

遺言の重要な役割は、自分の財産を死亡後にどのように承継させるのかを決めることです。

預貯金。

不動産。

有価証券。

その他の財産。

誰に何を承継させるのかを生前に決めておくことで、本人の意思を相続に反映させることができます。

特に相続人が複数いる場合や、法定相続とは異なる財産の承継を希望する場合には、遺言が重要になります。

単身者でも、兄弟姉妹や甥、姪などが相続人になる可能性があります。

相続人以外の人や団体に財産を残したい場合にも、遺言の検討が必要になります。

財産を誰に残すかと葬儀を誰がするかは別問題

ここで区別したいのが、財産の承継と死亡直後の実務です。

例えば、預金を誰に相続させるかを遺言で決めていたとしても、亡くなった直後には別の問題が発生します。

誰が関係者へ連絡するのか。

誰が葬儀の手続きをするのか。

誰が火葬や納骨を進めるのか。

誰が賃貸住宅を整理するのか。

こうした実務を実際に担う人が必要です。

財産の行き先を決めることと、死亡後の作業をする人を決めることは同じではありません。

遺言執行者にも役割がある

遺言では、遺言内容を実現するために遺言執行者を指定することがあります。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行います。

しかし、遺言執行者を指定したからといって、葬儀や納骨、家財整理など死亡後に発生するすべての生活上の事務を当然に任せられるわけではありません。

何を遺言で準備し、何を別の契約で準備するのかを整理する必要があります。

単身高齢者の場合、この役割分担を曖昧にすると、死亡後に対応する人がいない部分が残る可能性があります。

死亡直後にはすぐ対応が必要になる

死亡後の手続きには、時間をかけて考えられないものがあります。

葬儀や火葬については、死亡後すぐに対応が必要になります。

賃貸住宅で暮らしていた場合には、家主や管理会社への連絡も必要です。

病院や介護施設で亡くなった場合には、残された荷物への対応などもあります。

一方、相続手続きには一定の時間をかけて進めるものもあります。

つまり、死亡直後に必要となる実務と、その後に進める財産承継では時間軸が異なります。

この違いを考えて準備しておくことが重要です。

死後事務委任契約で役割を補う

そこで選択肢となるのが死後事務委任契約です。

本人が生前に、自分が亡くなった後に必要となる事務を第三者へ依頼しておきます。

葬儀や火葬に関する手続き。

納骨に関する手続き。

関係者への連絡。

住居に関する手続き。

公共料金などの契約終了。

依頼する内容は契約で具体的に定めます。

遺言が主として財産承継に関係する仕組みであるのに対し、死後事務委任契約は死亡後の実務を誰に任せるのかを準備する仕組みと考えると整理しやすくなります。

賃貸住宅に住む単身者は特に準備が重要

単身高齢者が賃貸住宅で生活している場合、死亡後の住居問題は特に重要です。

家具や家電、衣類、書類などが室内に残ります。

電気やガス、通信などの契約もあります。

賃貸借に関する手続きも必要になります。

家族がいれば、こうした実務を家族が進めることが多いでしょう。

しかし身寄りがない場合には、誰が対応するのかという問題が残ります。

死亡後の住居整理まで想定した準備が必要です。

ただし、残された物の中には相続財産に当たるものもあるため、死後事務と相続の関係には注意する必要があります。

デジタル契約も忘れられない

現在では、死亡後に整理しなければならない対象は現物の財産だけではありません。

携帯電話。

インターネット。

動画や音楽などの有料サービス。

クラウドサービス。

ネット上の金融サービス。

SNSなどのアカウント。

本人しか存在を知らない契約も増えています。

紙の通帳や請求書を見れば財産や契約の全体像が分かる時代ではなくなっています。

自分がどのようなサービスを利用しているのかを整理しておくことも、現代の終活では重要です。

お金の準備も必要になる

死後事務を誰かに頼む場合、そのための費用も考えなければなりません。

葬儀費用。

納骨費用。

家財整理費用。

住居整理に関する費用。

専門家や事業者へ依頼する場合の報酬。

本人が亡くなった後に必要になる費用だからこそ、生前に資金面まで準備しておく必要があります。

高齢者終身サポート事業者では、死後事務に備えて預託金を預ける場合があります。

その場合には、預託金の金額だけではなく、資金の管理方法や返還条件、事業者が長期間サービスを継続できるかも確認する必要があります。

遺言と死後事務の内容を整合させる

遺言と死後事務委任契約をそれぞれ準備する場合には、内容に矛盾が生じないようにすることも重要です。

例えば、ある財産について遺言では特定の人に承継させることにしている一方、死後事務ではその財産を別の目的で処分することを想定していれば問題になります。

財産の承継。

死後事務。

そのための費用。

それぞれを別々に考えるだけでなく、全体として整合しているかを確認する必要があります。

必要に応じて専門家へ相談しながら整理することも考えられます。

任意後見とも組み合わせて考える

単身高齢者の準備では、さらに任意後見などとの関係もあります。

元気な間は自分で財産を管理する。

身体的な支援が必要になれば、生活支援や財産管理委任などを検討する。

判断能力が低下した場合には任意後見などを利用する。

死亡すると任意後見は終了する。

その後の事務を死後事務委任契約で準備する。

そして財産の承継について遺言で意思を残す。

このように時間軸で整理すると、それぞれの制度の役割が分かりやすくなります。

家族がいても準備する意味がある

死後事務の準備は、身寄りのない人だけの問題ではありません。

子どもがいても遠方に住んでいる場合があります。

子ども自身が高齢になっていることもあります。

仕事や子育てなどで大きな負担を抱えている場合もあるでしょう。

葬儀や住居整理などについて本人の希望が何も分からなければ、家族が判断しなければなりません。

本人が生前に希望を整理しておくだけでも、家族の負担を減らすことにつながります。

家族がいるから何も準備しなくてよいとは限りません。

元気なうちに死亡後を設計する

死亡後のことを考えるのは気が重いという人もいるでしょう。

しかし、死後事務の準備は死亡そのものを考えるだけではありません。

自分が最後までどのように暮らしたいのかを整理する作業でもあります。

どのような葬儀を希望するのか。

どこに納骨してほしいのか。

誰に知らせてほしいのか。

自宅の物をどうしてほしいのか。

財産を誰に残したいのか。

これらを整理することで、自分の希望が明確になります。

そして、準備できるのは自分で判断できる間です。

結論

遺言は終活における重要な仕組みですが、遺言だけですべての死亡後の問題に対応できるわけではありません。

遺言では主に財産を誰に承継させるのかを準備します。

一方、死亡後には葬儀、火葬、納骨、住居整理、各種契約の終了など多くの実務が残ります。

これらを誰に任せるのかについては、死後事務委任契約など別の仕組みを検討する必要があります。

重要なのは、遺言と死後事務をどちらか一方だけ準備することではありません。

財産を誰に残すのか。

死亡直後の実務を誰に頼むのか。

その費用をどう準備するのか。

それぞれを一体として設計することです。

家族に頼らない老後では、自分の死亡を準備の終点にしてはいけません。

自分が亡くなった後に残される手続きまで見通し、それを誰が実行するのかを決めておく。

そこまで準備することが、人生の最後まで自分の意思を反映させる終活につながります。

参考

日本経済新聞 2026年10月3日朝刊 単身シニア、難しい身元保証 入院や介護に民間サービス

日本経済新聞 2026年10月3日朝刊 施設の9割が要請

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