会社から「給与として受け取るか、それとも企業年金として積み立てるかを選んでください」と言われたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか。
近年、「選択制企業年金」を導入する企業が増えています。この制度では、社員自身が現在の収入を優先するか、将来の老後資産を優先するかを選択できます。
一見すると自由で便利な制度ですが、目先の手取りだけで判断すると、将来になって後悔する可能性もあります。
今回は、選択制企業年金の仕組みと、選択する際に考えておきたいポイントについて解説します。
選択制企業年金とは何か
選択制企業年金とは、本来給与として支給される金額の一部を、企業年金の掛金として積み立てるかどうかを社員自身が選択できる制度です。
積み立てを選択した金額は企業年金口座に拠出され、将来、退職後や老後に受け取ることになります。
一方、積み立てを選ばなければ、その金額は通常どおり給与として支給されます。
つまり、「今のお金」と「将来のお金」のどちらを重視するかを自分で決める制度なのです。
給与を選ぶメリットと注意点
給与として受け取れば、毎月の手取り収入は増えます。
住宅ローンや教育費、子育てなどで出費が多い世代にとっては、現在の生活を支える大切な資金になります。
一方で、その分は所得税や住民税、社会保険料の対象になります。
また、手元に残ったお金を使ってしまえば、老後資産としては残りません。
現在の生活を充実させられる反面、自分で計画的に貯蓄や投資を行う必要があります。
企業年金を選ぶメリット
企業年金として積み立てた掛金は、一定の税制上の優遇を受けながら運用できます。
給与として受け取る場合に比べて税金や社会保険料の負担が軽くなるケースもあり、効率よく老後資産を形成できる可能性があります。
さらに、積み立てた資産は長期間運用できるため、時間を味方につけた資産形成が期待できます。
若いうちから積み立てを始めるほど、複利の効果も期待しやすくなります。
老後資金を計画的に準備したい人にとっては、大きなメリットのある制度です。
誰にとっても同じ答えではない
選択制企業年金に「これが正解」という答えはありません。
独身で生活費に余裕がある人と、子育て中で教育費の負担が大きい人では、最適な選択は異なります。
また、住宅ローンの返済状況や配偶者の収入、将来の働き方によっても判断は変わります。
現在の家計だけを見るのではなく、10年後、20年後の生活も見据えて考えることが大切です。
ライフプラン全体の中で判断することが重要なのです。
老後資産全体で考える視点が重要
企業年金だけで老後資金を準備する時代ではありません。
公的年金、退職金、企業型確定拠出年金、iDeCo、NISA、預貯金など、さまざまな制度を組み合わせて資産形成を行うことが一般的になっています。
選択制企業年金も、その一つとして位置付けることが大切です。
「企業年金だけ」「NISAだけ」と考えるのではなく、全体のバランスを考えながら資産を築くことが、将来の安心につながります。
制度を理解して選択することが最大のメリット
選択制企業年金は、自分で選べる制度です。
だからこそ、制度を理解しないまま判断すると、本来受けられたはずのメリットを逃してしまう可能性があります。
会社の説明会で一度聞いただけでは、十分に理解できないことも少なくありません。
制度内容や税制、運用方法などについて確認し、自分のライフプランに合った選択をすることが重要です。
「何となく給与を選んだ」「よく分からないから積み立てた」という判断ではなく、自分で納得して選ぶことが、将来の満足につながります。
結論
選択制企業年金は、現在の収入と将来の安心のどちらを重視するかを自分で選択できる制度です。
給与を選べば今の生活に余裕が生まれ、企業年金を選べば税制優遇を活用しながら老後資産を形成できます。
どちらが有利かは人によって異なります。
大切なのは、自分の家計やライフプランを踏まえて判断することです。
人生100年時代では、老後資産づくりは現役時代から始まっています。
勤務先に選択制企業年金があるのであれば、その仕組みを理解し、自分にとって後悔のない選択をすることが、豊かな老後への第一歩になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 朝刊(2026年7月20日)
「多様性 私の視点〉退職金『知らなかった』避けよう」