退職金は、長く勤めれば自動的に増えていくもの。そのようなイメージを持っている人は少なくありません。
しかし、近年では「ポイント制退職金制度」を採用する企業が増えています。この制度では、勤続年数だけではなく、役職や職務内容、会社への貢献度などを反映して退職金が決まります。
つまり、同じ年に入社した同期でも、受け取る退職金が大きく異なることが珍しくない時代になりました。
今回は、成果主義時代の退職金制度であるポイント制退職金制度について、その仕組みやメリット、注意点をわかりやすく解説します。
ポイント制退職金制度とは
ポイント制退職金制度とは、毎年一定のポイントを社員に付与し、その累計ポイントに単価を掛け合わせて退職金を計算する制度です。
例えば、一般社員には年間20ポイント、主任には30ポイント、課長には50ポイントというように役職ごとにポイントが設定されます。
退職時には、それまで積み上げたポイントに会社が定める単価を掛けて退職金額が決まります。
このため、勤続年数だけではなく、どのような役割を担ってきたかが退職金に反映される仕組みになっています。
なぜポイント制が増えているのか
従来の退職金制度は、勤続年数や最終給与を重視するものが一般的でした。
しかし、終身雇用を前提とした制度では、転職や多様な働き方が増えた現在の人事制度に合わない場面も出てきました。
そこで、多くの企業は成果や役割をより適切に評価できる制度へと移行しています。
ポイント制であれば、人事評価制度とも連動しやすく、昇進や責任の大きさを退職金にも反映できます。
会社にとっては、人件費の将来予測が立てやすいというメリットもあります。
同期でも退職金に差が生まれる理由
ポイント制では、同じ会社に同じ年数勤務していても、退職金が同額になるとは限りません。
昇進の時期が早かった人は、多くのポイントを積み重ねることができます。
一方で、役職に就かなかった人は、勤続年数が同じでも累計ポイントは少なくなります。
また、企業によっては職務内容や専門性、人事評価の結果をポイントに反映するケースもあります。
そのため、退職金も給与と同じように「個人差」が生まれる時代になっています。
転職時代との相性が良い制度
現在では、一つの会社で定年まで勤め上げる人は以前より少なくなりました。
ポイント制は、このような転職が増えた社会にも適した制度といえます。
退職時点までに積み上げたポイントに応じて退職金が計算されるため、途中で退職しても、それまでの貢献を一定程度反映できます。
また、中途採用者についても、入社後の役割や成果に応じて評価しやすくなります。
働き方が多様化する社会に合わせた退職金制度といえるでしょう。
制度を理解して働くことが重要になる
ポイント制退職金制度では、会社によってポイントの付与基準が異なります。
役職だけで決まる会社もあれば、人事評価や資格取得、専門能力などを反映する会社もあります。
そのため、自分がどのような基準でポイントを獲得しているのかを知ることが大切です。
昇進やキャリア形成が将来の退職金にも影響することを理解すれば、働き方や自己啓発への意識も変わってきます。
退職金制度は、退職時だけの制度ではなく、現役時代のキャリアそのものと深く結び付いているのです。
退職金制度は老後資産形成の一部である
近年では、ポイント制退職金制度に加えて、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金を組み合わせている企業も増えています。
つまり、退職金制度は一つではなく、複数の制度が組み合わされているケースが一般的になっています。
退職金だけを考えるのではなく、公的年金やNISA、iDeCoなども含めた資産形成全体を考えることが重要です。
制度を理解し、早いうちから将来設計を行うことが、安心した老後につながります。
結論
ポイント制退職金制度は、勤続年数だけではなく、役職や会社への貢献度を反映する成果主義時代の退職金制度です。
会社にとっては人件費を管理しやすく、社員にとっては努力やキャリアアップが退職金にも反映されるという特徴があります。
一方で、制度を知らなければ、自分の退職金がどのように決まるのか理解できないまま働き続けることになります。
人生100年時代において、退職金は老後生活を支える重要な資産です。
だからこそ、自分の勤務先がどのような退職金制度を採用しているのかを確認し、その仕組みを理解することが、将来への安心につながる第一歩になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 朝刊(2026年7月20日)
「多様性 私の視点〉退職金『知らなかった』避けよう」