会社が法人税を申告した後になって、本来より税金を少なく申告していたことが分かる場合があります。
このとき不足していた法人税を追加で納めるだけでなく、過少申告加算税という追加負担が生じることがあります。
経営者が意図的に税金をごまかした場合だけの話ではありません。
経理担当者の不正によって会社の所得が本来より少なく計算され、その結果として法人税の申告額が不足していた場合にも、税務上の問題が生じる可能性があります。
会社にとっては従業員による不正の被害者でありながら、税務申告を修正し、追加の税負担に対応しなければならないことがあるのです。
過少申告加算税とは何か
過少申告加算税とは、期限内に税務申告をしたものの、その申告による納税額が本来納めるべき金額より少なかった場合などに、一定の要件のもとで追加される税金です。
例えば会社が法人税1000万円を申告して納めたとします。
その後の税務調査によって、本来は1200万円納める必要があったことが分かったとします。
不足していた200万円について追加で納税する必要があります。
さらに一定の場合には、その追加納税額を基礎として過少申告加算税が課されます。
つまり、本来の税金とは別の負担です。
本税とは何が違うのか
本税とは、本来納めるべき法人税や消費税などそのものです。
例えば本来の法人税が1200万円だったのに1000万円しか納めていなければ、不足している200万円は本税です。
一方、過少申告加算税は、その申告額が不足していたことに伴って追加されるものです。
したがって、
不足していた法人税などの本税
過少申告加算税
は別々に考えます。
税務調査で追徴された金額を見るときには、何が本税で、何が加算税なのかを区別する必要があります。
なぜ追加の税金があるのか
もし税金を少なく申告しても、後から不足額だけ払えばよいのであれば、正しく申告した納税者との公平性に問題が生じます。
そこで申告した税額が本来より少なかった場合などには、一定の追加負担を求める仕組みがあります。
ただし、税額が少なかったすべての場合に機械的に同じ負担が生じるわけではありません。
申告が少なくなった事情や修正した時期などによって取り扱いが異なる場合があります。
実際の税務処理では個別の事実関係を確認することが必要です。
延滞税とは何が違うのか
過少申告加算税と混同しやすいものに延滞税があります。
両者は役割が違います。
過少申告加算税は、申告した税額が本来より少なかった場合などに問題となるものです。
延滞税は、本来納付すべき期限から実際に納付するまでの期間に応じて生じるものです。
例えば法人税200万円が不足していたことが数年後に分かったとします。
不足していた200万円の本税に加え、状況によって過少申告加算税が生じます。
さらに、本来納付すべき時期から遅れて納めることに伴って延滞税が生じる場合があります。
一つの申告誤りから複数の税負担が発生する可能性があるわけです。
経理担当者の不正でも法人税が少なくなることがある
経理担当者が会社のお金を不正に取得した場合、その不正を隠すために会社の経費として処理することがあります。
例えば本来存在しない100万円の経費を計上したとします。
本来の利益が500万円なら、帳簿上は400万円になります。
この帳簿を基に法人税を申告すれば、所得が本来より100万円少なく計算される可能性があります。
会社の経営者自身が不正を指示していなくても、結果として会社の税務申告額が不足することがあります。
今回は給与の水増しが所得を少なくした
参考記事で紹介された大阪市の人材派遣会社では、唯一の経理担当者だった男性社員が約11年間にわたり自分の給与を水増ししていました。
水増し総額は5108万円でした。
多い月には水増し額が100万円を超え、本来の給与の5.4倍になったこともあったとされています。
会社の帳簿では、水増しされた金額が給与費用として処理されていました。
そのため会社の費用が本来より多くなり、法人所得が少なく計算されることになりました。
税務署はこの点を問題としました。
会社には1070万円が追徴された
参考記事によると、税務署は給与の水増しによって会社の法人所得が過少に計上されていたと判断しました。
その結果、会社には過少申告加算税などを含め1070万円が追徴されました。
会社は5108万円もの給与水増しによる被害を受けています。
それだけではなく、税務上の追加負担も発生しました。
会社から見れば二重に負担が生じたように感じられるでしょう。
しかし税務では、従業員に対する損害賠償の問題と、会社の税務申告が正しかったかという問題は別に処理されます。
会社が知らなかったことと申告が正しいことは別
経営者が、
私は給与水増しを知らなかった
と主張したとしても、それだけで過去の税務申告の数字が正しくなるわけではありません。
例えば本来1000万円の所得を申告すべきところ、従業員の不正によって800万円として申告されていたとします。
会社が不正を知らなかったとしても、税務上正しい所得が1000万円であるなら、その数字を基礎として税額を見直す必要が生じます。
会社が不正の被害者であることと、税務申告の訂正が必要かどうかは分けて考える必要があります。
自主的に誤りを発見した場合も確認が必要
会社自身が経理不正を発見する場合もあります。
例えば月次チェックによって不自然な給与振込を見つけ、調査した結果、過去の給与が水増しされていたことが判明したとします。
この場合には、不正金額を計算するだけでなく、過去の税務申告にどのような影響があったかを確認します。
対象年度はいつか。
法人所得はいくら変わるのか。
法人税などはいくら不足しているのか。
修正申告が必要なのか。
こうした点について税理士などと確認する必要があります。
誤りを発見した時点で早く対応することが重要です。
不正が長期間続くほど問題が大きくなる
経理不正が1カ月で発見される場合と、10年間発見されない場合では、その後の税務対応も大きく違います。
長期間続けば、複数年度の会計帳簿や税務申告を調べる必要が生じる可能性があります。
銀行の取引履歴を確認する。
給与台帳を確認する。
不正額を年度ごとに集計する。
過去の申告への影響を確認する。
必要に応じて税務署への対応を行う。
会社内部の調査だけでも大きな負担になります。
不正を早期に発見することは、被害金額だけでなく事後処理の負担を抑える意味でも重要です。
重加算税とは違う
加算税には、過少申告加算税以外にも種類があります。
特に注意したいのが重加算税です。
重加算税は、事実を隠したり仮装したりしたことなど、より重い要件に該当する場合に問題となります。
単純な計算ミスによって税額が不足した場合と、売上を意図的に隠した場合では同じではありません。
また、従業員が会社に隠れて行った不正が会社の税務上どのように評価されるかについても、具体的な事実関係が重要になります。
加算税の種類を名称だけで判断するのではなく、実際に何が行われていたのかを見る必要があります。
経営者ができるのは申告前の数字を守ること
法人税申告書を作成する段階になってから、すべての経理不正を発見するのは難しい場合があります。
だからこそ日常の内部統制が重要です。
給与計算をした人とは別の人が振込を承認する。
給与台帳と銀行振込結果を照合する。
毎月の給与を前月と比較する。
銀行口座を経営者が直接確認する。
経理担当者に業務を集中させない。
こうした仕組みによって、税務申告の基礎になる会計データの信頼性を高めます。
正しい申告は、申告書を作るところから始まるのではありません。
日々の経理処理から始まっています。
結論
過少申告加算税とは、期限内に税務申告をしたものの、申告した納税額が本来より少なかった場合などに、一定の要件のもとで追加される税金です。
不足していた法人税などの本税とは別の負担です。
また、納付が遅れたことに伴う延滞税とも役割が異なります。
経理担当者が会社に隠れて不正をしていた場合でも、その不正によって会社の経費が過大になり、法人所得が少なく申告されていれば税務上の問題が生じる可能性があります。
参考記事の事件では、約11年間で5108万円もの給与水増しが行われ、会社には過少申告加算税などを含め1070万円が追徴されました。
経理不正は会社のお金を失わせるだけではありません。
会計帳簿をゆがめ、その数字を基に作られる税務申告にも影響します。
だからこそ会社が守るべきなのは、銀行口座だけではありません。
税務申告の出発点となる日々の経理データを正しく保つ仕組みも必要なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 中小企業リーガル処方箋 給料水増し5000万円 「お一人様」経理、振込依頼操作