遊休施設が地域資源へ生まれ変わる時代 陸上養殖が地方創生を変える可能性

人生100年時代
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近年、全国で閉校した学校や廃止された公共施設、使われなくなった工場などの「遊休施設」が増えています。人口減少や少子高齢化が進む日本では、この問題は今後さらに大きくなるでしょう。

一方で、これまで「負の資産」と考えられてきた遊休施設を、新たな産業へ転換する動きも広がっています。

神奈川県では、閉鎖した温水プールを活用したウニの陸上養殖や、スポーツジムのプールを利用したクルマエビ養殖が始まりました。

単なる施設の再利用ではありません。

「地域資源」「循環型社会」「再生可能エネルギー」「ブランドづくり」を組み合わせた、新しい地方創生モデルとして注目されています。

今回は、遊休施設を活用した陸上養殖が持つ可能性について考えてみます。

遊休施設は全国で増え続けている

高度経済成長期に建設された公共施設は、築40〜50年を迎えるものが増えています。

学校、体育館、温水プール、水道施設、公共宿泊施設など、多くが老朽化し、利用者減少も重なって維持が難しくなっています。

解体するにも多額の費用が必要です。

自治体にとっては、

・維持費がかかる

・安全管理が必要

・解体費も高額

という三重の負担となっています。

そのため、「壊す」のではなく「新たな用途で活用する」という発想が重要になっています。

なぜプールが陸上養殖に向いているのか

温水プールは実は陸上養殖との相性が非常によい施設です。

もともと

・大量の水を扱う設備

・排水設備

・電源設備

・室内環境

などが整っています。

新たにゼロから施設を建設するよりも初期投資を抑えられる可能性があります。

特に室内施設であれば、

・天候の影響を受けない

・水温管理がしやすい

・病気のリスクを下げられる

といったメリットがあります。

近年普及している循環式陸上養殖システムとも非常に相性が良い施設といえるでしょう。

ウニ養殖は磯焼け対策にもつながる

神奈川県で取り組まれているウニ養殖は、水産業だけの話ではありません。

近年問題となっている「磯焼け」の解決にもつながります。

磯焼けとは、海藻が減少し、岩場が砂漠のようになってしまう現象です。

原因の一つが、増えすぎたウニによる食害です。

そのため各地では駆除が行われています。

しかし、駆除したウニの多くは商品価値が低く、有効活用が課題となっていました。

そこで、

・駆除したウニを買い取る

・未利用野菜を餌に育てる

・高品質なブランドウニとして販売する

という仕組みが生まれています。

環境保全と地域産業を同時に実現できる点が大きな特徴です。

廃棄野菜も価値ある資源へ変わる

食品ロスは日本社会の大きな課題です。

規格外野菜や加工時に出る端材など、多くの野菜が廃棄されています。

今回の取り組みでは、それらをウニの餌として活用しています。

つまり、

農業

漁業

食品加工業

自治体

スタートアップ

が一つの循環の中で結び付いています。

地域内で資源が循環することで、新たな付加価値が生まれます。

これからは「廃棄物」という考え方よりも、「未利用資源」という視点が重要になるでしょう。

エネルギーと養殖を組み合わせる時代へ

クルマエビ養殖では、太陽光発電事業を行う企業が参入しています。

陸上養殖では

・ポンプ

・ろ過装置

・酸素供給

・水温管理

など、多くの電力を必要とします。

ここに再生可能エネルギーを組み合わせれば、

電気代の削減

CO₂排出量の削減

災害時の電力確保

といったメリットも期待できます。

エネルギー会社が養殖事業へ参入する流れは、今後さらに広がる可能性があります。

地域ブランドづくりが成功の鍵になる

養殖そのものは技術が進歩しています。

しかし、最終的に重要になるのは「誰が買うのか」です。

今回のウニ養殖では、地域特産の野菜や果物を餌に活用することで、その土地ならではのブランドづくりを目指しています。

例えば、

地元野菜で育ったウニ

地域名を冠したブランドエビ

といった商品になれば、観光やふるさと納税との相乗効果も期待できます。

地方創生では、生産だけではなく「ブランド戦略」と「販路開拓」が成功を左右します。

スタートアップと自治体の連携が新しい価値を生む

今回の記事で印象的だったのは、自治体だけでも企業だけでも実現できない取り組みだったことです。

自治体には施設があります。

スタートアップには技術があります。

大学には研究があります。

農家には未利用資源があります。

漁業者には現場の知見があります。

それぞれが持つ強みを組み合わせることで、新しい産業が生まれています。

人口減少時代には、一つの組織だけで地域課題を解決することは難しくなります。

官民連携による地域経営が、ますます重要になっていくでしょう。

結論

遊休施設の活用は、単なる空き施設対策ではありません。

陸上養殖、再生可能エネルギー、食品ロス削減、地域ブランドづくり、雇用創出など、多くの社会課題を同時に解決する可能性を秘めています。

今後は全国各地で、地域の特色を生かした新しい産業が生まれるかもしれません。

人口減少時代だからこそ、「使われなくなったもの」に新しい価値を見いだす発想が、日本の地域経済を支える大きな力になっていくのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞(2026年7月16日 朝刊)

すべて

遊休プール 養殖へターン 神奈川の自治体、企業と連携

遊休施設とは(2026年7月16日 朝刊)

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