財形貯蓄の非課税限度額は引き上げられるのか 住宅価格と賃金上昇から考える編

税理士
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財形貯蓄には、住宅取得や老後資金の形成を税制面から支援する仕組みがあります。

その中心となるのが、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄に設けられている利子などの非課税措置です。

ところが、制度が作られてから時間がたつ間に、賃金や物価、住宅価格などを取り巻く環境は変化しています。

住宅を購入するために必要な資金が大きくなれば、従来と同じ非課税限度額で十分なのかという問題も出てきます。

令和9年度税制改正要望では、厚生労働省が財形制度の見直しを前提として、非課税限度額の引き上げなどを検討しています。

財形の非課税制度とは何か

財形貯蓄には、一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄があります。

このうち、住宅取得を目的とする財形住宅貯蓄と、老後資金を準備する財形年金貯蓄には、一定の要件のもとで利子などを非課税とする制度があります。

通常、預貯金などから利子を受け取れば税金がかかります。

財形では住宅や老後という特定の目的のために長期間積み立てることを税制面から支援しています。

税金がかからない元本そのものを増やす制度というより、一定の貯蓄について生じる利子などを非課税にする仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

非課税限度額とは何か

非課税制度には上限があります。

どれだけ積み立てても無制限に利子などが非課税になるわけではありません。

一定の範囲までを政策的に優遇することで、住宅取得や老後資金の形成を支援する仕組みになっています。

この上限が非課税限度額です。

限度額を超えて積み立てれば、税制上の取り扱いが変わります。

したがって、非課税限度額をどの水準に設定するかは、制度がどの程度の資産形成を支援するのかという政策判断でもあります。

なぜ今になって限度額を見直すのか

制度上の金額を長期間変更しなければ、経済環境の変化によって実質的な意味が変わります。

たとえば住宅価格が大幅に上昇した場合を考えてみます。

以前は住宅取得資金として十分な規模だった非課税枠でも、住宅価格が上昇すれば購入価格に占める割合は小さくなります。

賃金が上昇すれば、毎月積み立てられる金額が増える人も出てきます。

物価が上昇すれば、老後に必要となる生活費も増える可能性があります。

こうした変化を踏まえると、過去に設定した非課税限度額をそのまま維持することが適切なのかという問題が生じます。

住宅価格の上昇が財形にも影響する

住宅価格が高くなると、住宅ローンの借入額だけではなく、購入前に準備したい自己資金も大きくなります。

頭金のほか、住宅取得時にはさまざまな費用も必要になります。

住宅価格が上昇しているにもかかわらず、住宅取得を支援する資産形成制度の枠が変わらなければ、制度の支援効果は相対的に小さくなります。

厚生労働省が今回の見直しで住宅価格の高騰を背景の一つとして挙げているのは、このためです。

財形住宅貯蓄の制度を現在の住宅市場に合わせるという視点が必要になっています。

賃金上昇も重要な理由

賃金が上がることと非課税限度額には、一見すると直接関係がないように見えます。

しかし、給与から一定額を積み立てる財形制度では重要です。

賃金が上昇すれば、家計によっては積立額を増やす余地が生まれます。

ところが、税制上の非課税限度額が変わらなければ、積立額を増やしていく途中で非課税枠の上限に達しやすくなります。

賃金水準が変わるのであれば、それに合わせて資産形成を支援する制度上の金額についても検討する必要があるという考え方です。

老後資金についても同じ問題がある

財形年金貯蓄についても、非課税限度額の意味を現在の経済環境から考える必要があります。

老後期間が長くなれば、準備する資金も長期間にわたって必要になります。

さらに物価が上昇すれば、同じ金額の資産でも購入できる商品やサービスは少なくなります。

たとえば老後資金として1000万円を準備していたとしても、将来の物価水準によって実質的な価値は変わります。

資産形成制度では名目上の金額だけではなく、その金額で実際にどの程度の生活を支えられるのかという視点も必要です。

限度額引き上げは決定事項ではない

注意したいのは、財形の非課税限度額引き上げがすでに決定したわけではないことです。

令和9年度税制改正要望では、厚生労働省が勤労者財産形成促進制度の見直しを前提に税制上の所要の措置を求めています。

その検討事項の一つとして非課税限度額の引き上げなどが挙げられています。

最終的に引き上げるのか。

引き上げる場合はいくらになるのか。

どの制度を対象にするのか。

こうした具体的な内容は今後の議論を確認する必要があります。

NISAとは非課税の意味が違う

非課税という言葉を見ると、NISAと同じような制度だと思うかもしれません。

しかし、両者の仕組みは異なります。

NISAは株式や投資信託などへの投資から得られる配当や売却益などを一定の制度内で非課税とする仕組みです。

財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、住宅や老後という目的を持った貯蓄について、一定の要件のもとで利子などを非課税とします。

同じ非課税制度でも、対象となる資産や目的、利用条件が違います。

制度を比較するときには、非課税枠の大きさだけではなく、何が非課税になるのかを見ることが大切です。

結論

令和9年度税制改正要望では、財形制度について非課税限度額の引き上げなどが検討されています。

背景には、高齢期まで働く人の増加だけでなく、賃金の上昇や住宅価格の高騰といった経済環境の変化があります。

住宅価格や賃金が上昇しているのに、資産形成を支援する制度上の金額が長期間変わらなければ、制度の実質的な支援効果は小さくなっていきます。

ただし、非課税限度額の引き上げや具体的な金額は、現段階では決定事項ではありません。

今回の要望を見るうえで重要なのは、単に非課税枠が増えるかどうかだけではありません。

働く期間が長くなり、住宅価格や物価も変化するなかで、過去につくられた資産形成制度の金額を現在の生活実態に合わせて見直す必要があるのか。

財形制度の見直しは、税制上の金額を経済環境の変化にどう対応させるのかという問題でもあります。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 各省庁の9年度税制改正要望が出そろう、エッセンシャルサービス確保の特例に税制上の軽減措置を

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