育児短時間勤務とは何か フルタイムで働けなくても退職する必要がない仕組み編

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子どもが生まれる前は、朝から夕方までフルタイムで働いていた。

しかし育児休業から復帰すると、保育園の迎えがあります。

夕食を作り、子どもを入浴させ、寝かしつける必要もあります。

以前とまったく同じ時間で働くことが難しくなる人もいるでしょう。

このとき、

フルタイムで働けないなら仕事を辞めるしかない。

という二者択一にしないために重要な制度が、育児短時間勤務です。

働く時間を一時的に短くすることで、育児をしながら雇用を継続する仕組みです。

育児短時間勤務とは何か

育児短時間勤務とは、一定の年齢までの子どもを育てる労働者が、一日の所定労働時間を短縮して働ける制度です。

一般的なフルタイム勤務が一日8時間だとします。

育児短時間勤務を利用すれば、例えば一日6時間程度に勤務時間を短くして働くことができます。

朝の出勤時間を遅くする。

夕方の退勤時間を早くする。

といった働き方が可能になります。

法律上、事業主には原則として3歳未満の子どもを養育する一定の労働者について、短時間勤務制度を設けることが求められています。

会社によっては法定の対象年齢を超えて利用できる制度を設けている場合もあります。

育児と仕事を両立するための代表的な仕組みの一つです。

育児休業とは何が違うのか

育児短時間勤務と混同されやすいのが育児休業です。

両者の大きな違いは、仕事を休むのか、働きながら時間を短くするのかです。

育児休業では、一定期間仕事を休みます。

会社との雇用関係は続いていますが、原則として通常の勤務はしません。

一方、育児短時間勤務では仕事を続けます。

ただし、一日の勤務時間を短くします。

例えば、

育児休業中は仕事を休む。

育児休業から復帰した後は育児短時間勤務で一日6時間働く。

子どもが大きくなったら一日8時間勤務へ戻る。

という使い方ができます。

育児休業からフルタイム勤務へ一気に戻るのではなく、その間に短時間勤務という段階を設けることができるのです。

なぜ勤務時間を短くする必要があるのか

育児には時間を動かしにくい仕事があります。

代表的なのが保育園の迎えです。

例えば午後6時までに迎えに行かなければならないとします。

職場から保育園まで30分かかるのであれば、午後5時30分には会社を出なければなりません。

会社の通常の終業時刻が午後6時なら、そのままでは間に合いません。

そこで勤務時間を短くし、午後5時に退勤できるようにします。

すると保育園へ迎えに行くことができます。

育児短時間勤務は、単に仕事を楽にするための制度ではありません。

仕事の時間と育児の時間が物理的に重なってしまう問題を解決するための制度でもあります。

一日2時間の短縮でも生活は大きく変わる

例えば一日8時間勤務から6時間勤務へ変更するとします。

短くなるのは2時間です。

数字だけを見ると、それほど大きな違いに感じないかもしれません。

しかし育児期には、この2時間が大きな意味を持ちます。

保育園へ迎えに行く。

夕食を準備する。

子どもと食事をする。

入浴させる。

寝かしつける。

こうした夕方以降の予定には時間の制約があります。

勤務時間を2時間短くすることで、仕事と家庭の予定がつながるようになることがあります。

特に子どもが小さい時期には、数時間の余裕が生活全体の持続可能性を大きく左右します。

給与が同じとは限らない

育児短時間勤務を利用するときに確認したいのが給与です。

勤務時間を短縮した部分について、会社が給与を減額する場合があります。

例えば一日8時間勤務から6時間勤務になれば、労働時間は4分の3になります。

会社の賃金制度によっては、その短縮時間に応じて給与が減ることがあります。

そのため、

勤務時間を短くできる。

というメリットだけではなく、

収入がどの程度変わるのか。

も確認する必要があります。

一方で、一定の要件を満たす場合には、雇用保険の育児時短就業給付の対象となることがあります。

制度を利用するときには、会社の給与制度と公的な給付制度を合わせて確認することが重要です。

キャリアへの影響も考える必要がある

育児短時間勤務を利用すると、勤務できる時間が短くなります。

その結果、

担当できる仕事が限られる。

夕方の会議へ参加しにくい。

出張が難しくなる。

残業を前提とした仕事を担当しにくい。

といったことが起こる場合があります。

それが長期間続けば、経験や昇進に影響する可能性もあります。

だからといって、

キャリアに影響するなら短時間勤務を利用しない方がよい。

と単純に考えることもできません。

フルタイム勤務と育児の両立が難しく、結果として退職することになれば、前回取り上げたキャリアの中断コストが生じるからです。

比較するべきなのは、理想的なフルタイム勤務だけではありません。

現実に継続できる働き方との比較が必要です。

フルタイムか退職かの二択ではない

育児期の働き方を考えるとき、

以前と同じようにフルタイムで働く。

それが無理なら退職する。

という二つの選択肢だけで考えると、判断が極端になります。

実際には、その間にさまざまな働き方があります。

育児短時間勤務を利用する。

残業を減らす。

在宅勤務を組み合わせる。

勤務時間帯を変更する。

休暇制度を利用する。

夫婦で送り迎えを分担する。

外部サービスを利用する。

こうした方法を組み合わせることができます。

一つの制度だけですべてを解決するのではなく、複数の方法によって仕事と育児をつなぐことが重要です。

短時間勤務でも仕事の責任まで短くなるとは限らない

注意したいのは、勤務時間だけ短くなり、仕事量がほとんど変わらないケースです。

例えば8時間で行っていた仕事を、6時間で終わらせるよう求められたとします。

単純に考えれば、同じ仕事を25パーセント短い時間で処理しなければなりません。

その結果、

休憩時間を削る。

仕事を家へ持ち帰る。

常に急いで働く。

といった状態になれば、短時間勤務を利用しても負担が減らないことがあります。

育児短時間勤務を実際に機能させるには、勤務時間だけでなく仕事量や役割も合わせて調整する必要があります。

短く働く人が、フルタイムと同じ量の仕事を抱え続ける仕組みでは持続しません。

周囲への仕事の集中にも注意する

短時間勤務を利用する人が早く帰ると、その後に発生した仕事を同僚が担当することがあります。

制度利用者が増えれば、

いつも同じ人が夕方の仕事を引き受けている。

という状態になる可能性もあります。

これでは制度を利用する人と周囲の社員の間に不満が生まれます。

重要なのは、

育児中の社員だけを特別扱いする。

という発想ではありません。

誰かが短時間勤務になっても仕事が回るように、業務そのものを見直すことです。

情報共有。

業務標準化。

複数担当制。

不要な会議の削減。

仕事の優先順位付け。

などを進めれば、育児だけでなく介護や病気などで勤務時間に制約がある社員も働きやすくなります。

短時間勤務は永続的な働き方とは限らない

育児短時間勤務を利用すると、

このままずっと仕事を減らすことになるのではないか。

と不安になる人もいるでしょう。

しかし、育児負担は子どもの成長とともに変化します。

保育園への送り迎えが必要な時期。

小学校へ入学した時期。

子どもだけで行動できるようになる時期。

それぞれ必要な支援が違います。

そのため、

今は6時間勤務。

数年後は7時間勤務。

その後フルタイムへ戻る。

というように段階的に働き方を変えることも考えられます。

短時間勤務はキャリアの最終形ではなく、育児負担の大きい時期を乗り切るための一時的な速度調整として利用することができます。

再び加速できる会社であることが重要

企業側にも重要な課題があります。

短時間勤務を利用した社員について、

仕事への意欲が低い。

家庭を優先する人。

責任のある仕事は任せにくい。

と固定的に評価してしまうと、その後のキャリアが狭くなります。

育児期には勤務時間を短くしていても、子どもの成長後には、

フルタイムへ戻りたい。

管理職を目指したい。

専門性の高い仕事を担当したい。

と考える人もいます。

そのとき再び仕事量を増やせる仕組みが必要です。

短時間勤務を利用できるだけではなく、利用後にキャリアを再加速できることが、長期的なキャリア継続には重要になります。

結論

育児短時間勤務とは、一定の年齢までの子どもを育てる労働者が、一日の所定労働時間を短縮して働くための制度です。

育児休業が一定期間仕事を休む制度であるのに対し、育児短時間勤務では働き続けながら勤務時間を短くします。

例えば一日8時間勤務を6時間程度に短縮すれば、保育園の迎えなど育児に必要な時間を確保しやすくなります。

もちろん、勤務時間が短くなれば給与が減る場合があります。

担当できる仕事が限られ、短期的にはキャリアへ影響する可能性もあります。

しかし、

フルタイムで働けない。

だから、

退職する。

という二者択一にする必要はありません。

育児期だけ仕事の速度を落とし、子どもの成長後に再び仕事量を増やす方法があります。

長いキャリアでは、常に同じ時間働くことよりも、生活環境に応じて働き方を変えながら仕事とのつながりを維持することが重要です。

育児短時間勤務は、仕事を諦めるための制度ではありません。

育児という負担の大きな時期にも仕事を手放さず、長くキャリアを続けるための仕組みなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 働き続けるため「手放す」選択も

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