有料老人ホームを選ぶとき、入居一時金とともに重要なのが毎月支払う費用です。
東京都内の有料老人ホームでは、2026年1月時点で、入居時費用があるプランの月額費用の中央値が29万7820円となりました。
ほぼ30万円です。
しかし、月額費用が30万円と表示されている老人ホームなら、毎月30万円を用意しておけば生活できるとは限りません。
老人ホームの料金には、家賃や管理費、食費などが含まれる一方、介護保険サービスの自己負担や医療費、日用品、理美容費などが別途必要になることがあります。
老人ホームの本当の負担を知るには、料金表に表示されている月額費用だけではなく、入居後に発生する追加費用まで含めて考える必要があります。
老人ホームの月額費用とは何か
老人ホームでは、入居後に毎月一定の費用を支払います。
一般的には、家賃や管理費、食費などが中心になります。
ただし、何が月額費用に含まれているのかは施設によって異なります。
例えば月額30万円と表示されていても、水道光熱費まで含まれている施設もあれば、別途支払う施設もあります。
介護サービスの費用が含まれているように見えても、介護保険の自己負担分は別に必要になる場合があります。
そのため、老人ホームを比較するときには、月額費用という一つの数字だけを見るのではなく、その内訳を確認することが重要です。
家賃は居室を利用するための費用
月額費用の中心になるのが家賃です。
老人ホームも高齢者が生活する住まいである以上、居室を利用するための費用が必要になります。
家賃は施設の所在地や居室の広さ、設備などによって大きく変わります。
特に東京都心など地価の高い地域では、施設の土地や建物にかかるコストも高くなりやすいため、家賃にも影響します。
ただし、入居時に前払金を支払う料金体系では、家賃の全部または一部をすでに前払いしていることがあります。
その場合、前払金ゼロの月払いプランと比べて毎月の家賃が低く設定されることがあります。
老人ホームの家賃を見るときには、入居一時金との関係も合わせて確認する必要があります。
管理費には何が含まれるのか
老人ホームでは家賃とは別に管理費が必要になることがあります。
管理費は、施設の共用部分の維持管理や事務管理などに充てられる費用です。
例えば、廊下や食堂、談話室などの共用設備があります。
こうした設備の清掃や維持管理には費用がかかります。
施設によっては、フロント業務や生活支援サービスなどに必要な費用の一部が管理費に含まれることもあります。
ただし、管理費という名称が同じでも、その中身は施設ごとに違います。
老人ホームを比較するときには、管理費が高いか安いかだけではなく、どのサービスまで含まれているのかを見ることが重要です。
食費は食べなかったら安くなるとは限らない
老人ホームでは、朝食、昼食、夕食などが提供される施設が多くあります。
そのため毎月の食費が必要になります。
食費には、食材そのものの費用だけではなく、調理や厨房設備の維持などに必要な費用が含まれる場合があります。
注意したいのは、食事を取らなかった場合の扱いです。
例えば入院や外泊で老人ホームを離れていても、食費の一部が発生する料金体系があります。
反対に、事前に申し出れば実際に食べなかった分が減額される施設もあります。
長期入院する可能性も考えれば、欠食した場合にどのような料金になるのかも確認しておきたいところです。
水道光熱費が別に必要な場合もある
電気、ガス、水道などの費用も確認が必要です。
管理費などに水道光熱費が含まれている施設もあれば、居室で使用した電気代などを個別に支払う施設もあります。
高齢者は一日の多くを居室や施設内で過ごすことがあります。
冷暖房を長時間利用すれば電気代もかかります。
近年は電気代やガス代なども上昇しているため、老人ホームの運営コストを押し上げる要因になっています。
月額費用を見るときには、水道光熱費込みなのか、別途負担なのかを確認する必要があります。
介護保険の自己負担は別に発生する
老人ホームの費用で見落としやすいのが介護保険サービスの自己負担です。
介護保険サービスを利用した場合、原則として費用の一部を本人が負担します。
所得に応じて自己負担割合は1割、2割、3割となります。
例えば介護付き有料老人ホームでは、要介護度などに応じて介護保険サービスの費用が決まります。
料金表に掲載されている家賃や管理費、食費とは別に、介護保険の自己負担分が必要になります。
要介護度が上がれば、利用する介護サービスや介護保険上の費用も変わります。
入居時には比較的元気だったとしても、10年間暮らす間に介護が必要になる可能性があります。
そのため、現在の要介護度だけを前提に資金計画を立てるのでは十分ではありません。
医療費も老人ホームの月額費用とは別
老人ホームに入居しても、医療費がなくなるわけではありません。
高齢になるほど、病院や診療所を利用する機会が増える可能性があります。
持病の治療を受けたり、薬を処方してもらったりすることもあります。
歯科診療が必要になる場合もあります。
これらの医療費は、通常、老人ホームの月額利用料とは別に本人が負担します。
さらに、通院するときに施設の職員による付き添いを依頼すると、別料金が発生する場合があります。
医療機関までの交通費なども考える必要があります。
老人ホームの月額費用だけを老後の生活費と考えてしまうと、こうした支出を見落としてしまいます。
日用品や理美容費も積み重なる
老人ホームで生活していても、日常生活に必要な支出は続きます。
歯ブラシやティッシュなどの日用品が必要です。
衣類を購入することもあります。
理美容サービスを利用すれば、その費用もかかります。
おむつなどについても、介護保険施設とは扱いが異なり、有料老人ホームでは自己負担となる場合があります。
さらに、施設によってはレクリエーションやイベント、外出などについて別途費用が必要になることがあります。
一つ一つは数百円や数千円でも、毎月積み重なると無視できない金額になります。
月30万円なら年間360万円になる
月額費用が約30万円の場合、年間では約360万円です。
5年間なら約1800万円になります。
10年間なら約3600万円です。
しかも、これは現在の月額費用がそのまま続いたと仮定した場合です。
実際には、食材費や光熱費、人件費などが上昇すれば、老人ホームの料金が値上げされる可能性があります。
さらに介護保険の自己負担、医療費、日用品などが加わります。
そのため、月額30万円という表示を見て、年間360万円だけ準備すればよいと考えるのは危険です。
実際に毎月いくら出ていく可能性があるのかを、追加費用まで含めて考える必要があります。
年金との差額を毎月取り崩すことになる
老人ホームの資金計画では、毎月の費用だけではなく年金収入との比較が重要です。
例えば老人ホームで毎月35万円の支出があり、本人の年金収入が月20万円だったとします。
毎月15万円不足します。
年間では180万円です。
この不足額を預貯金などから取り崩すことになります。
5年間なら900万円です。
10年間なら1800万円です。
さらに入居時に1000万円の前払金を支払っていれば、必要となる資産は一段と大きくなります。
老後資金を考えるときには、老人ホームの月額費用そのものより、年金を差し引いた後に毎月いくら不足するのかを見ることが重要です。
料金表では別途費用を確認する
老人ホームを比較するときには、月額利用料の欄だけを見るのではなく、別途必要となる費用を確認する必要があります。
家賃はいくらなのか。
管理費には何が含まれているのか。
食費はいくらなのか。
水道光熱費は別なのか。
介護保険の自己負担はいくらになるのか。
医療費や日用品はどの程度必要なのか。
通院付き添いや外出支援には追加料金がかかるのか。
こうした費用を一つずつ積み上げて、実際の毎月の支出額を考えることが重要です。
可能であれば、現在の要介護度だけではなく、要介護度が上がった場合の費用についても確認しておくと、長期的な資金計画を立てやすくなります。
結論
老人ホームの月額費用には、一般的に家賃、管理費、食費などが含まれています。
しかし、それだけですべての生活費をまかなえるとは限りません。
水道光熱費。
介護保険サービスの自己負担。
医療費。
日用品。
理美容費。
通院や外出の支援費用。
こうした追加費用が発生する可能性があります。
東京都内では有料老人ホームの月額費用の中央値が約30万円まで上昇していますが、実際の毎月の支出はそれを上回ることがあります。
老人ホームの資金計画で重要なのは、広告に表示された月額料金だけを見ることではありません。
自分が実際に生活した場合、毎月いくら必要になるのか。
そして、そのうち年金でいくら支払い、金融資産から毎月いくら取り崩すことになるのか。
そこまで計算する必要があります。
老人ホームは一度入居すれば、何年、場合によっては10年以上暮らす住まいになります。
月数万円の見込み違いでも、10年間では数百万円の差になります。
だからこそ、終のすみかを選ぶときには、月30万円という表面的な数字ではなく、その内側にある費用まで確認することが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 終のすみかの現実(上)老人ホーム 手届かぬ東京 入居費1000万円、4割上昇