繰越欠損金は清算でどう扱われるのか

税理士
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赤字会社の決算書を見ると、多くの場合「繰越欠損金」が存在します。

長年の赤字によって積み上がった欠損金は、一見するとマイナスの財産に見えるかもしれません。

しかし税務の世界では、繰越欠損金は将来の税負担を軽減する可能性を持つ重要な資産でもあります。

そのため、M&Aでも繰越欠損金を持つ会社が注目されることがあります。

では、その会社が解散し、清算することになった場合、繰越欠損金はどうなるのでしょうか。

今回は、会社清算における繰越欠損金の考え方について整理してみます。

繰越欠損金とは何か

まず、繰越欠損金の意味を確認しておきましょう。

会社が赤字になると、その赤字は翌期以降に繰り越すことができます。

そして将来黒字になったときに、その黒字と相殺することができます。

例えば、

前年までの繰越欠損金 1億円

当期利益 5,000万円

の場合、利益5,000万円を欠損金と相殺できるため、課税所得はゼロになります。

つまり繰越欠損金は、将来の法人税を減らす可能性を持つ権利なのです。

そのため税務上は非常に重要な存在です。

赤字会社ほど欠損金を抱えている

解散や清算を検討する会社の多くは、業績不振を抱えています。

そのため、長年にわたって赤字を計上し、多額の繰越欠損金を持っていることがあります。

講義資料の事例でも、解散時点で1億5,000万円の繰越欠損金が存在しています。さらに解散事業年度の赤字が加わり、清算事業年度では1億8,000万円に増加しています。

経営者の中には、

「これだけ赤字があるのだから、税金は一生払わなくて済むのではないか」

と思う方もいます。

しかし現実はそれほど単純ではありません。

清算中にも利益は発生する

会社が清算に入ると営業活動は停止します。

しかし税務上の利益が発生しなくなるわけではありません。

例えば、

・事業譲渡

・不動産売却

・有価証券売却

・債務免除

などによって利益が発生することがあります。

講義資料の事例でも、食品卸売事業を譲渡した結果として事業譲渡益が発生しています。

このような利益に対して、繰越欠損金を利用できる場合があります。

そのため、清算局面では欠損金の活用が大きなテーマになるのです。

欠損金は最後まで活用できるとは限らない

経営者が誤解しやすいのは、

「欠損金があるから安心」

という考え方です。

欠損金は利益が発生して初めて価値を持ちます。

利益が発生しなければ利用する機会がありません。

例えば、

繰越欠損金 2億円

清算期間中の利益 3,000万円

であれば、利用できるのは3,000万円分だけです。

残り1億7,000万円は使われないまま消滅する可能性があります。

つまり、欠損金は現金ではありません。

将来利益が出た場合にのみ価値を持つ「潜在的な資産」なのです。

解散前の事業譲渡が重要になる理由

M&Aや事業再編の現場では、解散前に事業譲渡を行うケースがあります。

その理由の一つが欠損金の活用です。

もし事業譲渡によって利益が発生すれば、その利益と繰越欠損金を相殺できる可能性があります。

結果として法人税負担を抑えることができます。

講義資料でも、

食品卸売事業を譲渡し、

その後に会社を清算する

という流れが採用されています。

これは単なる事業整理ではありません。

税務上も合理的な戦略と言えるのです。

完全子会社かどうかで取扱いが変わる

清算税務でさらに重要なのが親子関係です。

講義資料でも、

・完全支配関係がない場合

・完全支配関係がある場合

で取扱いが異なることが説明されています。

特に、

・株式消滅損

・欠損金の引継ぎ

は大きな論点になります。

親会社が100%保有している場合と、60%保有している場合では税務上の結果が異なることがあります。

そのため、単純に会社を閉じればよいという話ではありません。

資本関係まで含めて検討する必要があります。

欠損金は会社の最後の財産かもしれない

会社の資産というと、

・現金

・不動産

・在庫

・有価証券

を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし税務上は、繰越欠損金も重要な財産です。

もちろん帳簿に現金として載るわけではありません。

しかし、将来の税負担を減らす可能性を持つという意味では、大きな経済的価値があります。

そのため、解散を決める前に、

・どれだけ欠損金があるのか

・活用できる可能性があるのか

を確認することが重要になります。

税理士が果たすべき役割

清算局面では税理士の役割が非常に大きくなります。

なぜなら、

・欠損金残高の確認

・事業譲渡との組み合わせ

・資産売却との関係

・親子会社関係の整理

などを総合的に判断しなければならないからです。

単なる申告書作成ではありません。

経営者にとって最も有利な出口戦略を設計する仕事になります。

税理士には、会社の最後の局面で最大限の価値を引き出す支援が求められるのです。

結論

繰越欠損金は、赤字会社が持つ重要な税務上の財産です。

清算に入った後も、事業譲渡や資産売却によって発生する利益と相殺できる可能性があります。

しかし、利益が発生しなければ利用できず、そのまま消滅することもあります。

だからこそ、解散を決める前に欠損金の活用可能性を検討することが重要です。

会社の最後の価値は、目に見える資産だけではありません。

繰越欠損金という見えない財産をどう活かすかが、出口戦略の成否を左右することもあるのです。

参考

近畿税理士会 税法実務講座 法人税

税理士として知っておきたいM&Aの基礎知識⑥ 清算、M&Aをさらに活用するために

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