税理士は会社法の視点から事業承継をどう支援するべきか 顧問業務編

税理士

事業承継の相談を受けたとき、多くの税理士はまず相続税や贈与税、自社株評価について検討を始めます。

もちろん、それらは税理士の重要な専門分野です。

しかし、事業承継を円滑に進めるためには、税務だけでは十分とはいえません。

会社法に基づく手続きや会社の法務資料が適切に整備されていなければ、承継そのものが予定どおり進まないこともあるからです。

これからの税理士には、税務と会社法の両方を意識した顧問業務が求められる時代になっています。

今回は、会社法の視点から税理士が果たすべき役割について考えてみます。

事業承継は税金だけの問題ではない

事業承継というと、どうしても税金の話が中心になりがちです。

しかし実際には、

・株式を誰が保有しているのか

・株式は適切に承継されているのか

・定款は現在の会社の実態に合っているか

・役員変更登記は適切に行われているか

など、多くの会社法上の確認事項があります。

これらが整理されていなければ、税務対策だけ進めても事業承継は円滑に進みません。

顧問税理士だから気付けることがある

税理士は毎年決算や申告を通じて会社と関わっています。

経営者との信頼関係も深く、会社の状況を最もよく理解している専門家の一人です。

だからこそ、

「株主名簿は更新されていますか」

「定款は最近確認しましたか」

「役員変更登記は済んでいますか」

といった確認を自然な形で行うことができます。

このような日常の会話が、大きなトラブルを未然に防ぐことにつながります。

法務資料の整備は企業価値を高める

株主名簿や定款、株主総会議事録、役員変更登記などは、一見すると税務とは関係がないように思えるかもしれません。

しかし、事業承継やM&Aでは、これらの資料が必ず確認されます。

資料が適切に整備されている会社は、管理体制がしっかりしているという評価を受けやすくなります。

税理士が日頃から法務資料の重要性を伝えることは、企業価値を高める支援にもつながります。

専門家との連携が顧問業務の質を高める

税理士が会社法上の手続きをすべて行うわけではありません。

定款変更や商業登記は司法書士が、法的な紛争対応は弁護士が専門としています。

重要なのは、自分だけで対応しようとすることではなく、必要なタイミングで専門家へつなぐことです。

税理士が中心となって司法書士や弁護士と連携することで、経営者は安心して事業承継を進めることができます。

専門家同士の連携は、顧問業務の大きな付加価値になります。

税理士は未来を支える伴走者になる

これからの税理士に求められる役割は、申告書を作成することだけではありません。

会社が将来も発展し続けるために必要な課題を早めに発見し、適切な専門家と連携しながら解決へ導くことも重要な役割です。

事業承継は、その代表的な場面といえるでしょう。

税務だけでなく会社法の視点も持つことで、経営者に対する提案の幅は大きく広がります。

税理士は「税金の専門家」から「経営の伴走者」へと役割を進化させることが期待されています。

顧問業務は予防型へ変わる

税務申告は、過去の取引を整理する仕事です。

一方、事業承継支援は未来に向けた仕事です。

問題が起きてから対応するのではなく、

・法務資料の確認

・株主構成の整理

・事業承継計画の策定

・専門家との連携

などを早い段階から進めることで、多くのリスクは未然に防ぐことができます。

予防型の顧問業務こそが、これからの税理士に求められる価値ではないでしょうか。

結論

事業承継を成功させるためには、税務だけではなく会社法の視点も欠かせません。

株券、株主名簿、定款、株主総会議事録、役員変更登記など、一つひとつは基本的な事項ですが、それらが適切に整備されていることが、円滑な事業承継やM&Aにつながります。

税理士が会社法の基本知識を身につけ、司法書士や弁護士と連携しながら顧問先を支援することで、経営者に提供できる価値はさらに大きくなります。

これからの税理士には、「税務の専門家」という枠を超え、会社の未来を支える総合的な経営支援者としての役割が、ますます期待されていくのではないでしょうか。

参考

企業実務 2026年7月号

株券発行会社であることのリスク

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