築古マンションを購入しようとして管理状況を調べたところ、管理組合に借入金があることが分かったら、不安になる人は多いでしょう。
マンション全体に借金があるなら、その物件は避けた方がよいと考えるかもしれません。
しかし、借入金があるという事実だけで管理状態が悪いとは判断できません。
必要な大規模修繕を先送りせず実施するため、計画的に借り入れを利用しているマンションもあるからです。
重要なのは借金の有無ではなく、なぜ借りたのか、そしてどのように返していくのかです。
なぜ管理組合が借金をするのか
マンションでは、将来の大規模修繕などに備えて修繕積立金を集めています。
本来は、この積立金の範囲内で必要な工事を行えることが望ましいでしょう。
しかし、実際の工事費が予定より高くなったり、想定していなかった修繕が必要になったりすると、積立金だけでは資金が足りなくなる場合があります。
そこで管理組合が不足分を借り入れ、工事を実施することがあります。
つまり、管理組合の借金はマンションの修繕費を時間をかけて負担するための資金調達手段の一つと考えることができます。
借金がなくても安心とは限らない
マンションを比較するとき、
借入金があるマンション
借入金がないマンション
という2つがあれば、後者の方が安全に見えます。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
借金がなくても、資金不足を理由に必要な大規模修繕を延期している可能性があるからです。
外壁や防水、給排水設備などの劣化が進んでいるにもかかわらず、資金がないため工事を先送りしていれば、将来さらに大きな修繕費が必要になることがあります。
借金がないという数字だけでは、建物が適切に維持されているかどうかまでは分かりません。
借金をして修繕するという考え方
例えば、大規模修繕に1億5,000万円必要なのに、修繕積立金が1億円しかなかったとします。
不足額は5,000万円です。
対応方法として、区分所有者から一時金を集めることが考えられます。
しかし、各世帯に一度に大きな負担を求めることが難しい場合もあります。
そこで不足する5,000万円を借り入れ、今後の修繕積立金などから少しずつ返済する方法があります。
必要な工事を先送りせず、負担する時期を分散する考え方です。
借り入れそのものが直ちに問題なのではなく、借り入れ後の資金計画が成立しているかが重要になります。
何のための借金なのかを確認する
購入前に管理組合の借入金が判明したら、まず資金使途を確認します。
大規模修繕のためなのか、給排水設備の更新なのか、別の工事なのかによって意味が違います。
さらに、その工事が本当に必要だったのかも確認したいところです。
老朽化した設備を計画的に更新するための借り入れなら、マンションの維持管理に必要な投資と考えることができます。
反対に、毎年のように資金不足が続き、日常的な支出まで借金に依存する状態なら、管理組合の財政構造そのものを確認する必要があります。
返済計画を見る
借入金を見るときに最も重要なのが返済計画です。
現在いくら借りているのかだけでは十分ではありません。
毎年いくら返済するのか。
何年後に完済する予定なのか。
返済原資は何なのか。
返済しながら次の大規模修繕に向けた積み立てもできるのか。
こうした点を確認します。
借金を返済するために修繕積立金をすべて使ってしまえば、次の修繕に必要なお金を準備できません。
借金の返済と将来の積み立てを同時に行えるかを見る必要があります。
修繕積立金の値上げにも注目する
管理組合が借り入れを行ったことをきっかけに、修繕積立金を引き上げる場合があります。
購入者から見ると負担増なので、悪い話のように感じるかもしれません。
しかし、長期的な資金不足を解消するため適切な水準まで積立金を引き上げたのであれば、財政改善の一環と見ることもできます。
重要なのは、値上げによって借入金を返済し、さらに将来必要となる修繕費まで確保できる計画になっているかです。
単に値上げしたという事実だけではなく、その目的と将来の収支を見る必要があります。
住民の滞納状況も確認する
返済計画がしっかりしていても、修繕積立金を滞納する区分所有者が多ければ計画通りに進まない可能性があります。
例えば帳簿上では毎年一定額の修繕積立金が入る予定でも、実際の入金額が少なければ借入金の返済に影響します。
したがって、借入残高と合わせて管理費や修繕積立金の滞納状況も確認することが重要です。
マンションの財政を見るときには、予定されている収入だけではなく、実際にお金が集まっているかを見る必要があります。
次の大規模修繕まで考える
借金を無事に返済できれば問題が解決するとは限りません。
マンションでは大規模修繕が繰り返し必要になります。
現在の借入金を返済している間にも建物は年を重ねます。
次の大規模修繕や設備更新の時期がやってきます。
例えば借入金の完済予定と次回の大規模修繕が同じ時期なら、資金負担が続く可能性があります。
借入金だけを切り離して見るのではなく、長期修繕計画と重ね合わせて確認することが重要です。
総会議事録を見ると背景が分かる
管理組合がなぜ借り入れを選んだのかを知るには、総会議事録が重要な資料になります。
例えば、
工事費が当初予定より増えた
一時金では住民負担が大きすぎる
修繕積立金を増額したうえで借り入れる
といった議論が記録されている場合があります。
借入残高という一つの数字だけでは分からない管理組合の考え方を見ることができます。
築古マンションを購入するときには、数字と議事録を組み合わせて確認することが大切です。
借金より危険なのは計画がないこと
管理組合の借金で本当に注意したいのは、借金そのものではありません。
なぜ借りたのか分からない。
返済計画が明確ではない。
返済後の修繕資金を準備できない。
積立金不足が繰り返されている。
こうした状態の方が問題です。
逆に、必要な工事を実施し、修繕積立金を適切な水準へ見直し、返済計画と次の修繕計画まで整えているのであれば、借入金だけを理由に判断するのは早計です。
結論
管理組合に借金があるからといって、そのマンションを直ちに問題物件と考えることはできません。
必要な大規模修繕を先送りせず実施するため、借り入れを利用している場合もあります。
購入前に確認したいのは、借入残高だけではありません。
借り入れの目的、返済期間、返済原資、修繕積立金の水準、滞納状況、そして次の大規模修繕まで含めた長期的な資金計画を見る必要があります。
借金がなくても修繕を先送りしていれば安心とはいえません。
築古マンションで重要なのは、借金があるかないかという一つの数字ではなく、必要な修繕を実施しながらマンションの財政を持続させられる仕組みができているかどうかなのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 築古物件購入の落とし穴
日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 中古物件価格を大きく左右