税務調査では申告漏れが見つかっても、すべてが重加算税の対象になるわけではありません。
重加算税が課されるのは、「隠蔽又は仮装」が認められた場合です。
では、実際にはどのような行為が「隠蔽又は仮装」と判断されやすいのでしょうか。
今回は、税務調査で問題となる代表的な事例を紹介しながら、その考え方を解説します。
売上を帳簿に記載しない
最も典型的なのが、売上の一部を帳簿に記載しないケースです。
例えば、現金で受け取った売上だけを帳簿から除外したり、一部の請求書を作成せずに取引を処理したりする行為です。
帳簿上の売上を意図的に少なく見せることで、所得を減らし、納税額を少なくしようとするため、重加算税の対象となる可能性があります。
税務署は、預金口座の入金記録や取引先への確認などを通じて、帳簿に記載されていない売上がないかを調査します。
架空の経費を計上する
実際には存在しない経費を計上することも、典型的な不正行為です。
例えば、
・実在しない外注費を計上する
・架空の請求書を作成する
・私的な支出を事業経費として処理する
といったケースがあります。
経費を多く計上すれば利益が少なくなり、納税額も減ります。
そのため、意図的に架空経費を作り出した場合には、重加算税が課される可能性があります。
二重帳簿を作成する
税務調査で悪質性が高いと判断されやすいのが、二重帳簿の作成です。
税務署へ提出する帳簿とは別に、本当の売上や利益を記録した帳簿を保管している場合です。
二重帳簿は、税務署を欺くための計画的な工作と考えられるため、「隠蔽又は仮装」を示す代表的な事例として扱われます。
現在では紙の帳簿だけではなく、パソコンやクラウド上のデータも調査対象になるため、電子データによる二重管理も発見されることがあります。
名義を借りて所得を分散する
所得を家族や知人の名義に付け替えることも問題になります。
例えば、自分の売上を家族名義の事業として計上したり、実際には働いていない家族へ給与を支払ったように見せたりするケースです。
名義だけを変更して所得を隠す行為は、税務署から実態を詳しく調査されます。
契約書の内容だけではなく、実際に誰が業務を行っていたのか、誰が利益を受け取っていたのかまで確認されることがあります。
証拠書類を隠したり廃棄したりする
税務調査が始まってから証拠書類を廃棄したり、改ざんしたりすることも重大な問題になります。
例えば、
・請求書を破棄する
・領収書を書き換える
・帳簿データを書き換える
・電子メールを削除する
などの行為です。
証拠を隠そうとする行為そのものが、不正の意思を示す事情として評価されることがあります。
そのため、調査への対応では資料を正確に保存し、誠実に説明することが重要です。
税務署は全体の状況を見て判断する
一つひとつの行為だけで重加算税が決まるわけではありません。
税務署は、
帳簿
預金口座
請求書
契約書
電子データ
取引先からの聞き取り
など、多くの資料を総合的に確認します。
その結果、偶然のミスではなく、税額を少なく見せるための意図的な工作があったと認められた場合に、「隠蔽又は仮装」が問題となります。
税務調査では、一つの証拠だけではなく、全体の事実関係が重視されるのです。
結論
税務調査で重加算税の対象となるのは、単なる申告ミスではなく、売上除外や架空経費、二重帳簿の作成、名義の仮装、証拠書類の改ざんなど、意図的に税額を少なく見せようとする行為です。
税務署は帳簿だけで判断するのではなく、資金の流れや電子データ、関係者への確認などを通じて事実関係を総合的に分析します。
日頃から正確な帳簿を作成し、取引を適切に記録・保存することが、不要な疑いを避ける最も確実な方法です。適正な経理処理は、税務調査への備えであると同時に、事業への信頼を支える大切な基盤でもあります。
参考
税のしるべ
2026年7月20日
連載「続・傍流の正論~税相を斬る」弁護士・税理士 品川芳宣
第99回 重加の論点⑥、「偽りその他不正」との関係