日本では今後、巨大な相続時代が到来します。
高齢世代に集中している預金、不動産、株式などの資産が、今後20〜30年をかけて次世代へ移転していきます。
この相続マネーは、日本経済にとって極めて大きな意味を持ちます。
なぜなら、その資金が、
- 日本国内へ向かうのか
- 海外へ向かうのか
によって、日本の株式市場、円相場、金融政策、さらには「国富」の構造まで変わる可能性があるからです。
特に近年は、
- オルカン人気
- 米国株投資
- NISA拡充
- 円安不安
などを背景に、個人マネーの海外シフトが進みつつあります。
今回は、「相続マネーは海外へ流出するのか」というテーマを、国富と資金循環の視点から整理します。
日本は「内向き資産国家」だった
長年、日本の家計金融資産は国内に滞留してきました。
高齢世代を中心に、
- 預金
- 郵便貯金
- 国内保険
- 国内不動産
への偏重が強く、日本人は世界的に見ても「内向き」の資産保有構造を持っていました。
背景には、
- デフレ
- 円高時代
- 国内金利安定
- 日本企業中心経済
があります。
つまり、
「日本円で持っていれば安心」
という時代が長く続いていました。
しかし次世代は「世界投資世代」
現在の現役世代は、高齢世代とは異なる環境で資産形成を始めています。
特に近年は、
- NISA普及
- オルカン人気
- 米国株投資
- SNSによる投資情報拡散
などによって、「世界分散投資」が一般化しつつあります。
つまり今後の相続では、
「国内預金を受け継ぐ世代」
が、
「海外資産へ再配分する世代」
になる可能性があります。
これは日本の資金循環にとって大きな転換点です。
「オルカン相続」は実質的な海外投資
全世界株式型投信、いわゆるオルカンは、一見すると日本の投資信託です。
しかし実態としては、
- 米国株
- 欧州株
- 新興国株
などを大量に含む国際分散商品です。
つまり日本人がオルカンへ資金を投じることは、
実質的には海外企業へ投資している
ことになります。
特に全世界株指数では米国株比率が非常に高く、実態としては「米国中心資産」になっている面もあります。
そのため、相続マネーがオルカンへ流れることは、
「国内預金 → 海外株式」
への資金移動とも言えます。
それは「国富流出」なのか
ここでよく議論されるのが、
「日本人の資産が海外へ流出するのではないか」
という問題です。
確かに、日本人の資金が海外株へ向かえば、
- 国内預金減少
- 国内株離れ
- 海外市場依存
が進む可能性があります。
一方で、単純に「悪い流出」とは言い切れません。
なぜなら、日本は人口減少社会に入っており、国内市場だけでは高成長を期待しにくい面があるからです。
つまり海外投資は、
「日本人が世界経済の成長を取り込む手段」
でもあります。
これは「国富流出」というより、
「国富の国際分散」
とも言えます。
日本企業自身も海外で稼ぐ時代
さらに重要なのは、日本企業自身も海外で利益を稼ぐ構造になっていることです。
現在、日本の経常収支黒字の大部分は、
- 海外子会社配当
- 海外投資収益
- 国際M&A収益
などによって支えられています。
つまり日本はすでに、
「モノを輸出して稼ぐ国」
から、
「海外資産で稼ぐ国」
へ変わりつつあります。
その意味では、家計資産も国際分散が進むこと自体は、日本経済の構造変化と整合的とも言えます。
円安不安が海外投資を加速させる
現在、個人の海外投資を後押ししている最大要因の一つが「円安不安」です。
インフレ時代では、
- 円の購買力低下
- 輸入物価上昇
- 日本の実質賃金停滞
などが意識されます。
その結果、
「日本円だけで資産を持つのは不安」
という心理が強まりやすくなっています。
これは特に若い世代ほど強い傾向があります。
つまり今後の相続マネーは、
「国内で運用する」
より、
「通貨分散する」
方向へ向かう可能性があります。
日本株市場にとっては逆風なのか
では、相続マネーの海外流出は、日本株市場にとってマイナスなのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
たとえば、
- 日本企業のガバナンス改善
- 高配当化
- 株主還元強化
- 東証改革
などによって、日本株の魅力が高まれば、国内資金が日本株へ向かう可能性もあります。
また、オルカンにも日本株は含まれています。
つまり重要なのは、
「国内か海外か」
だけではなく、
「日本企業が投資対象として魅力を維持できるか」
です。
本当に危険なのは「投資されないこと」
むしろ日本経済にとって本当に問題なのは、
資金が海外へ向かうこと
ではなく、
資金が何にも投資されず停滞すること
かもしれません。
デフレ時代、日本では巨額の預金が低成長経済に滞留してきました。
しかしインフレ社会では、
「現金のまま持つリスク」
も大きくなります。
つまり今後は、
- 国内投資
- 海外投資
- スタートアップ投資
- 株式市場
などへ資金が循環すること自体が重要になります。
「国富」の意味も変わり始める
かつて国富とは、
- 国内工場
- 国内不動産
- 国内預金
のような「国内に存在する資産」を意味する面が強くありました。
しかし現在は、
- 海外株
- 海外企業収益
- 国際投資
- デジタル資産
などを含めた「グローバル資産」が重要になっています。
つまり今後は、
「資産が日本国内にあるか」
より、
「日本人がどれだけ世界資産を持っているか」
が重要になる可能性があります。
結論
今後、日本では巨大な相続マネー移転が進みます。
その資金は、従来のように預金へ滞留するだけでなく、
- オルカン
- 米国株
- 海外ETF
- 外貨建て資産
などへ向かう可能性があります。
これは一部では「国富流出」とも見えます。
しかし一方で、
「日本人が世界経済へ投資する時代」
とも言えます。
重要なのは、
- 国内か海外か
だけではなく、
- 資産が成長へ向かうか
- 実質価値を維持できるか
- 日本企業が魅力を持てるか
です。
これからの日本では、
「日本円を守る時代」
から、
「世界資産の中で日本人の富をどう守るか」
を考える時代へ移り始めているのかもしれません。
参考
・日本銀行「資金循環統計」
・財務省「国際収支統計」
・金融庁「NISA関連資料」
・内閣府「高齢社会白書」
・日本経済新聞 各関連記事