少子化対策というと、児童手当や教育費の軽減など、お金の支援がまず思い浮かびます。
しかし、子どもを育てるために必要なのはお金だけではありません。
時間と労力も必要です。
特に共働き世帯では、夫婦のどちらが家事や育児を担うのかが、その後の家族計画にも影響します。
2025年の出生動向基本調査では、理想の人数の子どもを持たない理由として、これ以上育児の心理的、肉体的負担に耐えられないという回答が27.8パーセントありました。
第2子以降を考えるとき、家庭内の負担をどう分けるかは重要な問題です。
共働きなら家事育児も二人の仕事になる
夫婦とも働いて所得を得る共働き世帯では、二人とも仕事に時間を使います。
それでも家庭では食事を作り、洗濯や掃除をしなければなりません。
子どもがいれば、さらに育児が加わります。
保育園への送迎があります。
食事や入浴があります。
寝かしつけがあります。
子どもが病気になれば仕事を休んで対応する必要もあります。
共働きでありながら、こうした仕事の大部分を一方だけが担えば、その人には仕事と家庭の二重の負担がかかります。
家事育児が女性に偏ると何が起きるのか
記事では、育児や家事の負担が女性に偏る状況が続けば、第2子以降の出産をためらう2人目の壁を解消できないと指摘しています。
第1子を育てる中で大きな負担を経験した女性が、第2子を考えるとします。
もう一度出産する。
乳幼児を育てる。
仕事を休む。
職場復帰後も保育園の送迎をする。
こうした負担の多くを再び自分が担うと予想すれば、第2子をためらうことは十分に考えられます。
第2子を持つかどうかは、夫婦の希望だけではなく、第1子を育てた経験にも左右されます。
男性の長時間労働が家庭にも影響する
男性が家事育児をしたいと思っていても、仕事から帰れなければ実際にはできません。
長時間労働が続けば、平日の家事や育児を配偶者に任せざるを得ない場合があります。
問題を家庭内の意識だけに求めることはできません。
企業の働き方も関係しています。
残業を減らす。
育児休業を取得しやすくする。
子どもの病気などに対応できる柔軟な勤務制度を整える。
こうした企業の取り組みも、男性が家庭に参加するためには必要です。
男性育休は休むことだけが目的ではない
男性の育児休業についても、単に仕事を休む制度と考えるのでは十分ではありません。
育児休業を通じて、男性が子育てを自分の役割として経験する意味があります。
ミルクを与える。
おむつを替える。
寝かしつける。
家事をする。
子どもの生活リズムを知る。
こうした経験を夫婦で共有できれば、育児休業が終わった後も家事や育児を分担しやすくなる可能性があります。
取得した日数だけではなく、その期間にどのように育児へ参加したかも重要です。
家事育児の分担は女性のキャリアにも関係する
家事や育児が女性に集中すると、仕事にも影響します。
保育園への迎えがあるため残業できない。
子どもが病気になるたびに仕事を休む。
勤務時間を短くする。
転勤や責任の大きな仕事を断る。
こうしたことが重なれば、昇進や所得に影響する可能性があります。
その状態で第2子を持てば、さらにキャリアへの影響が大きくなると考える人もいるでしょう。
男性が家事や育児を担うことは、単に女性の家庭内の負担を減らすだけではありません。
女性が仕事を続けやすくし、世帯所得を維持することにもつながります。
第2子を持つ判断にも影響する
2025年の調査では、夫婦が予定する子どもの数は平均1.95人となり、初めて2人を下回りました。
予定する子どもの数が2人以上の夫婦の割合も72.9パーセントと、調査開始以降で最低となりました。
もちろん、この原因を家事育児の分担だけに求めることはできません。
教育費があります。
住宅費があります。
年齢の問題もあります。
しかし、第1子の育児を夫婦二人で無理なく担えた家庭と、一方に大きな負担が集中した家庭では、第2子に対する受け止め方が違っても不思議ではありません。
2人目の壁を考えるうえで、家庭内の負担分担は重要な要素です。
家事育児の時間を増やすだけでは十分ではない
男性の家事育児時間を増やすことは重要です。
ただし、単純に何時間家事をしたかだけを見るのでは十分ではありません。
誰が保育園からの突然の連絡に対応するのか。
誰が子どもの予防接種や学校行事の日程を把握しているのか。
誰が食事や日用品の在庫を考えているのか。
家庭には、実際の作業だけでなく、予定を把握し判断する見えにくい負担もあります。
こうした役割まで夫婦で共有できるかどうかが、本当の意味での共育てにつながります。
少子化対策は家庭だけに求められない
家事や育児を夫婦で分担しましょうと言うだけでは問題は解決しません。
男性が毎日長時間働かなければならない職場であれば、家庭での分担には限界があります。
女性だけが育児休業や短時間勤務を取得することが当然とされる職場でも、負担の偏りは変わりにくくなります。
企業の働き方、育児休業制度、保育サービス、通勤時間など、家庭の外側にある環境も変える必要があります。
家庭内の役割分担と社会の働き方はつながっています。
結論
男性の家事育児が少子化対策につながる理由は、単に女性を手伝うからではありません。
共働きが一般的になる中で、家事や育児を一方だけが担う仕組みでは、家庭生活そのものを維持する負担が大きくなるからです。
2025年の出生動向基本調査では、理想の人数の子どもを持たない理由として、これ以上育児の心理的、肉体的負担に耐えられないという回答が27.8パーセントありました。
第1子を育てる負担が一方に集中すれば、第2子をためらう2人目の壁にもつながります。
男性が家事や育児を担うためには、本人の意識だけではなく、長時間労働を減らし、育児休業や柔軟な働き方を利用できる職場環境も必要です。
共働きを増やすのであれば、共育ても同時に進めなければなりません。
夫婦のどちらかが仕事や家庭を犠牲にするのではなく、二人とも働き、二人で育てられること。
それが第2子以降を希望する家庭の負担を軽くし、結果として少子化対策にもつながっていくのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く