生成AIで議事録を作って大丈夫か 取締役会や経営会議で注意すべき情報管理

効率化
青 幾何学 美ウジネス ブログアイキャッチ note 記事見出し画像 - 1

生成AIの活用によって、大幅に効率化できる業務の1つが議事録の作成です。

会議の音声を文字起こしし、その内容を生成AIに読み込ませれば、要点の整理や議事録の作成にかかる時間を大きく短縮できます。

会議終了後に担当者が何時間もかけて議事録を作る必要がなくなる可能性があります。

しかし、便利だからこそ注意したいことがあります。

それは「議事録には会社の重要情報が集中している」ということです。

特に取締役会や経営会議では、M&A、人事、開示前の決算情報、撤退判断など、会社の意思決定の中枢にある情報が扱われます。

生成AIで議事録を作るという行為は、単なる文章作成の効率化ではありません。

どの情報を外部の生成AIサービスへ渡してよいのかという、企業の情報管理そのものの問題なのです。

議事録作成は生成AIと相性がよい

会議の議事録作成には、多くの手間がかかります。

会議中にメモを取る。

録音内容を確認する。

発言内容を整理する。

決定事項をまとめる。

担当者と期限を確認する。

そして、参加者に確認してもらう。

こうした作業に生成AIを利用すれば、大幅な省力化が期待できます。

特に文字起こしと要約を組み合わせれば、会議終了後の事務作業をかなり減らせるでしょう。

そのため、生成AIの業務利用を考える企業にとって、議事録は導入しやすい分野です。

ところが、資料では「会議の内容こそ企業の最も繊細な情報そのものである」と指摘されています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

ここを見落としてはいけません。

取締役会には最高機密が集まる

取締役会や経営会議では、会社の将来を左右する情報が議論されます。

資料では、取締役会ではM&Aや人事案件、経営会議では開示前の決算情報や撤退判断、経営数字などが扱われる例が示されています。

さらに、企画会議では未発表の商品、マーケティング会議では価格戦略や顧客データなどが議論されます。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

こうして並べてみると、会議には企業が外部へ出したくない情報が集中していることが分かります。

たとえば、まだ公表していないM&A案件を含む取締役会の内容を生成AIに読み込ませたとします。

担当者としては「議事録を作ってもらっているだけ」という認識かもしれません。

しかし情報管理の観点から見れば、未公表の重要情報を生成AIへ入力していることになります。

議事録作成という業務の名称だけで、安全性を判断してはいけないのです。

「要約してもらっただけ」では済まない

生成AIを利用するときに陥りやすいのが、完成した文章だけを見てしまうことです。

生成AIが作った議事録には、重要情報が簡潔に整理されているだけかもしれません。

しかし、その議事録を作るためには、元となる情報を生成AIへ入力する必要があります。

音声データそのものを送信する場合もあります。

文字起こしした全文を入力する場合もあります。

資料では、入力データや会話がモデルの学習に利用される設定の生成AIに入力すれば、企業の意思決定の中枢が外部サーバーに蓄積されていくことになると注意を促しています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

「完成した議事録に秘密情報を書かなければ大丈夫」という話ではありません。

入力段階で何を生成AIへ渡しているのかを見る必要があります。

会議によって情報の重要度は違う

だからといって、すべての会議で生成AIによる議事録作成を禁止する必要があるとは限りません。

重要なのは、会議の種類によって扱いを分けることです。

資料の図表では、社内の会議体について、最高機密の会議体は人間が手作業でまとめるか、学習に再利用されない法人専用環境に限定するという対策が示されています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

つまり、

取締役会。

経営会議。

企画会議。

マーケティング会議。

一般的な社内打合せ。

社外公表を前提とした打合せ。

これらをすべて同じルールで扱う必要はありません。

扱う情報の機密性に応じて、生成AIを使える会議と使えない会議を分ける考え方が重要になります。

会議が終わってから判断するのでは遅い

実務上、特に参考になるのが「会議招集の段階」で生成AI利用の可否を切り分けるという考え方です。

資料でも、会議招集の段階で生成AI利用の可否を切り分けることが対策として示されています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

これは非常に重要です。

会議が終わってから、

「この録音データを生成AIに入れてよいだろうか」

「この議事録には機密情報が含まれているだろうか」

と担当者個人に判断させるのでは遅い場合があります。

会議を設定するときに、

この会議は生成AI利用可。

この会議は法人専用環境のみ利用可。

この会議は生成AI利用不可。

というように決めておけば、現場の担当者も迷いにくくなります。

最高機密の会議は人間が作る選択肢もある

生成AIが便利だからといって、すべての仕事をAIに任せる必要はありません。

資料では、最高機密の会議体について「人間が手作業でまとめる」という選択肢も示されています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

生成AI時代には、何でもAIに置き換えることが先進的であるように感じることがあります。

しかし、情報管理では違います。

効率化によって得られるメリットと、情報漏えいによって発生する損失を比較する必要があります。

たとえば、取締役会議事録の作成時間を数時間短縮できたとしても、M&Aや未開示決算情報などが外部へ漏れるリスクまで負うのであれば、同じようには考えられません。

情報の重要度によっては「あえて人間が行う」という判断も合理的です。

法人向け環境なら何でも入力してよいわけではない

もう1つ注意したいのが、法人向けの生成AIサービスを導入した場合です。

学習に再利用されない法人専用環境を整備することは、企業の生成AI利用を管理するうえで重要な対策になります。

しかし、法人版だから何でも入力してよいという意味ではありません。

企業には、それぞれ守るべき情報があります。

営業秘密。

個人情報。

未公表の経営情報。

取引先から預かった情報。

契約上、第三者への開示が制限されている情報。

利用する生成AIの契約条件やデータの取扱いを確認したうえで、自社として入力可能な情報の範囲を決める必要があります。

「法人プランを契約したから安全」で思考を止めないことが大切です。

議事録には取引先の情報も入ってくる

さらに難しいのが、社外の人が参加する会議です。

商談や共同開発、業務委託の進捗会議などでは、自社の情報だけではなく、取引先の営業秘密や担当者の個人情報が含まれる可能性があります。

資料では、取引先との打合せについて、相手方の同意なく生成AIへ入力すれば秘密保持義務違反となるおそれがあると指摘されています。 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

つまり、自社の情報管理ルールだけでは判断できない場合があります。

自社としては生成AIの利用を認めている。

安全性の高い法人向け環境も導入している。

それでも、相手方との契約や秘密保持義務との関係で入力できない情報があるかもしれません。

ここは社内会議と社外会議を分けて考える必要があります。

会議を分類してルールを決める

企業が実務で取り組みやすい方法は、会議を情報の重要度によって分類することです。

たとえば、最高機密を扱う会議については生成AIを利用しない。

一定の機密情報を扱う会議については、会社指定の法人専用環境だけ利用できるようにする。

一般的な社内会議については、入力禁止情報を定めたうえで利用する。

社外公表を前提とした内容であれば、生成AIを積極的に活用する。

このように段階を設ければ、すべて禁止する必要も、すべて自由にする必要もありません。

生成AIを使えるかどうかを「AIの種類」だけで判断するのではなく「その会議で何を話すのか」から判断することがポイントです。

結論

生成AIによる議事録作成は、企業の生産性を大きく高める可能性があります。

一方で、議事録の元になる会議には、企業の最も重要な情報が集まっています。

M&A。

人事案件。

開示前の決算情報。

撤退判断。

経営数字。

未発表の商品。

価格戦略。

顧客データ。

こうした情報を含む会議を、一般的な打合せと同じ感覚で生成AIに処理させることには注意が必要です。

重要なのは「生成AIで議事録を作ってよいか」という一律の答えを出すことではありません。

どの会議なら使えるのか。

どの会議では法人専用環境に限定するのか。

どの会議は人間が手作業でまとめるのか。

そして、それを会議招集の段階で決めておくことです。

生成AI時代の議事録管理では、会議が終わってから情報の重要性を考えるのではありません。

会議を始める前から、情報管理は始まっているのです。

参考

企業実務 2026年10月号 生成AI時代における「営業秘密」の漏えいリスクとその対策

タイトルとURLをコピーしました