外形標準課税の申告書を作成していると、多くの人が疑問に思う税目があります。
それが「特別法人事業税」です。
法人事業税を計算した後に、さらに別の税金を計算しなければなりません。
しかも税率は非常に高く、講義資料では260%となっています。
初めて見る人は驚くかもしれません。
「法人事業税があるのに、なぜ似た名前の税金が存在するのか」
今回は特別法人事業税の仕組みと創設された背景について解説します。
特別法人事業税とは何か
特別法人事業税とは、法人事業税額を基礎として計算される税金です。
課税標準は所得でも付加価値額でもありません。
法人事業税額そのものです。
つまり、
法人事業税を計算する
↓
その税額に一定税率を掛ける
↓
特別法人事業税を算出する
という流れになります。
法人事業税の付加税のような仕組みと考えると理解しやすいでしょう。
なぜ新しい税金を作ったのか
制度創設の背景には地方税収の偏在問題があります。
日本には企業が集中している地域があります。
東京都
大阪府
愛知県
などです。
こうした地域では法人事業税収も大きくなります。
一方で地方部では税収確保が難しい状況があります。
そこで国が一旦税収を集め、地域間で再配分する仕組みとして特別法人事業税が創設されました。
地方税なのに実質は再分配制度
特別法人事業税の特徴は、実質的に地方間の財源調整機能を持っていることです。
企業活動は都市部へ集中しやすくなります。
しかし行政サービスは全国で必要です。
もし税収も都市部だけへ集中すれば、地方自治体の財政運営が困難になります。
そこで特別法人事業税を通じて財源調整を行っています。
税制というより地方財政制度の一部といえるでしょう。
法人事業税との違い
名前は似ていますが、法人事業税と特別法人事業税は役割が異なります。
法人事業税は都道府県税です。
事業活動を行う地域の財源になります。
一方で特別法人事業税は税収再配分の仕組みとして機能しています。
納税者から見ると一緒に申告するため違いが分かりにくいかもしれません。
しかし制度目的は大きく異なっています。
講義資料の税率を見ると分かること
講義資料では特別法人事業税率が260%とされています。
この数字だけを見ると非常に高く感じます。
しかし課税標準は法人事業税額です。
例えば法人事業税が1,000万円であれば、
1,000万円×260%
となります。
税率が高く見えるのは課税標準が異なるためです。
税率だけを見て判断してはいけない典型例といえるでしょう。
税理士が注意すべきポイント
特別法人事業税で重要なのは、法人事業税額が正しいことです。
なぜなら課税標準が法人事業税額だからです。
所得割
付加価値割
資本割
のどこかに誤りがあれば、特別法人事業税も連動して誤ります。
つまり特別法人事業税だけを単独で検証しても意味がありません。
まず法人事業税の計算過程を確認する必要があります。
納税者から見た実務上の影響
企業側から見ると、法人事業税と特別法人事業税はセットで負担する税金です。
そのため外形標準課税対象法人では、利益が少なくても一定の税負担が発生します。
特に設備投資を行った直後や景気低迷期には、
利益は少ない
しかし税負担は発生する
という状況になることがあります。
ここに外形標準課税の特徴があります。
地方税制全体の中での位置付け
特別法人事業税を理解すると、日本の地方税制の考え方が見えてきます。
税制は単に税金を集める仕組みではありません。
地域間格差の調整
行政サービスの維持
地方財政の安定
こうした政策目的も担っています。
特別法人事業税はその代表例といえるでしょう。
結論
特別法人事業税は法人事業税額を基礎として計算される税金です。
その目的は地方税収の偏在を是正し、地域間の財源調整を行うことにあります。
税率だけを見ると高く感じますが、制度の背景を理解するとその役割が見えてきます。
税理士には税額計算だけでなく、なぜこの税金が存在するのかまで説明できる知識が求められます。
次回は、法人事業税・特別法人事業税・法人住民税を合わせた「地方税全体の申告書はどのように完成するのか」について解説します。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」