飲食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる制度が予定されています。
家計にとっては食品購入時の負担が軽くなりますが、ここでよく問題になるのが、消費税減税では高所得者ほど得をするのではないかという点です。
確かに、食品への支出額が大きい世帯ほど減税額そのものは大きくなります。
しかし、所得に対してどの程度負担が軽くなるのかという割合で見ると、違った姿が見えてきます。
消費税減税の効果を考えるときには、金額と所得に対する割合を分けて考えることが重要です。
食品を多く買う世帯ほど減税額は大きい
まず減税額そのものを考えてみます。
現在8%の対象飲食料品が1%になれば、減税幅は7ポイントです。
対象となる飲食料品を税抜価格で年間600,000円購入する世帯なら、単純計算による減税額は42,000円です。
年間900,000円なら63,000円です。
年間1,200,000円なら84,000円です。
食品への支出額が大きいほど減税額も比例して大きくなります。
この意味では、消費額の多い世帯ほど金額ベースの恩恵は大きくなります。
高所得だから必ず食品支出も比例して増えるわけではない
ただし、所得が2倍になれば食品への支出も2倍になるとは限りません。
所得が増えれば高価な食品を購入することはあります。
しかし、食べられる量には限界があります。
年収が大きく増えても、米や野菜、肉などの消費量が所得と同じ割合で増えるわけではありません。
所得が増えるにつれて、増えた所得のすべてが食品へ向かうわけではなく、住宅、旅行、教育、金融資産などさまざまな用途へ振り向けられます。
そのため食品への支出額と所得は必ずしも比例しません。
同じ42000円でも所得によって意味が違う
例えば2つの世帯が、それぞれ年間42,000円の減税を受けたとします。
年間所得3,000,000円の世帯にとって42,000円は所得の1.4%です。
年間所得10,000,000円の世帯なら0.42%です。
減税額は同じ42,000円でも、所得に対する割合は大きく異なります。
低所得世帯ほど食品など生活に欠かせない支出が所得に占める割合が高くなりやすいため、食品の消費税減税は所得に対する負担軽減率という視点では意味が大きくなる場合があります。
金額と負担率を混同しない
消費税減税を評価するときに注意したいのが、この2つの尺度です。
1つは、何円減税されたのかという絶対額です。
もう1つは、所得の何%に相当する負担軽減なのかという割合です。
高所得世帯が年間70,000円の減税を受け、低所得世帯が年間40,000円の減税を受けたなら、金額だけを見れば高所得世帯の方が大きな恩恵を受けています。
しかし、それぞれの所得に対する割合を計算すると逆になることがあります。
どちらの尺度を使っているのかを明確にしなければ、同じ政策でも評価が大きく変わって見えます。
消費税の逆進性とは何か
消費税については逆進性という言葉がよく使われます。
所得が低い世帯ほど、所得に占める消費支出の割合が高くなりやすいため、消費税負担を所得に対する割合で見ると重くなりやすいという問題です。
所得の多い世帯では、所得の一部を貯蓄や投資へ回すことができます。
一方、所得が少ない世帯では、食品、住宅、光熱費など日常生活に必要な支出が所得の大きな部分を占めます。
そのため同じ消費税率でも、所得に対する負担感は異なります。
食品を減税する理由もここにある
飲食料品は多くの家庭が日常的に購入します。
特に所得が低い世帯でも削ることが難しい支出です。
そのため食品の税率を低くする制度には、生活必需品に対する税負担を軽くするという考え方があります。
今回予定されている1%への引下げでも、食品価格を通じて幅広い世帯の負担を軽くする効果が期待されます。
一方、所得に関係なく対象食品を購入すれば減税を受けられるため、高所得世帯も対象になります。
所得制限を設けた給付とは、この点が大きく異なります。
高価な食品を買う人ほど減税額が大きくなることもある
食品減税には別の特徴もあります。
同じ種類の食品でも価格には大きな差があります。
例えば税抜価格1,000円の食品なら、7ポイント分の減税額は70円です。
税抜価格10,000円なら700円です。
高価な食品を多く購入する世帯ほど、減税額の絶対額は大きくなります。
飲食料品である限り、所得そのものではなく購入額を基準に減税効果が生じるからです。
この点が、所得に応じて金額を調整できる給付制度との違いです。
所得制限がないことには利点もある
一方、所得制限がない制度には分かりやすさがあります。
対象となる食品を購入すれば、その場で低い税率が適用されます。
所得を申告して審査を受ける必要はありません。
給付の申請も不要です。
スーパーで食品を購入するだけで負担軽減を受けられます。
行政が世帯所得を確認して対象者を決める仕組みと比べると、消費者側から見た手続きは簡単です。
幅広い世帯へ迅速に効果を届けやすいという特徴があります。
給付なら所得に応じて支援額を変えられる
これに対して、給付制度では所得に応じて支援対象や金額を調整できます。
例えば低所得世帯には大きな給付を行い、高所得世帯には給付しないという設計も可能です。
限られた財源を特定の層へ集中させやすいことが特徴です。
ただし、対象者を決めるためには所得情報が必要になります。
制度によっては申請手続きや行政事務も発生します。
食品の消費税減税と所得連動型の給付では、支援の届け方そのものが異なります。
減税額だけで政策効果は判断できない
家計支援策を考えるときには、1世帯当たり何円得をするのかだけでは十分ではありません。
どの所得層にどの程度の負担軽減が届くのか。
所得に対して何%の効果になるのか。
制度を運営するためのコストはいくらか。
財源はいくら必要なのか。
制度終了後にどうするのか。
こうした複数の視点から見る必要があります。
特に今回の1%は2年間限定として予定されているため、その後の給付制度との関係も重要になります。
2年間の減税額で考えると差も大きくなる
年間の対象飲食料品購入額が600,000円なら、単純計算による減税額は年間42,000円です。
2年間なら84,000円です。
年間900,000円なら年間63,000円、2年間で126,000円です。
年間1,200,000円なら年間84,000円、2年間で168,000円です。
購入額が多い世帯ほど、2年間の減税額も大きくなります。
しかし、それが所得の何%に相当するのかまで計算すると、世帯ごとの意味は変わってきます。
結論
飲食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げると、食品への支出額が大きい世帯ほど減税額そのものは大きくなります。
そのため金額だけを見れば、高所得世帯が大きな減税を受けるケースもあります。
しかし、それだけで負担軽減の大きさを判断することはできません。
同じ42,000円の減税でも、年間所得3,000,000円なら所得の1.4%、10,000,000円なら0.42%です。
重要なのは、何円減税されたのかという絶対額と、所得に対してどの程度の負担軽減になったのかという割合を分けて考えることです。
消費税減税は所得に関係なく対象食品を購入した人へ広く効果が及ぶ仕組みです。
一方、所得に応じて支援を集中させるなら給付という方法があります。
どちらがどの世帯にどの程度の効果をもたらすのかを見るには、減税額だけではなく、所得に対する負担率まで確認することが大切です。
参考
日本経済新聞 2026年9月20日 朝刊 消費減税、類似品に差
国税庁 消費税の軽減税率制度