家でもない。
職場や学校でもない。
それでも、自分が安心して過ごせる場所がある。
そんな「居場所」を持っている人は、毎日の生活にゆとりや安心感を感じやすいといわれています。
近年の幸福研究では、幸福を支える要素として、人とのつながりや社会との関わりが重視されています。
その中でも注目されているのが、「サードプレイス」という考え方です。
人生100年時代には、家庭や仕事だけに依存しない居場所を持つことが、豊かな人生につながる重要な条件になりつつあります。
サードプレイスとは何か
サードプレイスとは、「家庭」を第一の場所、「職場や学校」を第二の場所としたとき、それ以外に安心して過ごせる第三の場所を指します。
例えば、
地域のカフェ。
図書館。
公民館。
スポーツクラブ。
趣味のサークル。
ボランティア団体。
こうした場所では、肩書や立場に縛られることなく、自分らしく過ごすことができます。
「役割」ではなく「自分自身」としていられる場所があることは、心の安定につながります。
家庭と職場だけでは負担が大きい
現役世代の多くは、家庭と仕事を中心に生活しています。
しかし、そのどちらかで悩みを抱えると、心の拠り所を失ってしまうことがあります。
職場で人間関係がうまくいかない。
子育てや介護で疲れてしまう。
退職して仕事とのつながりがなくなる。
このようなとき、第三の居場所がある人は気持ちを切り替えやすくなります。
異なる人間関係や新しい環境が、心の支えになるからです。
人生に複数の居場所を持つことは、精神的なリスク分散にもつながります。
地域コミュニティが果たす役割
地域コミュニティは、代表的なサードプレイスの一つです。
町内会。
地域イベント。
趣味の教室。
ボランティア活動。
子どもの見守り活動。
防災訓練。
こうした活動を通じて、世代や職業を超えた交流が生まれます。
近所に顔見知りがいるだけでも、安心感は大きく変わります。
災害時や病気になったときにも、日頃から築いてきた人間関係が支えになることがあります。
地域とのつながりは、安全だけでなく幸福も支える社会資本なのです。
孤独は幸福を大きく左右する
幸福研究では、「孤独」は幸福度を低下させる大きな要因の一つとされています。
一人暮らしかどうかではなく、「相談できる人がいるか」「安心して話せる相手がいるか」が重要です。
サードプレイスには、
気軽に会話ができる。
悩みを相談できる。
共通の趣味を楽しめる。
新しい仲間と出会える。
といった機会があります。
人とのつながりは、お金では買うことのできない大切な財産です。
だからこそ、居場所を持つことは幸福につながるのです。
高齢社会ではさらに重要になる
退職すると、仕事を通じた人間関係は大きく変わります。
毎日顔を合わせていた同僚と会う機会が減り、社会との接点が少なくなる人も少なくありません。
そのようなとき、地域活動や趣味の集まりなどのサードプレイスがあれば、新たな役割や生きがいを見つけることができます。
人生100年時代では、退職後の時間は20年、30年と続くことも珍しくありません。
その長い時間を充実させるためには、家庭以外にも安心して過ごせる場所を持つことが大切になります。
居場所は自分で育てるもの
サードプレイスは、誰かが用意してくれるものではありません。
自分から一歩踏み出すことが大切です。
読書会に参加する。
スポーツクラブへ入会する。
地域のイベントに顔を出す。
ボランティア活動を始める。
最初は少し勇気が必要かもしれません。
しかし、小さな交流の積み重ねが、新しい人間関係を育て、やがて「自分の居場所」へと変わっていきます。
居場所は見つけるものではなく、自ら築いていくものでもあるのです。
結論
サードプレイスとは、家庭や職場以外で安心して過ごせる第三の居場所のことです。
地域コミュニティや趣味のサークル、ボランティア活動などを通じて人とのつながりを持つことは、孤独を防ぎ、人生への満足度や幸福感を高めることにつながります。
人生100年時代には、一つの役割や人間関係だけに頼るのではなく、複数の居場所を持ちながら、自分らしく社会と関わり続けることが、持続的なウェルビーイングを実現する大切な鍵になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年7月30日 朝刊
やさしい経済学 持続可能な社会と幸福(10) 「幸せ」を維持する方策