大学進学は人生を大きく変える重要な投資です。しかし、その費用負担は年々重くなっています。近年は日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を利用する学生も増えていますが、「奨学金」という言葉から支援制度という印象を持つ一方で、実際には長期間にわたって返済を続ける借金でもあります。
特に金利上昇局面では、卒業後の返済負担が大きく変わる可能性があります。人生100年時代を迎えた今、大学進学時の資金計画は親子で真剣に考えるべきテーマになっています。
奨学金には給付型と貸与型がある
奨学金には大きく分けて給付型と貸与型があります。
給付型は返済不要ですが、世帯収入などの条件があり利用できる人は限られます。一方、貸与型は多くの学生が利用できる制度です。
貸与型には無利子と有利子があり、家計基準は有利子の方が緩やかに設定されています。そのため実際には有利子奨学金の利用者が最も多くなっています。
大学進学時には「毎月いくら借りるか」という視点に目が向きがちですが、本来は「卒業後にいくら返済するのか」を先に考えるべきです。
借入時の負担ではなく、返済時の負担こそが重要だからです。
金利上昇が返済総額を大きく変える
これまで長く続いた超低金利時代には、奨学金の利息はほとんど気にならない水準でした。
しかし日銀の金融政策変更に伴い、奨学金の金利も上昇しています。
例えば、同じ金額を借りても卒業年度が違うだけで総返済額に数十万円の差が生じるケースがあります。
借入総額が300万円を超える場合、金利が1%違うだけでも返済総額への影響は決して小さくありません。
大学生本人はまだ社会人としての収入を経験していないため、将来の返済負担を正確にイメージすることは容易ではありません。
だからこそ親が一緒になってシミュレーションを行うことが大切です。
返済期間は20年近く続くこともある
奨学金の返済は卒業後すぐに始まります。
借入額によっては返済期間が20年近くに及ぶ場合もあります。
22歳で社会に出た場合、40歳前後まで返済が続くことになります。
この期間は結婚、出産、住宅購入、子育てなど人生で最もお金が必要になる時期と重なります。
毎月2万円前後の返済でも、住宅ローンや教育費と同時に発生すると家計への負担は大きくなります。
奨学金は将来の自分への投資である一方、人生設計にも長期間影響を与える金融商品であることを理解しておく必要があります。
借りる額は「手取りの1割以下」が一つの目安
奨学金の適正額を考える際には、将来の返済額から逆算する考え方が有効です。
一般的には、月々の返済額を将来の手取り収入の1割以下に抑えることが目安とされています。
例えば手取り月収が25万円なら、返済額は2万5000円以下が望ましいという考え方です。
在学中は毎月数万円の差に見えても、卒業後の返済期間全体で考えると大きな差になります。
大学生活が始まってから必要以上に借りていると感じたら、貸与額を減額することも可能です。
借りられる上限まで借りるのではなく、本当に必要な金額だけ借りる姿勢が重要です。
入学前に必要なお金も忘れてはいけない
大学進学では授業料だけでなく、入学前にもまとまったお金が必要になります。
受験料、交通費、宿泊費、入学金、住居契約費用、引っ越し費用、家具家電購入費などです。
進学先によっては100万円から200万円程度が必要になることもあります。
ところが奨学金の多くは入学後に支給が始まるため、入学前の費用には利用できません。
そのため親は早い段階から教育資金を準備しておく必要があります。
近年は学校推薦型選抜や総合型選抜の普及により、年内に入学金を納付するケースも増えています。
進学スケジュールを確認し、資金準備を前倒しで進めることが求められています。
返済困難になったらすぐ相談する
人生には予想外の出来事が起こります。
転職、失業、病気などによって返済が難しくなる場合もあります。
そのような時のために、JASSOには返還期限猶予制度や減額返還制度が用意されています。
重要なのは、返済できなくなってから放置しないことです。
延滞が続くと信用情報に登録され、住宅ローンやクレジットカードの審査に影響する可能性があります。
困った時は早めに相談し、公的制度を活用することが大切です。
結論
奨学金は教育機会を広げる重要な制度です。しかし、それは同時に長期間返済する借入金でもあります。
人生100年時代においては、大学卒業後の20年近い返済期間まで見据えた資金計画が必要です。
親は「今、いくら借りられるか」ではなく、「将来、無理なく返せるか」という視点で考えるべきでしょう。
大学進学は子どもの未来への投資です。その投資を成功させるためには、進学前から親子で返済計画まで話し合うことが重要なのです。
参考
日本経済新聞 2026年6月17日夕刊
「マネー相談 黄金堂パーラー〉大学生の奨学金(下)貸与型 返済金利が上昇、負担を把握」
日本経済新聞 2026年6月17日夕刊
「入学前の費用、早めに準備 ファイナンシャルプランナー 新美昌也さん」