大学がふるさと納税で寄付を集める時代 返礼品が育てる新しい寄付文化

税理士
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大学の財源というと、授業料や国からの補助金を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、少子化によって学生数の減少が避けにくくなるなか、大学にとって寄付金は重要な財源の一つになりつつあります。

そこで注目されているのが、ふるさと納税を利用して大学への寄付を集める仕組みです。

自治体が大学への寄付の窓口となり、大学ならではの返礼品を用意することで、卒業生や保護者だけでなく、大学の教育や研究に関心を持つ人から幅広く寄付を募ろうとする動きが広がっています。

単なる資金集めではありません。

大学と自治体、卒業生、地域住民を結び付け、新しい寄付文化をつくる仕組みとして、ふるさと納税が利用され始めています。

大学への寄付にふるさと納税を利用する

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付すると、原則として自己負担額二千円を除いた金額について、一定の上限まで所得税や住民税から控除を受けられる制度です。

一般には肉や魚、果物などの返礼品が注目されますが、寄付金の使い道を指定できる自治体も少なくありません。

その仕組みを大学支援に利用する自治体が増えています。

文部科学省によると、ふるさと納税を活用して自治体と寄付を募った学校法人は二〇二四年度に百三十三法人に上りました。

寄付者は自治体にふるさと納税を行い、その使い道として大学への支援を選びます。自治体が受け取った寄付金の一部を大学へ交付することで、ふるさと納税と大学寄付を組み合わせることができます。

大学が単独で寄付を呼びかける場合とは異なり、ふるさと納税という広く知られた制度を入口として利用できるところに特徴があります。

関西大学は吹田市と連携

関西大学は二〇二六年六月、本部を置く大阪府吹田市と連携し、ふるさと納税による返礼品付きの寄付事業を始めました。

主な対象として想定されているのが、卒業生や在学生の保護者など大学と関係の深い人たちです。

特徴的なのは返礼品です。

学生食堂の食事券や大学で開かれる講演の聴講権など、大学ならではの体験を返礼品として用意しています。

一人暮らしをしている学生の食生活を心配する保護者が食事券を子どもに贈るといった使い方もできます。

さらに高額寄付者を対象として、学長や理事長が案内するキャンパスツアーも企画しています。

単に商品を受け取るのではなく、大学とのつながりそのものを返礼として提供しているところが興味深い点です。

返礼品があると大学への交付額は減る

もっとも、返礼品を設ければ寄付金の全額が大学に渡るわけではありません。

吹田市の仕組みでは、返礼品を伴わない寄付の場合、寄付総額の七割が大学に交付され、残りが市の諸経費などに充てられます。

一方、返礼品付きの場合、大学に支給される金額は寄付額のおよそ四割となります。

返礼品の調達などに費用が必要になるためです。

大学にとって短期的な資金調達効率だけを考えれば、返礼品を設けない方が有利です。

それでも返礼品を用意するのは、まず寄付を経験してもらうことに意味があるからです。

最初は返礼品を目的として寄付した人でも、それをきっかけに大学の教育や研究を知り、その後継続的な支援者になる可能性があります。

つまり返礼品は、寄付者を集めるための商品というより、大学と寄付者の最初の接点として位置付けることができます。

大学の教育そのものが返礼品になる

大学によるふるさと納税には、一般的な自治体の返礼品とは異なる特徴があります。

大学には教育、研究、学生、キャンパスという独自の資産があるからです。

例えば公開講座の受講権やキャンパスツアーは、大学だからこそ提供できる返礼です。

大学で生産された商品を返礼品にする例もあります。

北海道江別市の酪農学園大学では、学生らが飼育した牛の乳を使ったアイスクリームなどの乳製品が返礼品となっています。

信州大学では、農学部の学生が育てたヤマブドウを使ったワインなどが、栽培地である長野県南箕輪村への寄付の返礼品となっています。

こうした商品には大学の教育や研究活動が反映されています。

寄付者が返礼品を受け取ることで、大学でどのような教育や研究が行われているのかを知る機会にもなります。

自治体にもメリットがある

大学支援型のふるさと納税は、大学だけのための制度ではありません。

自治体にとっても大学は重要な地域資源です。

学生が地域で生活すれば、住宅、飲食、小売りなど地域経済に需要が生まれます。大学の研究成果が地域企業との共同研究や新規事業につながる可能性もあります。

大学が地域の農産物を研究したり、学生が地域活動に参加したりすることもあります。

大学を支援することが、結果として地域経済や地域社会を支えることにつながるわけです。

そのため、自治体が寄付の窓口となり、大学と一緒に寄付を集めることには一定の合理性があります。

大学支援と地方創生を同時に進める仕組みと考えることもできます。

大学が直接返礼品を用意する動きもある

ふるさと納税を参考にしながら、独自の寄付制度をつくる大学もあります。

芝浦工業大学は二〇二一年に独自の寄付制度を設け、卒業生が経営する企業の商品などを返礼品として提供しています。

単に商品を掲載するだけでなく、その企業を経営する卒業生も紹介します。

寄付を通じて卒業生同士のつながりを再びつくる仕組みになっています。

この制度の導入後、個人からの寄付額は導入前のおよそ二倍になりました。

東北大学でも、年間の寄付総額が一定額以上となった人に、卒業生が活躍する企業の商品や大学の研究成果を生かした商品などを贈っています。

ここでも重要なのは、返礼品そのものより大学との関係です。

卒業後、長い間大学との接点がなかった人が、寄付をきっかけとして母校との関係を取り戻す可能性があります。

日本では個人寄付がまだ小さい

大学がこうした仕組みに力を入れる背景には、日本の寄付文化があります。

日本ファンドレイジング協会によると、二〇二四年の日本の個人寄付総額は国内総生産の〇・三三%でした。

米国の二%や韓国の〇・五%を下回っています。

特に米国では、大学に対する富裕層や卒業生からの巨額寄付が大学経営を支える重要な財源となっています。

しかし、日本で米国と同じモデルをそのまま導入することは簡単ではありません。

そこで、一部の富裕層から巨額の寄付を集めるだけではなく、多くの人に少額から寄付してもらう仕組みをつくることが重要になります。

ふるさと納税は、その入口になり得ます。

寄付者との関係をどう育てるか

大学寄付を考えるうえで重要なのは、一回の寄付額だけではありません。

寄付した人との関係をその後どのように維持するかです。

例えば最初は食事券やワインなどの返礼品に興味を持って寄付した人が、大学の研究内容を知り、翌年も寄付するようになるかもしれません。

さらに大学の活動に共感すれば、返礼品のない寄付へ移る可能性もあります。

卒業生が経営する企業から大学への寄付につながれば、個人寄付から企業寄付へ発展することも考えられます。

その意味では、返礼品は寄付の最終目的ではなく、長期的な支援者をつくるための入口です。

大学側には、寄付金を何に使い、教育や研究によってどのような成果が生まれたのかを継続して伝えることが求められます。

結論

ふるさと納税を利用した大学への寄付は、大学の新しい資金調達手段として広がり始めています。

学生食堂の食事券や公開講座、キャンパスツアー、大学で生産した乳製品やワインなど、大学ならではの返礼品を設けることで、これまで寄付をしたことのない人にも参加してもらいやすくなります。

ただし、本当に重要なのは返礼品を増やすことではありません。

返礼品をきっかけとして大学の教育や研究を知ってもらい、大学と支援者との長期的な関係をつくることです。

少子化が進む日本では、授業料収入だけに依存した大学経営は次第に難しくなっていきます。

一方、大学には教育や研究、人材育成を通じて地域や社会に価値を生み出す役割があります。

ふるさと納税が大学と自治体、卒業生、保護者、地域住民を結び付ける仕組みとして定着すれば、日本でも寄付によって大学を支える文化が少しずつ育っていく可能性があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日 朝刊 大学、個人寄付呼び込む ふるさと納税活用し文化醸成

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