多死社会はすでに始まっている 人生100年時代に必要な新しい備え

人生100年時代
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人生100年時代と言われる一方で、日本では「多死社会」が想定より早く進んでいます。

2025年の死亡者数は約159万人となり、国の将来推計を7万人以上も上回りました。これは、本来2030年頃に予測されていた水準が、5年も前倒しで現実となったことを意味します。

私たちは「長生きする社会」には関心を持ってきました。しかし、これからは「多くの人を見送る社会」にどう備えるかも重要なテーマになります。

今回は、多死社会が私たちの暮らしや経営にどのような影響を与えるのかを考えてみたいと思います。

多死社会とは何か

多死社会とは、高齢化の進展によって死亡者数が大幅に増加する社会を指します。

少子高齢化という言葉は広く知られていますが、多死社会はその先に訪れる現象です。

高齢者人口が増え続ければ、ある時期から死亡者数も急増します。

これは決して悲観的な話ではありません。

戦後の人口構造を考えれば、ある程度予測されていた現象でもあります。

しかし、そのスピードが想定以上に速くなっていることが今回のニュースの重要なポイントです。

平均寿命が伸びなくなった意味

これまで日本では平均寿命は毎年のように延びてきました。

ところが、新型コロナ以降、その流れが止まっています。

感染症そのものだけでなく、

・受診控え

・持病の悪化

・高齢者の体力低下

など、さまざまな要因が重なった可能性が指摘されています。

平均寿命がわずかに変化するだけでも、全国では何万人もの死亡者数の増減につながります。

人口統計は、一見小さな数字の違いが社会全体では非常に大きな変化となって現れるのです。

社会インフラへの影響は想像以上に大きい

死亡者数が増えるということは、医療や介護だけの問題ではありません。

例えば、

・病院

・介護施設

・訪問看護

・訪問介護

・葬儀業界

・火葬場

・墓地

・相続手続き

・遺品整理

など、多くの分野で需要が急増します。

東京都では、現状のままでは2035年頃に火葬能力が不足する可能性も指摘されています。

社会インフラは急には整備できません。

だからこそ、早めの準備が必要なのです。

人生100年時代は「長生き」だけではない

人生100年時代という言葉は、

「100歳まで生きる」

ことばかりに注目されがちです。

しかし本当に重要なのは、

「人生の最期まで安心して暮らせる社会をつくること」

ではないでしょうか。

介護、医療、相続、住まい、終活。

これらはすべて人生の後半を支える重要なテーマです。

多死社会とは、高齢者だけの問題ではありません。

家族を支える現役世代にも大きな影響を及ぼします。

経営者にも無関係ではない

企業にとっても多死社会は重要な経営課題になります。

社員の親の介護や看取りが増えれば、介護離職のリスクはさらに高まります。

また、医療・介護業界では慢性的な人材不足が深刻化する可能性があります。

福利厚生や介護支援制度の充実は、人材確保という観点からも重要になります。

さらに、相続関連サービス、終活支援、デジタル遺産管理、家族信託、成年後見など、新しい市場も拡大していくでしょう。

社会課題は、新たなビジネスニーズでもあります。

一人ひとりができる備え

多死社会だからこそ、私たち自身も準備を始める必要があります。

例えば、

・健康寿命を延ばす生活習慣

・家族との話し合い

・エンディングノートの作成

・相続財産の整理

・デジタル資産の管理

・介護や医療の希望を共有すること

こうした備えは、自分だけでなく家族の負担も大きく減らします。

元気なうちだからこそできる準備があります。

多死社会は新しい社会設計を考える時代でもある

日本は世界で最も早く超高齢社会を迎えました。

そして今、多死社会も世界に先駆けて経験しています。

これは大きな課題である一方、新しい社会の仕組みをつくるチャンスでもあります。

行政、企業、地域社会、そして一人ひとりが役割を果たしながら、人生の最期まで安心して暮らせる社会を築いていくことが求められています。

結論

多死社会は、遠い未来の話ではありません。

すでに私たちの目の前で始まっています。

死亡者数の増加は、医療や介護だけでなく、相続、住まい、働き方、企業経営、地域づくりまで幅広い影響を及ぼします。

人生100年時代に本当に必要なのは、「長く生きる準備」だけではなく、「安心して人生を終えられる準備」を社会全体で整えることです。

多死社会を悲観するのではなく、新しい時代への備えとして捉え、一人ひとりができることから行動を始めることが、これからの豊かな社会につながるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞(2026年7月3日 朝刊)

多死社会 5年早く進行 昨年死者数、想定7万人上回る コロナの影響長引く

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