変動金利から固定金利への切り替えは得か 金利上昇局面で考える借り換え戦略

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住宅ローンの変動金利が上昇するなか、固定金利への切り替えを検討する人が増えています。

これまで日本では長期間にわたって低金利が続き、住宅ローンを借りる際には変動金利型を選ぶ人が多くなっていました。

変動金利型は、固定金利型に比べて借入当初の金利が低い傾向があり、毎月の返済額を抑えられることが大きな魅力でした。

しかし、日本銀行が政策金利の引き上げを進める2026年、住宅ローンを取り巻く環境は変化しています。

変動金利が上昇すると、毎月の返済額や利息負担が増える可能性があります。

そのため、将来の金利上昇リスクを避ける目的で、固定金利への変更を考える人もいるでしょう。

ただし、変動金利から固定金利に切り替えれば、必ず得になるわけではありません。

固定金利は変動金利より高い水準に設定されることが多く、切り替えた直後から返済額が増加する可能性があります。

また、別の銀行へ借り換える場合には、融資事務手数料や登記費用なども発生します。

重要なのは、将来の金利上昇をどの程度想定するかだけでなく、家計の返済余力や残りの返済期間を踏まえて判断することです。

今回は、変動金利から固定金利への切り替えを検討する際の判断基準と、借り換え戦略について解説します。

変動金利と固定金利の違いを理解する

住宅ローンの金利には、大きく分けて変動金利型と固定金利型があります。

変動金利型は、借入後も金融情勢に応じて適用金利が見直される仕組みです。

一般的には、日銀の政策金利や銀行の短期資金調達環境などの影響を受けやすい特徴があります。

一方、固定金利型は、一定期間または借入期間全体について金利が固定される仕組みです。

固定金利には、当初10年間など一定期間だけ金利を固定する固定金利期間選択型と、借入期間全体の金利を固定する全期間固定金利型があります。

固定金利期間選択型では、固定期間が終了した後の金利条件に注意が必要です。

固定期間終了後は、その時点の金利水準や契約上の優遇条件に基づいて、新たな適用金利が決まります。

そのため、当初の固定期間が終了した際に、返済額が大きく増加する可能性があります。

一方、全期間固定金利型では、契約時に定めた金利が原則として完済まで続きます。

将来の市場金利が上昇しても、契約上の金利は変わりません。

ただし、変動金利型より借入当初の金利が高く設定されることが一般的です。

変動金利と固定金利の違いは、単に金利水準の高低だけではなく、将来の金利変動リスクを誰が負担するかという点にあります。

金利上昇局面では固定金利への変更が有利なのか

日銀が政策金利を引き上げる局面では、変動金利から固定金利への切り替えが注目されます。

しかし、金利上昇が続くからといって、固定金利への変更が必ず有利になるわけではありません。

その理由は、固定金利には将来の金利見通しがある程度織り込まれているためです。

住宅ローンの全期間固定金利は、長期金利などの影響を受けやすい特徴があります。

長期金利は、将来の金融政策や物価上昇率、経済成長率などに対する市場の予想を反映して動きます。

そのため、日銀が今後さらに利上げを行うと市場が予想している場合、実際の利上げ前から固定金利が上昇していることがあります。

例えば、現在の変動金利が年1.0%、固定金利が年3.0%だったとします。

変動金利が将来年2.0%に上昇しても、固定金利の年3.0%より低い状態が続きます。

一方、変動金利が年4.0%まで上昇すれば、固定金利に切り替えていた方が有利になる可能性があります。

ただし、実際の損得は、金利がいつ、どの程度上昇するかによって異なります。

住宅ローンの借り換えでは、将来の金利水準だけでなく、金利が上昇するまでの期間も重要です。

借入残高3,000万円で比較する

具体的な数字で考えてみましょう。

住宅ローンの借入残高が3,000万円、残りの返済期間が25年、元利均等返済、ボーナス返済なしという条件です。

ここでは、比較を分かりやすくするため、それぞれの金利が残り25年間変わらないと仮定します。

変動金利が年1.0%の場合、毎月の返済額は約11万3,000円です。

固定金利が年2.5%の場合、毎月の返済額は約13万5,000円になります。

固定金利が年3.0%の場合、毎月の返済額は約14万2,000円になります。

変動金利年1.0%と固定金利年3.0%では、毎月約2万9,000円の差が生じます。

年間では約35万円の負担増加です。

固定金利に切り替える場合、この追加負担を家計が受け入れられるかが重要になります。

ただし、変動金利が将来上昇すれば、この差は縮小する可能性があります。

例えば、変動金利が年3.0%になれば、同じ借入残高と返済期間を前提とした返済額は、固定金利年3.0%の場合と同水準になります。

もっとも、実際には金利上昇までに元金返済が進むため、切り替え時期によって返済額や総利息額は異なります。

固定金利への変更を判断する際には、複数の金利上昇シナリオを比較する必要があります。

固定金利への切り替えには2つの方法がある

変動金利から固定金利へ切り替える方法には、大きく分けて2つあります。

第1は、現在借りている銀行で金利タイプを変更する方法です。

住宅ローンの商品によっては、変動金利から固定金利期間選択型へ変更できる場合があります。

ただし、全期間固定金利型への変更が可能とは限りません。

また、金利タイプの変更時には、その時点で銀行が提示する金利が適用されることが一般的です。

変更手数料が必要になる場合もあります。

第2は、別の銀行の固定金利型住宅ローンへ借り換える方法です。

借り換えでは、新しい銀行で住宅ローンを契約し、その融資資金を使って現在の住宅ローンを完済します。

借り換え先の銀行が有利な固定金利を提示していれば、将来の金利上昇リスクを抑えられる可能性があります。

ただし、借り換えには新たな審査が必要です。

年収、勤務先、健康状態、物件の担保価値などによっては、希望する条件で借り換えられない場合もあります。

特に50代以降では、借入時の年齢や完済時年齢が審査に影響することがあります。

現在の銀行で変更する場合と、別の銀行へ借り換える場合の両方を比較することが重要です。

借り換え費用を含めて損得を判断する

住宅ローンの借り換えでは、金利だけでなく諸費用を確認する必要があります。

代表的な費用として、融資事務手数料、抵当権の抹消登記費用、新たな抵当権の設定登記費用、司法書士報酬などがあります。

例えば、借り換え後の借入額が3,000万円で、融資事務手数料が借入額の2.2%だった場合、手数料だけで66万円になります。

さらに登記費用などが必要です。

仮に借り換えによって毎月の返済額を5,000円減らせたとしても、年間の節約額は6万円です。

諸費用が90万円だった場合、単純計算では費用相当額を回収するまで15年かかります。

ただし、実際の借り換え効果は、毎月の返済額だけでなく、返済期間全体の利息軽減額や借入残高の変化も考慮して判断する必要があります。

また、固定金利への借り換えでは、返済額が増加する場合もあります。

その場合には、単純な節約効果ではなく、将来の金利上昇リスクを抑えるための費用として考えることになります。

借り換えの目的が返済総額の削減なのか、返済額の安定なのかを明確にすることが重要です。

住宅ローン控除への影響も確認する

住宅ローン控除を利用している人は、借り換えによる税制上の影響にも注意が必要です。

住宅ローン控除は、一定の要件を満たす住宅ローンについて、年末の借入残高などをもとに所得税等から一定額を控除する制度です。

借り換えを行った場合でも、所定の要件を満たせば、引き続き住宅ローン控除を受けられる場合があります。

ただし、借り換えによって控除期間が最初から延長されるわけではありません。

また、借り換え後の借入額に諸費用などが含まれている場合には、控除対象となる借入残高の計算に注意が必要です。

住宅ローン控除の適用条件は、住宅の取得時期や入居時期、住宅の性能などによって異なります。

さらに、借り換えによって返済期間を短縮する場合には、償還期間に関する要件も確認しなければなりません。

借り換えを検討する際には、金利差だけでなく、住宅ローン控除への影響も含めて試算する必要があります。

変動金利を維持する方が合理的な場合

金利上昇局面であっても、変動金利を維持する方が合理的な場合があります。

例えば、借入残高が少なく、残りの返済期間も短い場合です。

住宅ローンの借入残高が500万円で、残存期間が5年という場合には、金利上昇による利息負担の増加は、借入残高3,000万円で残存期間25年の場合と比べて限定的です。

また、十分な金融資産を保有している世帯では、金利上昇によって返済額が増えても、家計への影響を吸収できる可能性があります。

このような場合には、固定金利へ変更するために高い金利や諸費用を負担するよりも、変動金利を維持する選択が合理的になることがあります。

ただし、金融資産が多くても、その資金を教育費や老後資金として確保する必要がある場合には注意が必要です。

重要なのは、住宅ローンの借入残高と家計全体の資産状況を一体で考えることです。

変動金利を維持する場合には、金利がさらに上昇した際の返済負担を事前に確認しておく必要があります。

固定金利への変更が向いている世帯

一方、固定金利への変更が向いている世帯もあります。

例えば、借入残高が大きく、残りの返済期間が長い世帯です。

金利上昇による影響を受ける期間が長いため、将来の返済負担が大きく変化する可能性があります。

また、教育費が増える時期を迎える子育て世帯では、住宅ローンの返済額を固定することで家計管理がしやすくなります。

さらに、定年退職が近い50代の世帯でも、固定金利への変更を検討する意義があります。

現役時代には金利上昇による返済額の増加に対応できても、定年退職後は収入が減少する可能性があるためです。

例えば、60歳以降に給与収入が減少する見込みであれば、それまでに住宅ローンの返済額を確定させることで、老後の生活設計を立てやすくなります。

ただし、固定金利への変更によって毎月の返済額が増える場合には、現在の家計への負担も考慮する必要があります。

固定金利は、将来の金利上昇リスクを抑える手段ですが、その安心には一定の費用が伴います。

50代以降は借り換えと老後資金を一体で考える

50代以降で住宅ローンの借り換えを検討する場合には、老後資金との関係が特に重要です。

例えば、55歳で住宅ローンの借入残高が2,000万円、残りの返済期間が20年だったとします。

この場合、完済予定年齢は75歳です。

60歳や65歳で定年退職する場合には、退職後も長期間にわたって住宅ローンの返済が続くことになります。

変動金利が上昇すれば、年金生活に入った後の返済負担が増加する可能性があります。

一方、固定金利に変更すれば、返済額を一定にできるため、老後の資金計画を立てやすくなります。

ただし、固定金利への変更によって返済額が増えれば、現役時代の貯蓄余力が減少する可能性があります。

また、退職金を使って住宅ローンを繰り上げ返済する場合には、老後の生活費を確保できるかを確認する必要があります。

住宅ローンを完済しても、生活費や医療費に充てる金融資産が不足してしまっては意味がありません。

50代以降の住宅ローン戦略では、金利の有利不利だけでなく、65歳、70歳、75歳時点の借入残高と金融資産の見通しを確認することが重要です。

金利上昇を予測するより家計の耐久力を確認する

変動金利から固定金利への切り替えを考える際、多くの人は今後の金利がどこまで上昇するのかを知りたいと考えます。

しかし、将来の金利を正確に予測することは困難です。

日銀の金融政策は、物価や賃金、景気、為替相場、海外経済などの影響を受けます。

また、固定金利の水準には、市場が予想する将来の金利動向も反映されます。

そのため、金利の先行きを当てることだけを目的に住宅ローンを変更するのは適切ではありません。

重要なのは、変動金利が今後1%、2%、3%上昇した場合に、家計がどこまで対応できるかを確認することです。

例えば、金利が2%上昇しても十分な貯蓄を続けられる世帯であれば、変動金利を維持する選択肢があります。

一方、金利が1%上昇するだけで家計が赤字になる世帯では、固定金利への変更や返済計画の見直しを検討する必要があります。

住宅ローンの金利タイプは、将来の金利予測だけでなく、家計のリスク許容度によって選ぶことが重要です。

結論

変動金利から固定金利への切り替えは、金利上昇時代の住宅ローン対策として有力な選択肢です。

しかし、固定金利へ変更すれば必ず得になるわけではありません。

固定金利は変動金利より高い水準に設定されることが多く、変更直後から毎月の返済額が増加する可能性があります。

また、別の銀行へ借り換える場合には、融資事務手数料や登記費用なども必要になります。

そのため、借り換えの判断では、金利差、借入残高、残存期間、諸費用、住宅ローン控除への影響などを総合的に比較する必要があります。

特に50代以降では、定年退職後の収入減少と老後資金の確保も重要な判断材料になります。

住宅ローンの借り換えは、単に低い金利を選ぶことではありません。

将来の返済負担をどこまで確定させたいのか、金利上昇リスクをどの程度受け入れられるのかを考えることが重要です。

金利上昇時代には、住宅ローンの返済総額だけでなく、家計の安定性と老後の生活設計を重視した判断が求められます。

参考

日本経済新聞 2026年10月 変動金利の住宅ローン、銀行ごとにばらつき ルールの確認を

住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査

国税庁 住宅借入金等特別控除に関する情報

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