土地の取得と利用の規制はどう変わるのか 届出強化と不適切利用への対応が進む理由

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日本の土地を誰が取得し、どのように利用しているのか。その把握と規制の在り方が大きな転換点を迎えようとしています。

土地の取得そのものだけではなく、取得後にどのように利用されているのかまで継続的に把握し、必要に応じて行政が対応できる仕組みを整える方向です。

背景には、現在の制度では十分に対応できない「規制の隙間」が存在するという問題があります。

土地の取得と利用を一体で考える

資料によると、日本の国土の適正な利用に関する国民の意識が高まるなか、2026年3月に設置された「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」が提言をまとめました。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

提言で重要なのは、土地について「誰が取得したか」だけを見るのではなく、「取得後にどのように利用しているか」まで含めて考えようとしている点です。

土地は一般の商品とは異なります。

所有者の利用方法によっては、周辺住民の生活環境や地域の安全、国土の適正な利用などに影響を与える可能性があります。

そのため、土地取引の入口だけを把握する制度から、取得後の利用まで視野に入れた制度へと見直す必要性が指摘されています。

土地取引の届出対象が広がる可能性

現在の国土利用計画法では、一定規模以上の土地取引について届出が必要です。

資料では、市街化区域では2,000平方メートル以上、市街化区域以外の都市計画区域では5,000平方メートル以上、都市計画区域外では1ヘクタール以上とされています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

つまり、一定規模に満たない土地取引については、行政が十分に情報を把握できない可能性があります。

提言では、この届出対象面積を引き下げるなど、土地取引段階での情報把握を強化すべきとしています。

全国一律で基準を引き下げるだけでなく、地方公共団体が地域の実情に応じて引き下げられる仕組みも検討対象とされています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

土地問題は地域によって事情が大きく異なります。

都市部と地方、観光地、山林地域などでは土地取得をめぐる課題も違うため、地方公共団体に一定の裁量を持たせる考え方は重要になりそうです。

土地を取得した後も行政が把握する

さらに注目したいのが、土地取得後の利用目的です。

土地を取得するときに届け出た利用目的と、実際の利用方法が将来にわたって同じとは限りません。

そこで提言では、届出後に利用目的を変更した場合には再届出を求め、土地利用を継続的にモニタリングできるようにすべきとしています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

これは制度の考え方として大きな変化です。

従来のように取引時点を確認して終わるのではなく、その後の土地利用まで継続して把握する方向だからです。

土地を購入した時点では問題がなくても、その後の利用方法によって周辺地域に影響が生じる可能性があります。

今後は「土地を取得できるか」だけではなく、「取得後にどのように利用するか」という視点が一段と重要になるでしょう。

規制の隙間をどう埋めるのか

現在の土地利用関連法では、周辺地域に悪影響を及ぼすような土地利用であっても、必ずしも明確に禁止されていないケースがあります。

資料では、こうした状態を法規制の「隙間」として取り上げています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

提言では、国土利用計画法に基づく土地利用基本計画において「不適切な土地利用」に該当する行為を明示し、都道府県による指導監督を可能にすべきとしています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

ここで重要になるのが、何を「不適切な土地利用」とするのかです。

規制対象が曖昧であれば土地所有者にとって予見可能性が低くなります。一方、対象を狭くしすぎれば規制の隙間が残ります。

今後具体的な制度設計が進むなかで、規制対象となる行為をどこまで明確化できるかが重要な論点になるでしょう。

小規模な土地取引も把握する方向へ

届出対象面積を引き下げても、基準未満の取引は残ります。

そこで提言では、届出対象面積未満の土地取引情報についても国が把握し、地方公共団体へ提供する仕組みを構築すべきとしています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

さらに登記情報との照合などによって無届事案を把握し、現地調査につなげるなど、無届への対応強化も求めています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

つまり制度改正の方向性は、単純に届出対象を増やすだけではありません。

土地に関する情報を行政内部で連携させ、取得から利用までを継続的に把握する仕組みそのものを強化しようとしていると考えられます。

国と地方公共団体の連携も重要になる

土地行政では国だけですべてを把握することは困難です。

実際に土地がどのように利用され、地域にどのような影響が生じているのかを把握しやすいのは地方公共団体です。

一方で、土地取引や登記などの情報を全国的に集約するには国の役割も欠かせません。

提言では、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割に応じて分担し、連携する重層的な対応を求めています。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

今後の土地行政では、単独の制度や行政機関だけで管理するのではなく、複数の情報を組み合わせることが重要になりそうです。

土地所有者や企業にも影響する可能性

今回の提言が制度化されれば、土地を取得する個人や企業の実務にも影響が及ぶ可能性があります。

特に注意したいのは、届出対象となる土地取引の範囲が広がる可能性と、取得後に利用目的を変更した場合にも手続きが必要になる可能性です。

企業の場合、工場、倉庫、事業所、商業施設、開発用地など、事業活動と土地利用は密接に関係しています。

土地取得時だけ法務部門や総務部門が確認するのではなく、取得後の用途変更まで含めて管理する仕組みが必要になるかもしれません。

不動産取引の管理が「取得時点の手続き」から「保有期間を通じた管理」へ変化する可能性があります。

まだ提言段階であることには注意が必要

もっとも、現時点ですべてが法律として決まったわけではありません。

資料によると、国土交通省は今回の提言を受け、国土利用計画法など関連法の見直しも視野に入れて、具体的な制度や施策の検討を進める予定です。 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

したがって、届出対象面積が実際にどこまで引き下げられるのか、再届出制度がどのような形になるのか、不適切な土地利用をどの範囲まで規制するのかなどは今後の制度設計を確認する必要があります。

提言と成立した法律を混同しないことが重要です。

結論

土地に関する規制は、単に「誰が土地を取得したか」を把握する制度から、「取得した土地がその後どのように利用されているか」まで継続的に把握する制度へ変わろうとしています。

届出対象面積の引下げ、利用目的変更時の再届出、小規模取引の情報把握、不適切な土地利用への指導監督などが実現すれば、土地行政の仕組みは大きく変わります。

特に企業にとっては、土地取得時の法令確認だけでなく、その後の用途変更や利用状況まで管理するという発想が必要になる可能性があります。

一方で、土地は重要な私有財産でもあります。適正な国土利用を確保するための規制と、土地所有者の権利とのバランスをどのように取るのかも重要な論点です。

今後は提言そのものだけでなく、国土利用計画法などの具体的な改正内容を継続して確認していく必要があるでしょう。

参考

企業実務 2026年10月号 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる

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