会社の財務分析では、自己資本比率や流動比率だけでなく、「固定比率」という指標も重要視されます。
自己資本比率は会社全体の安全性を示し、流動比率は短期的な支払能力を示します。一方、固定比率は「長期間使用する設備を、どのような資金で購入しているか」を確認する指標です。
工場や建物、機械設備などは何年も使う資産です。こうした固定資産を短期借入金で購入すると、設備は長期間使える一方で返済は短期間で行わなければならず、資金繰りが苦しくなる可能性があります。
そのため銀行は、設備投資と資金調達のバランスを見るために固定比率も確認しています。今回は、固定比率の意味や固定資産との関係、自己資本とのバランス、改善方法について解説します。
固定比率とは
固定比率とは、固定資産が自己資本によってどの程度まかなわれているかを示す財務指標です。
計算式は次のとおりです。
固定比率=固定資産÷自己資本×100
固定資産には、
- 土地
- 建物
- 機械設備
- 車両
- 備品
- ソフトウェア
など、長期間使用する資産が含まれます。
自己資本は返済義務のない資金です。そのため、長く使う設備は、できるだけ自己資本で取得することが財務上は望ましいと考えられています。
固定資産との関係
固定資産は、会社の事業を支える重要な経営資源です。
製造業であれば工場や工作機械、小売業であれば店舗設備、運送業であれば車両などが代表例です。
これらは利益を生み出す源泉ですが、一度購入するとすぐには現金化できません。
そのため、固定資産が過大になると資金繰りが悪化する場合があります。
固定比率は、この固定資産が会社の財務体質に見合った水準なのかを確認するための指標でもあります。
自己資本とのバランスが重要
固定比率では、固定資産と自己資本のバランスが重要になります。
一般的には、
100%以下
であれば、固定資産を自己資本でまかなえている状態と考えられます。
一方、100%を大きく超える場合は、固定資産の一部を借入金などの負債で取得していることになります。
もちろん、借入による設備投資が必ず悪いわけではありません。
利益を生み出す設備投資であれば、借入を活用して企業価値を高めることも重要な経営戦略です。
重要なのは、返済能力とのバランスが取れているかどうかです。
固定比率が高くなる原因
固定比率が高くなる主な原因には、
- 多額の設備投資を行った
- 自己資本が少ない
- 赤字が続き利益剰余金が減少した
- 過度な借入で設備を取得した
などがあります。
特に利益剰余金が減少すると自己資本が小さくなるため、固定比率は上昇しやすくなります。
そのため、設備投資だけでなく、利益を積み重ねて自己資本を厚くすることも重要になります。
固定比率を改善する方法
固定比率を改善するには、
- 継続して利益を計上する
- 利益剰余金を積み上げる
- 増資を行う
- 遊休資産を売却する
- 必要性の低い設備投資を見直す
などの方法があります。
また、新たな設備投資を行う際には、その投資によって将来どれだけ利益を生み出せるかを十分に検討することも大切です。
設備は導入して終わりではなく、その後の収益によって投資を回収できるかが重要になります。
固定比率だけで判断してはいけない理由
固定比率は重要な指標ですが、それだけで企業の健全性を判断することはできません。
例えば、設備投資の多い製造業や運輸業では、固定比率が高くなる傾向があります。
一方、IT企業やコンサルティング会社のように設備をほとんど必要としない業種では、固定比率は低くなります。
また、長期借入金によって設備投資を行っている企業では、固定比率だけでは実態を十分に把握できません。
そのため、自己資本比率や固定長期適合率など、他の財務指標と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
結論
固定比率は、固定資産が自己資本によってどの程度支えられているかを示す重要な財務指標です。設備投資と資金調達のバランスを確認することで、会社の財務の健全性を判断できます。
ただし、固定比率は業種によって適正水準が異なり、高いから直ちに問題があるとは限りません。設備投資によって将来の利益が期待できるのであれば、借入を活用することも合理的な経営判断です。
重要なのは、利益を継続して積み上げながら自己資本を充実させ、設備投資と返済能力のバランスを維持することです。固定比率は、その健全性を確認するための重要な経営指標といえるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「財務諸表から読み解く『経営分析』講座 第15回 純資産はプラスになっていますか」 瀬野正博 著