米国経済を語る際によく登場する言葉に「双子の赤字」があります。これは、米国が長年抱えている二つの大きな赤字を指す経済用語です。
2026年の日米協調介入やドル高修正論、さらには「マール・ア・ラーゴ合意」のような構想が注目される背景にも、この双子の赤字があります。
財政赤字と経常赤字は、それぞれ異なる意味を持ちますが、相互に影響し合いながら米国経済やドル相場に大きな影響を与えています。
今回は、双子の赤字の仕組みやドルとの関係について分かりやすく解説します。
双子の赤字とは何か
双子の赤字とは、「財政赤字」と「経常赤字」が同時に続いている状態を指します。
財政赤字は政府の歳出が歳入を上回る状態です。
一方、経常赤字は海外との所得や貿易などを含めた経常収支が赤字になる状態をいいます。
米国では、この二つの赤字が長期間にわたり続いているため、「双子の赤字」と呼ばれています。
1980年代のレーガン政権時代から広く使われるようになった言葉です。
財政赤字とは
財政赤字とは、政府の支出が税収などの収入を上回ることです。
不足分は国債を発行して資金を調達します。
景気対策や社会保障、防衛費の増加などにより、政府支出が拡大すると財政赤字は大きくなります。
米国では景気対策や金融危機、新型コロナウイルス対応などにより財政支出が増加し、政府債務も拡大してきました。
財政赤字そのものは直ちに問題となるわけではありませんが、長期間続けば将来世代への負担や金利上昇の要因となる可能性があります。
経常赤字とは
経常赤字とは、海外との取引全体で支払いが受け取りを上回る状態です。
経常収支には、貿易収支だけでなく、配当や利子などの所得収支、サービス取引なども含まれます。
米国では輸入が輸出を上回る状態が長く続いています。
一方で、海外への投資から得られる所得も多く、所得収支は黒字となることがあります。
それでも全体として経常収支が赤字になる年が多く、これが双子の赤字の一角を構成しています。
なぜ二つの赤字は関係するのか
財政赤字が拡大すると、政府は国債発行を増やします。
国債を購入するためには国内外から資金を集める必要があります。
海外から多くの資金が流入するとドルへの需要が高まり、ドル高になりやすくなります。
ドル高になると輸入は増え、輸出は減りやすくなるため、経常赤字が拡大する可能性があります。
このような関係から、財政赤字と経常赤字は互いに関連していると考えられています。
もっとも、経常赤字は景気や為替、企業活動など多くの要因でも左右されるため、必ずしも一対一で連動するわけではありません。
ドルとの関係
通常、経常赤字が続けば、その国の通貨は売られやすくなります。
しかし、米ドルは世界の基軸通貨です。
世界中の中央銀行や投資家がドルや米国債を保有しているため、経常赤字が続いてもドルへの需要は高い水準を維持しています。
これが米国経済の特徴です。
一方で、ドルへの需要が高いことはドル高につながり、輸出競争力を低下させる要因にもなります。
そのため、基軸通貨国である米国は、双子の赤字とドル高という課題を同時に抱えやすい構造になっています。
ドル高修正論との関係
近年、米国では製造業の競争力回復を重視する政策が進められています。
ドル高が続けば輸出が不利になり、貿易赤字の改善も難しくなります。
そのため、ドル高を是正し、輸出しやすい環境を整えようという考え方が強まっています。
2026年の日米協調介入や「マール・ア・ラーゴ合意」が注目される背景にも、このような問題意識があります。
為替政策だけで双子の赤字を解決することはできませんが、その改善策の一つとして位置付けられています。
双子の赤字は必ず悪いのか
双子の赤字があるからといって、直ちに経済危機が起こるわけではありません。
米国は世界最大の経済規模と高い信用力を持ち、米国債への需要も非常に大きい状況です。
そのため、財政赤字や経常赤字が続いても資金調達が困難になる状況には至っていません。
しかし、赤字が拡大し続ければ、市場の信認が低下し、金利上昇やドル安につながる可能性があります。
持続可能な財政運営と経済成長の両立が重要な課題となっています。
今後の注目点
今後は米国の財政運営や金融政策に加え、製造業支援策や通商政策も双子の赤字へ影響を与えると考えられます。
また、ドルが基軸通貨としての地位を維持し続けるのか、それとも国際通貨体制が変化するのかも長期的な注目点です。
双子の赤字は米国だけの問題ではなく、世界経済や国際金融市場にも大きな影響を与えるテーマとして今後も注目されるでしょう。
結論
双子の赤字とは、財政赤字と経常赤字が同時に続く状態を指す経済用語です。
米国では長年この状態が続いていますが、世界の基軸通貨であるドルへの強い需要によって、その構造が維持されています。
一方で、ドル高や製造業の競争力低下、貿易赤字の拡大といった課題も抱えています。
2026年の日米協調介入やドル高修正論は、こうした構造的な問題への対応を模索する動きの一つとして理解することができます。双子の赤字を理解することは、米国経済だけでなく、世界経済の動向を読み解く上でも重要な視点となるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊 「協調介入が告げるドル高修正」