老後の年金額は、誰でも同じだと思っている人は少なくありません。
しかし、会社員や公務員が加入する厚生年金には「報酬比例」という仕組みがあり、現役時代の収入や加入期間によって将来受け取る年金額が変わります。
つまり、年収が増えれば現役時代の生活が豊かになるだけではなく、老後の年金も増えるということです。
人生100年時代では、「どれだけ資産を増やすか」と同じくらい、「どれだけ年金を増やすか」という視点も重要になっています。
今回は、厚生年金の報酬比例の仕組みと、働き方が将来の年金に与える影響について考えてみます。
厚生年金の二階建て構造
日本の公的年金制度は、「二階建て」と表現されることがあります。
一階部分は国民年金(老齢基礎年金)です。
これは加入期間をもとに年金額が決まり、基本的には収入の多い少ないによる違いはありません。
一方、会社員や公務員には二階部分として厚生年金があります。
厚生年金は、加入期間に加えて、現役時代の給与や賞与などをもとに年金額が計算されます。
この仕組みが「報酬比例」です。
年収が増えると年金も増える
厚生年金では、保険料も将来受け取る年金額も、収入に応じて変わります。
そのため、年収が高くなるほど将来の年金額も増えていきます。
近年の制度設計では、一部の高所得者を除けば、加入期間中の収入が約200万円増えるごとに、将来受け取る厚生年金がおおむね年間1万円程度増えるとされています。
もちろん、実際の増加額は加入期間や給与水準、賞与などによって異なります。
それでも、「収入を増やす努力は、現役時代だけでなく老後の安心にもつながる」という考え方は変わりません。
年収アップは生涯にわたる効果を生む
例えば、資格取得や専門知識の習得によって年収が上がったとします。
その増加した年収が長期間続けば、その期間に納めた厚生年金保険料が将来の年金額にも反映されます。
つまり、自己投資は現在の収入を増やすだけでなく、将来の年金という形でも成果を生み出します。
近年はAIやデジタル技術など、新しいスキルを身につけることで収入を伸ばす人も増えています。
こうした自己投資は、将来のキャリアだけではなく、生涯にわたる年金収入の向上にもつながる可能性があります。
長く働くことにも意味がある
報酬比例では、収入だけでなく加入期間も重要です。
同じ年収であっても、加入期間が長い人ほど受け取る年金額は多くなります。
定年後も再雇用や継続雇用で働く人が増えていますが、その期間も厚生年金に加入すれば、将来の年金額を増やすことにつながります。
以前は60歳が引退の目安でしたが、現在では65歳、さらに70歳まで働くことも珍しくありません。
長く働くことは給与収入を得るだけではなく、公的年金を育てることにもなります。
働き方によって将来は変わる
近年は短時間労働者への厚生年金適用が拡大しています。
これまで厚生年金に加入できなかったパートタイム労働者でも、一定の条件を満たせば加入できるようになりました。
保険料負担を心配する声もありますが、その分だけ将来受け取る年金も増えます。
現役時代の手取りだけで判断するのではなく、生涯を通じた収支で考えることが大切です。
制度改正によって、より多くの人が厚生年金の恩恵を受けられるようになってきています。
年金は人生への長期投資
厚生年金保険料は給与から天引きされるため、「負担」と感じる人もいるでしょう。
しかし、その保険料は単なる支出ではありません。
将来の自分に対する長期的な積立でもあります。
しかも、公的年金は終身で支給されるため、長生きするほどその価値は高まります。
民間の金融商品では得られない安心感が、公的年金にはあります。
老後資金を考える際には、投資や貯蓄だけでなく、公的年金の価値も改めて見直してみる必要があるでしょう。
結論
厚生年金の報酬比例制度は、現役時代の収入と加入期間が将来の年金額に反映される仕組みです。
そのため、年収を増やす努力や長く働くことは、現在の生活だけでなく、老後の安心にもつながります。
人生100年時代では、働くことそのものが最大の老後対策になる場面も少なくありません。給与だけを見るのではなく、その先にある年金まで含めてキャリアを考えることが、豊かな老後への第一歩となるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年7月18日 朝刊
<メインストーリー>厚生年金、就労延ばし増額 少子化、過度に不安視せず