前面道路に路線価があっても倍率評価になる土地の落とし穴

税理士
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相続税や贈与税の土地評価では、路線価方式と倍率方式のどちらを適用するかが重要になります。

一般的に、市街地にある宅地は路線価方式で評価し、路線価が設定されていない地域の土地は倍率方式で評価します。

しかし、実務では判断に迷うケースがあります。

例えば、国税庁の路線価図を見ると、評価対象地は倍率地域と表示されているにもかかわらず、前面道路には路線価が設定されている場合です。

このような土地について、前面道路に路線価があることを理由に路線価方式で評価してよいのでしょうか。

それとも、評価対象地が倍率地域に所在していることを重視し、倍率方式で評価すべきなのでしょうか。

今回は、2026年度の税理士研修資料で紹介された事例をもとに、路線価地域と倍率地域の境界にある土地の評価方法と、実務上の調査手順を解説します。

路線価方式と倍率方式の基本的な違い

相続税の土地評価では、宅地の評価方法として、主に路線価方式と倍率方式が用いられます。

路線価方式は、道路に設定された路線価を基礎として土地を評価する方法です。

路線価は、道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額を示しています。

例えば、路線価が100,000円で、土地の面積が200㎡の場合、単純に掛け合わせると2,000万円になります。

実際には、土地の奥行距離や形状などに応じて各種補正を行い、評価額を算出します。

一方、倍率方式は、原則として固定資産税評価額に国税庁が定める評価倍率を乗じて評価する方法です。

例えば、固定資産税評価額が1,000万円で、評価倍率が1.1倍の場合、相続税評価額は1,100万円となります。

このように、路線価方式と倍率方式では、評価額の算出方法が異なります。

したがって、どちらの方式を適用するかを誤ると、相続税評価額に影響する可能性があります。

前面道路に路線価がある倍率地域の事例

今回の研修資料では、評価対象地が倍率地域に所在している事例が紹介されています。

国税庁の路線価図を見ると、評価対象地のある場所には倍率地域という表示があります。

ところが、評価対象地の前面道路には路線価が設定されています。

このため、路線価方式で評価するべきか、倍率方式で評価するべきかという疑問が生じます。

前面道路に路線価が設定されているのであれば、その路線価を使って評価するのが自然に思えるかもしれません。

しかし、研修資料では、この事例について倍率方式で評価するという判断が示されています。

その理由は、前面道路が路線価地域と倍率地域の境界になっているためです。

つまり、道路に設定されている路線価は、道路の両側の土地に適用されるとは限らないということです。

道路を境に評価地域が異なる場合がある

路線価地域と倍率地域の境界は、都市計画上の区域区分や用途地域の境界と一致している場合があります。

例えば、道路の東側が市街化区域で、西側が市街化調整区域となっているケースです。

市街化区域は、すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る区域です。

一方、市街化調整区域は、市街化を抑制する区域です。

市街化調整区域では、原則として開発や建築に一定の制限があります。

そのため、市街化区域と市街化調整区域では、土地の利用可能性や価格形成の条件が異なることがあります。

今回の研修資料では、路線価が設定されている道路を境に、東側が市街化区域の準工業地域、西側が市街化調整区域となっている事例が紹介されています。

この場合、道路の東側は路線価地域、西側は倍率地域と判断することが妥当とされています。

したがって、道路の西側にある評価対象地については、前面道路に路線価が設定されていても、倍率方式で評価することになります。

前面道路の路線価は反対側の土地のために設定されている

今回の事例で重要なのは、路線価が設定されている道路の位置です。

道路の東側には市街化区域の土地があります。

一方、道路の西側には市街化調整区域の土地があります。

そして、評価対象地は西側の市街化調整区域に所在しています。

研修資料では、前面道路に設定されている路線価は、東側の市街化区域にある土地の評価に用いるものと説明されています。

つまり、同じ道路に接していても、道路の東側と西側で評価方式が異なることになります。

この点は、相続税の土地評価で見落としやすいポイントです。

路線価図に数字が記載されていることだけを確認して、その数字を評価対象地に適用してしまうと、評価方式を誤る可能性があります。

土地評価では、路線価の有無だけでなく、評価対象地がどの評価地域に属しているかを確認する必要があります。

都市計画図を確認することが重要

今回のような事例では、都市計画図の確認が重要になります。

都市計画図には、市街化区域と市街化調整区域の区分や、用途地域などが表示されています。

例えば、住宅地、商業地域、工業地域などの用途地域が色分けされている場合があります。

今回の研修資料では、都市計画図を確認することで、前面道路が市街化区域と市街化調整区域の境界になっていることが判明しています。

この情報によって、路線価地域と倍率地域の境界を判断する手掛かりが得られます。

ただし、都市計画上の区域区分と相続税評価上の地域区分が必ず一致するわけではありません。

最終的には、国税庁が公表する評価年分の路線価図や評価倍率表などを確認する必要があります。

都市計画図は、その判断を補強するための重要な資料として位置付けられます。

固定資産税路線価も重要な判断材料になる

研修資料では、都市計画図に加えて、固定資産税路線価を確認する方法も紹介されています。

固定資産税路線価は、市区町村が固定資産税評価額を算定する際に用いるものです。

相続税の路線価とは、目的や評価水準が異なります。

そのため、固定資産税路線価をそのまま相続税の路線価として使用することはできません。

しかし、土地の価格形成の状況を把握するための参考資料になります。

今回の事例では、全国地価マップを確認すると、評価対象地の前面道路に2種類の固定資産税路線価が設定されていました。

道路の東側と西側で異なる単価が設定されていたのです。

これは、道路の両側で土地の価格形成の条件が異なることを示す重要な情報です。

研修資料では、このことも、道路の東側を路線価地域、西側を倍率地域と判断する根拠の1つとしています。

固定資産税路線価が2種類ある理由

同じ道路であっても、道路の両側で土地の利用条件が異なる場合があります。

例えば、道路の東側が市街化区域の準工業地域で、西側が市街化調整区域の場合です。

東側では一定の条件のもとで建物の建築や土地利用が可能であっても、西側では開発や建築に制限があることがあります。

このような違いは、土地の市場価値にも影響する可能性があります。

そのため、固定資産税評価においても、道路の両側で異なる路線価が設定されることがあります。

今回の研修資料では、前面道路に2種類の固定資産税路線価が設定されていることが、評価地域の境界を判断するための参考情報となっています。

ただし、固定資産税路線価が異なることだけで、相続税の評価方式が確定するわけではありません。

あくまでも、都市計画図や相続税路線価図などと組み合わせて確認する必要があります。

評価方式の違いによって評価額が変わる

路線価方式と倍率方式では、評価額の算出方法が異なります。

そのため、評価方式の判定を誤ると、評価額に差が生じる可能性があります。

例えば、固定資産税評価額が1,500万円で、評価倍率が1.1倍の土地を考えてみましょう。

倍率方式による評価額は1,650万円です。

一方、仮に前面道路の路線価が100,000円で、土地面積が200㎡であれば、各種補正前の単純計算では2,000万円となります。

この場合、両者の差額は350万円です。

ただし、この数値は評価方式による違いを説明するための仮定例です。

実際の評価額は、土地の所在する地域や形状、固定資産税評価額、適用倍率などによって異なります。

重要なのは、評価額が低くなる方式を選択するのではなく、評価対象地に適用される正しい評価方式を確認することです。

倍率地域でも土地の現況調査は必要になる

倍率方式は、固定資産税評価額に倍率を乗じる方法であるため、路線価方式よりも計算が簡単に見えるかもしれません。

しかし、倍率地域であっても、土地の現況調査が不要になるわけではありません。

例えば、登記地目と現況地目が異なる場合があります。

また、複数の筆を一体として利用している場合や、土地の一部が異なる用途に利用されている場合もあります。

さらに、固定資産税評価額が相続税評価の対象となる土地の現況や評価単位と一致しているかどうかも確認する必要があります。

倍率方式では、固定資産税評価額が重要な計算の基礎になります。

そのため、固定資産税課税明細書や固定資産評価証明書などの内容を確認することが重要です。

今回の研修資料でも、倍率地域では固定資産税路線価の設定状況を確認することが推奨されています。

実務では複数の資料を組み合わせて調査する

今回のような土地については、次のような順序で調査することが考えられます。

まず、評価対象地の所在地を確認し、評価年分の相続税路線価図を調べます。

次に、評価対象地が路線価地域と倍率地域のどちらに所在しているかを確認します。

前面道路に路線価が設定されているにもかかわらず、評価対象地が倍率地域と表示されている場合には、地域区分の境界を詳しく調べます。

その際、都市計画図を確認し、市街化区域と市街化調整区域の境界や用途地域の指定状況を把握します。

さらに、全国地価マップなどで固定資産税路線価を確認します。

必要に応じて、市区町村の都市計画担当部署や固定資産税担当部署などに問い合わせることも考えられます。

このように、複数の資料を組み合わせて確認することで、評価方式の誤りを防ぎやすくなります。

評価方式を判断した根拠を保存する

路線価地域と倍率地域の境界にある土地では、評価方式を判断した根拠を保存しておくことが重要です。

例えば、路線価図には前面道路の路線価が記載されているにもかかわらず、倍率方式で評価した場合です。

税務調査などで、その理由を確認される可能性があります。

その際、評価対象地が倍率地域に所在していることを示す路線価図や、都市計画上の区域区分を示す資料などがあれば、評価方針を説明しやすくなります。

また、固定資産税路線価が道路の両側で異なることを確認した資料も、判断の補強材料になります。

土地評価では、評価額の計算過程だけでなく、どの評価方式を採用したのかという前提条件も重要です。

特に、評価地域の境界にある土地については、判断の根拠を明確にしておくことが望まれます。

結論

相続税や贈与税の土地評価では、前面道路に路線価が設定されていても、その土地が倍率地域に所在している場合があります。

今回の研修資料では、道路を境に東側が市街化区域の準工業地域、西側が市街化調整区域となっている事例が紹介されています。

この場合、道路の東側を路線価地域、西側を倍率地域と判断し、西側にある評価対象地については倍率方式で評価するという考え方が示されています。

また、全国地価マップで固定資産税路線価を確認すると、道路の東側と西側で異なる単価が設定されていることも確認されています。

このような情報は、評価地域の境界を判断するための重要な参考資料になります。

ただし、都市計画上の区域区分と相続税評価上の地域区分が必ず一致するわけではありません。

最終的には、評価年分の路線価図や評価倍率表などに基づいて判断する必要があります。

相続税の土地評価では、前面道路に路線価があるという事実だけで評価方式を決めないことが重要です。

都市計画図や固定資産税路線価などを組み合わせて確認し、評価対象地がどの地域に属しているのかを正確に把握することが求められます。

適正な土地評価は、評価額を計算する前に、正しい評価方式を選択することから始まるのです。

参考

東京税理士会 2026年度 相続・贈与の土地評価実務Q&A 全国統一研修会資料

国税庁 財産評価基本通達 路線価方式及び倍率方式

国税庁 令和8年分 路線価図及び評価倍率表

資産評価システム研究センター 全国地価マップ

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