保険の解約返戻金7.2兆円はなぜ過去最高になったのか 金利上昇で古い保険を見直す人が増える理由編

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生命保険を途中で解約したときに受け取る解約返戻金が大きく増えています。

2026年1月から6月に生命保険会社が支払った解約返戻金は7.2兆円となりました。

同じ期間の金額としては、データを遡ることができる2020年以降で過去最高です。

なぜ今、生命保険を解約する人のお金がこれほど大きくなっているのでしょうか。

背景の1つに金利上昇があります。

金利が上昇すると、新しく販売される貯蓄型保険などの商品条件が変わります。

その結果、低金利時代に加入した古い契約をそのまま持ち続けるのか、新しい保険へ切り替えるのか、あるいは保険を解約して投資信託などへ資金を移すのかを考える人が増えているのです。

解約返戻金とは何か

生命保険には、契約を途中で解約するとお金が戻ってくる商品があります。

このとき保険会社から契約者へ支払われるお金が解約返戻金です。

ただし、支払った保険料がそのまま全額戻ってくるとは限りません。

契約してから短期間で解約すると、解約返戻金がそれまでに支払った保険料の合計額を下回ることがあります。

商品や契約期間によっては、解約返戻金がほとんどない場合もあります。

そのため、解約返戻金がある保険を解約するときには、受取額とそれまでに支払った保険料を分けて確認する必要があります。

7.2兆円という数字が示すもの

生命保険協会によると、2026年1月から6月の解約返戻金は7.2兆円でした。

同期間としては2020年以降で最高です。

この数字は、生命保険から家計へ戻った資金が非常に大きくなっていることを示しています。

ただし、7.2兆円という数字だけから、すべての契約者が保険をやめて投資へ移ったと考えることはできません。

解約の理由はさまざまです。

生活資金として利用する人もいれば、新しい保険へ加入し直す人もいます。

住宅購入などまとまった支出に使う場合もあります。

解約返戻金の増加と、その後のお金の行き先は分けて考える必要があります。

金利上昇が保険を見直すきっかけになる

貯蓄型の生命保険では、金利環境が商品の条件に影響します。

保険会社は契約者から受け取った保険料の一部を長期間運用します。

低金利の時代には、保険会社が高い運用利回りを確保することが難しくなります。

そのため、新しく販売される保険商品の予定利率も低くなりやすくなります。

反対に市場金利が上昇すると、保険会社の運用環境が変わり、新しい商品の予定利率が引き上げられることがあります。

すると、低金利時代に加入した契約と新しい商品の条件を比較する人が増えます。

予定利率が変わると保険料にも影響する

予定利率とは、保険会社が保険料を計算する際に見込む運用利回りの1つです。

予定利率が高くなれば、運用によって得られる収益をより多く見込むことができます。

そのため、同じような保障内容であれば、予定利率の上昇が保険料や貯蓄部分の条件に影響することがあります。

金利が上昇する局面では、新しい保険商品の条件が以前より魅力的になる場合があります。

その結果、既存の保険契約を見直す動きにつながります。

古い保険なら必ず不利とは限らない

ここで注意したいのが、古い保険だから条件が悪いとは限らないことです。

生命保険は契約した時点の条件が長期間続く商品があります。

過去の金利が高かった時代に契約した保険には、現在では得にくい高い予定利率が設定されている場合があります。

こうした契約を解約すると、有利な条件を手放すことになります。

一方、低金利時代に加入した商品では、新しい商品と比較して見直す余地がある場合があります。

保険を見直す場合には、加入した時期や予定利率、保障内容などを個別に確認することが重要です。

解約して新しい保険へ入り直す場合にも注意が必要

現在の保険を解約して新しい保険へ加入すれば、必ず有利になるわけでもありません。

生命保険は加入時の年齢などによって保険料が変わります。

以前より年齢が高くなっていれば、新しい契約の保険料が高くなることがあります。

また、新しい保険へ加入できるかどうかは契約時の条件によって決まります。

古い保険を先に解約してしまうと、新しい保険へ予定通り加入できなかった場合に保障がなくなる可能性もあります。

単純に予定利率だけを比較して判断することはできません。

保険から投資信託へ動く資金もある

今回の記事では、貯蓄目的で加入していた保険を解約し、より高い収益を期待して投資信託などへ資金を移す動きも指摘されています。

新NISAの普及によって、個人が投資信託を利用しやすくなりました。

そのため、これまで保険の中で保障と資産形成をまとめて行っていた人が、両者を分けて考えるようになる可能性があります。

保障は保険で確保する。

資産形成は投資信託などで行う。

こうした金融商品の役割分担です。

投資信託へ移せば必ず増えるわけではない

保険を解約して投資信託へ資金を移す場合には、リスクの違いを理解する必要があります。

投資信託は株式や債券などへ投資するため、価格が変動します。

100万円を投資しても、将来120万円になることもあれば80万円になることもあります。

保険と投資信託では、そもそもの役割やリスクが違います。

期待できる利回りだけを比較して、どちらが有利かを決めることはできません。

特に保険を解約すると保障も失われる場合があるため、資産形成部分だけを見て判断することには注意が必要です。

解約返戻金の使い道が家計金融資産を変える

7.2兆円という解約返戻金が、その後どこへ向かうのかも重要です。

新しい保険へ移れば、家計金融資産全体の中では引き続き保険として保有されることになります。

銀行預金へ移せば現預金が増えます。

投資信託や株式へ移れば、リスク性資産の残高が増えます。

2026年6月末には株式と投資信託の残高が678兆9608億円となり、保険や年金などの585兆8334億円を大きく上回りました。

保険の見直しによって生まれた資金がどこへ向かうのかは、今後の家計金融資産の構成にも影響します。

解約前に確認したいのは現在の契約内容

保険の見直しで重要なのは、金利が上がったという理由だけで解約しないことです。

まず現在の契約内容を確認する必要があります。

どのような保障があるのか。

いつまで保障されるのか。

これまでにいくら保険料を支払ったのか。

現在解約するといくら戻るのか。

予定利率はどの程度なのか。

将来受け取れる金額はいくらなのか。

こうした条件を確認したうえで、新しい保険や他の金融商品と比較することが重要です。

結論

2026年1月から6月の生命保険の解約返戻金は7.2兆円となり、同期間として2020年以降で過去最高になりました。

背景の1つには、国内金利の上昇があります。

金利が上昇すると新しい保険商品の予定利率などの条件が変わり、低金利時代に加入した既存契約を見直すきっかけになります。

さらに、新NISAの普及によって、貯蓄型保険から投資信託などへ資産形成資金を移す選択肢も身近になっています。

ただし、解約返戻金7.2兆円のすべてが投資へ向かったわけではありません。

また、古い保険が必ず不利なわけでもありません。

過去に高い予定利率で契約した保険には、現在では得にくい条件が残っている場合があります。

保険を見直すときに重要なのは、金利や利回りだけを見ることではありません。

現在の保障、解約返戻金、予定利率、新しい契約の条件、そして解約後のお金の使い道まで含めて考える必要があります。

金利上昇は保険をすぐに解約する理由ではなく、自分が持っている保険の役割を改めて確認するきっかけと考えることが大切です。

参考

日本経済新聞 2026年9月18日 朝刊 家計、株式・投信へシフト

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