中古住宅を購入するとき、物件価格が新築より安ければお得に見えます。
しかし、中古住宅では購入後のリフォームや修繕が必要になることがあります。
さらに注意したいのは、そのリフォーム費用そのものが今後上昇する可能性があることです。
住宅リフォームには、木材、断熱材、住宅設備などの資材が必要です。
そのため、資材価格が上昇すればリフォーム費用も上がります。
しかし、これからより大きな問題になる可能性があるのが職人不足です。
大工などの建設人材が減少すれば、材料があっても工事をする人が足りなくなります。
すると、住宅を安く購入できても、修繕費が高くて直せないという状況が起こる可能性があります。
新築住宅の供給が減り、中古住宅を長く使う時代になるほど、住宅購入時から将来のリフォーム費用まで考えておくことが重要になります。
リフォーム費用には何が含まれるのか
住宅リフォーム費用というと、キッチンや浴室などの設備価格をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、実際の工事費は設備や材料だけではありません。
大きく分けると、
材料や設備にかかる費用
職人などの人件費
既存部分の解体や撤去費
廃材の処分費
運搬費
設計や施工管理などの費用
などがあります。
例えば浴室を交換するとします。
新しい浴槽や設備を購入するだけでは工事は終わりません。
古い浴室を取り外し、撤去した材料を処分し、新しい設備を運び込み、配管などを接続し、必要に応じて壁や床を修復します。
そのため、住宅設備そのものの価格が変わらなくても、人件費や運搬費、廃棄費用などが上昇すればリフォーム費用は高くなります。
資材価格が上がるとリフォーム費用も上がる
住宅リフォームでは多くの建築資材を使用します。
例えば、
木材
合板
断熱材
ガラス
金属
コンクリート
石こうボード
給排水管
などです。
キッチン、浴室、トイレ、給湯器などの住宅設備も必要になります。
こうした資材や設備の価格が上昇すれば、当然工事費にも影響します。
さらに住宅資材の中には海外から輸入される原材料や製品もあります。
そのため、海外の商品価格だけでなく、為替相場や輸送費などの影響を受ける場合があります。
例えば原材料価格が上昇し、さらに円安によって輸入価格も上昇すれば、住宅会社や工務店の仕入れコストは増えます。
そのコストが長期的に続けば、最終的にはリフォーム価格へ反映されやすくなります。
リフォーム費用は人件費にも左右される
これから特に重要になるのが人件費です。
住宅リフォームは機械だけで完結する仕事ではありません。
大工をはじめ、
電気工事
配管工事
内装工事
塗装工事
屋根工事
左官工事
など、さまざまな職人が必要になります。
リフォーム内容によっては複数の職種が順番に作業します。
どこか一つの職種で人手が不足すれば、工事全体が遅れる可能性があります。
建設業界で働く人が減れば、限られた職人を多くの工事現場が取り合うことになります。
すると職人の賃金や外注費が上昇しやすくなります。
これがリフォーム費用へ反映されます。
大工不足はなぜ大きな問題なのか
住宅の新築や修繕で重要な役割を担うのが大工です。
元の記事では、大工は2020年までの20年間でほぼ半減し、30万人を下回ったとされています。
さらに2035年前後には15万人を割り込む可能性も指摘されています。
住宅需要が減るのであれば、大工も減って問題ないように思えるかもしれません。
しかし、住宅は建てた後も修繕が必要です。
日本にはすでに大量の住宅ストックがあります。
これらの住宅が古くなれば、
屋根を直す
壁を直す
床を直す
耐震補強をする
断熱改修をする
といった工事が必要になります。
新築住宅が減っても、既存住宅の修繕需要まで同じように減るとは限りません。
むしろ中古住宅を長く使うようになれば、リフォーム需要は増える可能性があります。
その一方で大工が減れば、修繕需要に対して施工能力が不足します。
中古住宅の修繕は新築より省人化しにくい
新築住宅では、工事を効率化する技術が普及しています。
代表的なのがプレカットです。
住宅に使用する木材を工場であらかじめ加工し、建築現場では組み立てを中心に作業します。
これによって現場で大工が木材を一つずつ加工する作業を減らすことができます。
同じ仕様の住宅を複数建設する場合には、規格化による効率化もできます。
しかし、中古住宅のリフォームでは同じ方法を使いにくい場合があります。
中古住宅は一戸ごとに状態が違うからです。
例えば壁を開けてみると、
柱が腐っていた
断熱材が入っていなかった
配管が想定以上に古かった
シロアリ被害があった
ということがあります。
設計図だけでは分からない問題が工事中に見つかることもあります。
その場合、職人が現場で状態を確認し、その住宅に合わせて作業する必要があります。
そのため、中古住宅の修繕は新築以上に職人の経験や技能に依存することがあります。
人手不足は価格だけでなく工期にも影響する
職人不足の影響は工事費だけではありません。
工事を始められる時期にも影響します。
例えば中古住宅を購入し、入居前にリフォームをしようと考えたとします。
以前なら契約後すぐに工事を始められたとしても、職人不足が進めば数カ月待たなければならない可能性があります。
すると、
現在の賃貸住宅の家賃
住宅ローン
仮住まい費用
荷物の保管費
などが余分に発生することがあります。
つまり、人手不足による住宅コスト上昇は工事見積額だけではありません。
工期が延びることで発生する間接的な費用も考える必要があります。
古い住宅ほど追加工事が発生しやすい
中古住宅のリフォームでは、最初の見積額だけで工事が終わらない場合があります。
特に築年数の古い住宅では、解体して初めて問題が見つかることがあります。
例えば500万円のリフォームを予定していたとします。
しかし工事を始めて壁を取り外したところ、柱や土台の腐食が見つかれば追加工事が必要になります。
さらに配管交換や耐震補強まで必要になれば、工事費が大きく増えることがあります。
新築住宅では、基本的に設計図に基づいて新しい材料を使って建築します。
中古住宅では既存の建物を利用するため、不確定要素が多くなります。
そのため中古住宅の資金計画では、
見積額だけを用意する
のではなく、
追加工事が発生する可能性
まで考えて資金に余裕を持たせる必要があります。
住宅購入時から修繕費を考える
中古住宅を購入するとき、多くの人は住宅ローンの返済額を中心に考えます。
例えば3000万円の中古住宅を購入できるかどうかを、毎月の住宅ローン返済額から判断します。
しかし、本当に必要なのは住宅取得後まで含めた資金計画です。
住宅を所有すれば、
屋根
外壁
給湯器
エアコン
キッチン
浴室
トイレ
給排水設備
などを将来交換する必要があります。
これらは同じ年に壊れるとは限りません。
しかし10年、20年、30年という長期間で見れば、何らかの修繕はほぼ確実に発生します。
しかも、そのときの工事費が現在と同じとは限りません。
資材費や人件費が上昇していれば、想定していた修繕費では足りなくなる可能性があります。
修繕費のための余力を残す
住宅購入では、借りられる金額と無理なく返せる金額を分けて考える必要があります。
住宅ローンを限界まで組んでしまうと、購入後に大規模修繕が必要になったとき対応できなくなる可能性があります。
例えば毎月の収入のほとんどを、
住宅ローン
生活費
教育費
などに使っていれば、突然300万円の修繕が必要になったときに困ります。
そこで住宅購入時には、
購入時の頭金
住宅ローン返済
だけではなく、
将来の修繕積立
も家計に組み込んでおくことが重要です。
戸建て住宅にはマンションのように強制的な修繕積立金がありません。
自分自身で将来の修繕費を準備する必要があります。
安い中古住宅ほど慎重に見る
中古住宅の価格が非常に安い場合、その理由を確認することが重要です。
単純に売主が早く売りたいだけの場合もあります。
しかし、
築年数が古い
耐震改修が必要
断熱性能が低い
屋根や外壁が傷んでいる
設備交換が必要
といった理由で価格が低くなっている可能性もあります。
例えば2000万円の中古住宅を購入し、1000万円のリフォームが必要なら総額は3000万円です。
一方、2800万円で状態の良い中古住宅があり、改修費が100万円で済むなら総額2900万円です。
販売価格だけなら2000万円の住宅が安く見えます。
しかし、総額では逆転します。
中古住宅では物件価格とリフォーム費を分けて考えないことが重要です。
新築不足時代には修繕能力そのものが価値になる
これから新築住宅の供給が減れば、既存住宅を修繕しながら長く使う必要があります。
しかし、ここで問題になるのが、住宅があっても直す人がいないという状況です。
大工などの職人が不足すれば、
修繕費が上がる
工事までの待ち時間が長くなる
小規模な工事を引き受けてもらいにくくなる
といったことが起こる可能性があります。
そうなると、住宅市場では単に住宅が存在するかどうかだけではなく、適切に維持できるかどうかが重要になります。
状態の良い中古住宅や、これまで適切に修繕されてきた住宅の価値が相対的に高まる可能性もあります。
結論
住宅リフォーム費用は、資材価格だけで決まるものではありません。
木材や断熱材、住宅設備などの材料費に加えて、大工、電気工事、配管工事、内装工事など多くの職人の人件費が含まれています。
そのため、資材価格が上昇すればリフォーム費用は上がります。
さらに大工などの建設人材が減少すれば、人件費の上昇や工期の長期化を通じて修繕費が高くなる可能性があります。
特に中古住宅の修繕は、新築住宅と比べて省人化が難しい場合があります。
一戸ごとに建物の状態が異なり、工事を始めてから腐食や配管の老朽化などが見つかることがあるからです。
そのため、職人の経験や現場での判断が必要になります。
これから新築住宅の供給が減り、中古住宅を長く利用する社会になれば、住宅を直す需要はますます重要になります。
一方、その工事を担う人材が減れば、修繕費は住宅購入者にとって大きな負担になります。
住宅を購入するときには、現在の物件価格だけを見てはいけません。
購入後10年、20年、30年の間にどのような修繕が必要になり、その費用が将来上昇する可能性まで考えて資金計画を作る必要があります。
新築不足時代の住宅選びでは、家を買えるかどうかだけではなく、その家を将来にわたって直しながら維持できるかどうかまで考えることが重要になるのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し