住宅ストックとは何か 住宅が余っているのに住みたい家が不足する理由編

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日本では空き家が増えています。

住宅総数も世帯数を上回っています。

それなら、これから人口が減れば住宅はますます余り、家探しは簡単になるように思えます。

しかし実際には、住宅の数が余っていることと、住みたい住宅が十分にあることは同じではありません。

住宅市場を考えるうえで重要なのが、住宅ストックという考え方です。

住宅ストックとは、すでに存在している住宅の蓄積を意味します。

新しく建てられる住宅だけを見るのではなく、現在ある住宅をどのように使うかという視点です。

これから新築住宅の供給が減るのであれば、日本では住宅ストックをどれだけ有効に活用できるかがますます重要になります。

住宅ストックとは何か

住宅ストックとは、ある時点ですでに存在している住宅全体を指します。

戸建て住宅だけではありません。

マンション、アパート、賃貸住宅、空き家なども含まれます。

例えば、ある地域に住宅が100万戸存在しているとします。

その100万戸が、その地域の住宅ストックです。

一方、その年に新しく1万戸の住宅が建てられた場合、その1万戸は新たに住宅ストックへ加わります。

つまり、

すでに存在する住宅がストック

新しく建てられる住宅がフロー

と考えることができます。

住宅市場を見る場合、新築住宅だけではなく、すでにある大量の住宅をどう活用するかが重要になります。

特に人口減少社会では、新築を増やし続けるだけではなく、既存の住宅を修繕しながら長く使う発想が必要になります。

新築住宅との違い

新築住宅は、その時点で新しく建設された住宅です。

一方、住宅ストックには築1年の住宅も築50年の住宅も含まれます。

そのため、同じ住宅ストックでも状態は大きく違います。

例えば築5年のマンションであれば、比較的新しく、そのまま住める可能性があります。

一方、築50年の戸建て住宅では、耐震改修、断熱改修、水回りの交換などが必要になることがあります。

住宅ストックは数だけでは評価できません。

重要なのは、

どこにあるのか

どのくらい古いのか

どの程度傷んでいるのか

現在の耐震基準を満たしているのか

断熱性能は十分か

といった住宅の中身です。

住宅が100戸存在していても、そのうち実際に住みたいと思える住宅が20戸しかなければ、実質的には住宅不足になることがあります。

住宅数と世帯数の関係

住宅の需要を考えるときには、人口だけでなく世帯数を見る必要があります。

住宅は通常、1人につき1戸必要になるわけではありません。

1世帯につき1戸必要になります。

例えば人口が100万人いて、平均4人世帯であれば、単純計算では25万世帯です。

しかし、同じ100万人でも平均2人世帯であれば50万世帯になります。

人口が同じでも、世帯が小さくなれば必要な住宅数は増えるのです。

日本では単身世帯や夫婦のみの世帯が増えています。

そのため、人口が減少しても世帯数は人口ほど急速には減らない場合があります。

この点が、

人口減少イコール住宅需要の急減

とはならない理由の一つです。

さらに住宅市場では、世帯数と同じだけ住宅があれば十分というわけでもありません。

引っ越しや建て替えなどのために一定の空き家が必要だからです。

住宅市場が正常に動くためには、ある程度の余裕となる住宅ストックも必要になります。

住宅が余っているとはどういうことか

住宅総数が世帯数を上回れば、統計上は住宅が余っていることになります。

日本では長年、住宅総数が世帯数を上回っています。

空き家も増えてきました。

しかし、ここで注意したいのは、空いている住宅すべてが市場に出ているわけではないことです。

住宅所有者が売る意思も貸す意思もなければ、その住宅は住宅市場の供給にはなりません。

さらに、立地や建物の状態によっては、売ろうとしても買い手が見つからない住宅もあります。

つまり、

住宅が存在すること

住宅市場で利用できること

実際に住みたいと思われること

はそれぞれ違います。

この違いを理解しないと、空き家が多いのになぜ住宅価格が高いのかという疑問を説明できません。

居住ニーズとは何か

居住ニーズとは、人が住宅に求める条件です。

例えば、

通勤しやすい

駅に近い

スーパーや病院が近い

学校が近い

耐震性が高い

断熱性能が高い

十分な広さがある

管理状態が良い

といった条件があります。

住宅は単純な箱ではありません。

同じ広さの住宅でも、場所や性能によって価値は大きく異なります。

住宅ストックが十分にあっても、人々が求める条件と合わなければ利用されません。

これが住宅ストックと居住ニーズのミスマッチです。

立地のミスマッチが起こる

最も分かりやすいのが立地のミスマッチです。

人口減少が進んでいる地方には空き家が増えている地域があります。

一方、都市部では住宅需要が強く、住宅価格や家賃が上昇することがあります。

日本全体で住宅が余っていても、

住宅が余っている場所

住宅を必要としている場所

が違えば問題は解決しません。

例えば地方に空き家が100万戸あったとしても、東京で働く人がその住宅から毎日通勤することは現実的ではありません。

住宅は移動させることができない資産です。

そのため、立地の違いが住宅ストックの価値を大きく左右します。

住宅性能のミスマッチもある

住宅の場所が良くても、建物そのものが現在の生活ニーズに合わないことがあります。

例えば古い住宅では、

耐震性が不足している

断熱性能が低い

段差が多い

水回り設備が古い

間取りが現在の生活に合わない

といった問題があります。

安く購入できたとしても、大規模な改修が必要になれば、結果的に費用が高くなることがあります。

特に耐震改修や断熱改修は、壁や床を大きく工事する場合があります。

そのため、物件価格だけを見ると安い中古住宅でも、住める状態にするまでの総費用では高くなることがあります。

住宅ストックを有効活用するには、単に売買を増やすだけではなく、住宅の性能を向上させる必要もあるのです。

世帯構成の変化でもミスマッチが起こる

住宅ストックと居住ニーズのミスマッチは、世帯構成の変化によっても起こります。

かつては夫婦と子ども2人という4人世帯を想定した住宅が多く建てられました。

しかし現在は単身世帯や夫婦のみ世帯が増えています。

高齢になった夫婦が、子どもが独立した後も広い戸建て住宅に住み続けている場合もあります。

一方で、子育て世帯が広い住宅を探しても、希望する地域では十分な物件が見つからないことがあります。

つまり、

住宅の大きさ

住宅を必要とする世帯の大きさ

にもミスマッチが発生します。

住宅ストックを有効活用するには、住み替えを促す仕組みも重要になります。

空き家があっても新築住宅が必要になる理由

既存住宅が余っているなら、新築住宅はもう必要ないのではないかという考え方もあります。

しかし、現実にはそう単純ではありません。

古い住宅を取り壊し、新しい住宅へ建て替える必要があります。

人口が増えている地域では、新しい住宅も必要になります。

高齢者向け住宅や子育て世帯向け住宅など、生活スタイルの変化に合わせた住宅も必要です。

さらに住宅には寿命があります。

適切に修繕すれば長く使えますが、すべての住宅を永久に使い続けることはできません。

そのため、新築住宅の供給を完全になくすことはできません。

重要なのは、

新築住宅を増やすこと

既存住宅を活用すること

老朽住宅を建て替えること

を組み合わせることです。

新築不足時代ほど住宅ストックが重要になる

これから大工などの建設人材が減少すれば、新築住宅を大量に建て続けることは難しくなります。

建築資材や人件費が上昇すれば、新築住宅価格も高くなります。

そこで重要になるのが、すでに存在する住宅ストックです。

中古住宅を適切に修繕し、長く使うことができれば、新築住宅だけに依存する必要はなくなります。

ただし、そのためには住宅の状態を正確に把握する必要があります。

耐震性は十分なのか。

断熱改修は必要なのか。

配管や屋根はあと何年使えるのか。

どのくらい修繕費が必要なのか。

こうした情報が分からなければ、購入者は中古住宅を安心して買うことができません。

住宅ストックを活用するには、中古住宅市場の透明性を高めることも重要になります。

住宅ストックは量ではなく質を見る

今後の住宅市場では、住宅の総数だけを見ても実態が分かりにくくなります。

重要なのは住宅ストックの質です。

例えば同じ100万戸の住宅ストックでも、

築浅住宅が多い地域

老朽住宅が多い地域

駅前に住宅が多い地域

郊外に空き家が集中する地域

では住宅市場の状況は大きく違います。

住宅ストックを見るときには、

戸数

築年数

立地

耐震性

断熱性能

管理状態

などを合わせて考える必要があります。

日本全体で住宅が余っているという数字だけを見て、将来は住宅が簡単に安く買えると考えるのは危険です。

条件の良い住宅は限られており、需要が集中する可能性があるからです。

結論

住宅ストックとは、すでに存在している住宅の蓄積を意味します。

新築住宅だけではなく、戸建て、マンション、賃貸住宅、空き家など、日本に存在する住宅全体が住宅ストックです。

日本では住宅総数が世帯数を上回り、多くの空き家があります。

しかし、住宅が余っているからといって、住みたい住宅も余っているとは限りません。

住宅には立地や性能の違いがあります。

地方では空き家が増えている一方、都市部では住宅需要が強いことがあります。

古い住宅では耐震性や断熱性能が不足し、多額の修繕費が必要になることもあります。

さらに単身世帯の増加などによって、既存住宅の広さや間取りと現在の居住ニーズが合わなくなることもあります。

これが住宅ストックと居住ニーズのミスマッチです。

今後、新築住宅の供給が減少すれば、日本にすでに存在する住宅ストックを有効に活用することがますます重要になります。

ただし重要なのは住宅の数ではありません。

どこにあり、どの程度の性能があり、いくら修繕すれば住めるのかを見る必要があります。

住宅が余る時代とは、誰でも簡単に条件の良い住宅を手に入れられる時代ではありません。

むしろ、住宅は余っているのに、自分が住みたい住宅だけは不足するという状況が広がる可能性があります。

これからの住宅選びでは、新築か中古かという二者択一だけではなく、日本にある住宅ストックの中から、立地、性能、修繕費まで含めて利用価値の高い住宅を見極める視点が重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し

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