テレワークの普及や地方移住への関心の高まりを背景に、都市部と地方を行き来する「二地域居住」を選ぶ人が増えています。
また、週末だけ利用する別荘やセカンドハウスを所有する人も少なくありません。
こうした場合、「どちらの住宅が居住用財産になるのか」「3000万円特別控除は利用できるのか」と疑問を持つ人も多いでしょう。
税法では、住宅を複数所有しているだけで特例が認められるわけではありません。重要なのは、その住宅が生活の本拠であったかどうかです。
今回は、二拠点生活時代の居住用財産の考え方について解説します。
居住用財産は生活の本拠が前提
3000万円特別控除の対象となるのは、自分が居住していた住宅です。
ここでいう居住とは、日常生活の中心として継続的に利用していたことを意味します。
そのため、住宅を二つ所有していても、両方が同時に生活の本拠になることは通常ありません。
税務上は、どちらが実際の生活の中心だったのかを総合的に判断します。
セカンドハウスや別荘は対象外が原則
別荘や週末住宅は、一般的には保養やレジャーを目的として利用されます。
そのため、生活の本拠とは考えられず、3000万円特別控除の対象にはなりません。
年間を通じて何度利用していたかではなく、日常生活を送る場所だったかどうかが判断のポイントになります。
「頻繁に利用していたから居住用財産になる」というわけではありません。
二地域居住では実態が重視される
一方で、都市部と地方を行き来する二地域居住では判断が難しくなります。
例えば、
平日は東京で勤務し、週末は地方の住宅で生活する。
あるいは、季節によって居住地を変える。
このような生活スタイルでは、どちらが生活の本拠なのかを個別に判断する必要があります。
住民票だけではなく、勤務先、家族の居住地、公共料金の利用状況、医療機関の受診先など、多くの事情が総合的に検討されます。
単身赴任ではどう考えるのか
単身赴任も実務でよく問題になります。
例えば、夫が単身赴任先で生活し、妻や子どもは自宅に住み続けている場合です。
このようなケースでは、自宅が家族の生活の本拠として機能していることから、居住用財産として認められることがあります。
一方で、家族全員が転居し、自宅が空き家になっている場合には、別の判断になる可能性があります。
生活実態や家族の状況を総合的に確認することが重要です。
生活の本拠は総合的に判断される
税務署は、一つの資料だけで判断することはありません。
例えば、
・住民票
・公共料金の利用状況
・郵便物の送付先
・銀行やATMの利用履歴
・勤務先
・家族の居住場所
・医療機関の受診状況
などを総合的に確認します。
どの住宅が日常生活の中心だったのかを客観的な証拠によって判断することになります。
近年の裁判例でも、この「生活の本拠」という考え方が重視されています。
二拠点生活が広がる時代だからこそ注意
働き方や暮らし方が多様化した現在では、複数の住宅を持つこと自体は珍しくありません。
しかし、税法は依然として「生活の本拠」という考え方を基本としています。
二拠点生活だからといって、自動的に両方の住宅が居住用財産になるわけではありません。
自宅の売却を予定している場合には、生活実態を客観的に説明できるよう、日頃から記録や資料を整理しておくことが安心につながります。
結論
二地域居住や別荘、セカンドハウスを所有している場合でも、3000万円特別控除の対象となるのは、原則として生活の本拠となっていた住宅です。
住民票だけで判断されることはなく、勤務先や家族の居住状況、公共料金の利用実績など、多くの客観的事実を総合的に判断して決まります。
ライフスタイルが多様化する時代だからこそ、「どこで生活していたのか」を客観的に説明できることが、税務上ますます重要になっていくでしょう。
参考
国税庁
「マイホームを売ったときの特例(居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除)」
所得税法
租税特別措置法
税のしるべ(2026年7月27日)
居住用財産を譲渡した場合の特別控除の適用巡り判決、地裁も特別控除を適用した家屋を生活の拠点と認めず