不納付加算税とは何か 源泉所得税を期限までに納めないと追加負担が発生する仕組み編

税理士
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会社が給与などから所得税を源泉徴収した場合、その税金を所定の期限までに国へ納付する必要があります。

ところが、税額の計算は正しく、給与から所得税も差し引いていたのに、納付手続きを忘れてしまうことがあります。

この場合、本来の源泉所得税を後から納めれば終わりとは限りません。

期限までに納付しなかったことについて、不納付加算税が課される場合があるからです。

不納付加算税は、法人税の申告漏れなどで問題となる過少申告加算税とは異なり、源泉徴収による国税を期限までに納付しなかった場合に問題となる加算税です。

住友生命保険の事例でも、源泉所得税の納付漏れによって、不納付加算税や延滞税を含め約14億9,000万円の追徴課税となりました。

企業にとって源泉所得税の期限管理が重要になる理由を、不納付加算税から考えてみます。

不納付加算税とは何か

不納付加算税は、源泉徴収などによって納付すべき国税を法定納期限までに納付しなかった場合に課される加算税です。

例えば、会社が従業員の給与から所得税を源泉徴収したとします。

原則として、その源泉所得税は給与を支払った月の翌月10日までに納付します。

会社が源泉所得税を正しく計算していても、期限までに納付しなければ不納付加算税の対象になる可能性があります。

つまり、税額計算の間違いだけをチェックしていても十分ではありません。

納付まで完了していることを確認する必要があります。

原則は10%の負担になる

不納付加算税は、原則として納付すべき税額の10%に相当する金額となります。

例えば、本来納付すべき源泉所得税が1,000万円だったとします。

一定の場合に10%の不納付加算税が課されれば、100万円の追加負担になります。

本税1,000万円とは別の負担です。

本来払う必要のなかった100万円が、納付期限を守らなかったことで発生することになります。

源泉所得税の金額が大きい企業ほど、わずかな手続きミスでも追加負担が大きくなる可能性があります。

自主的に納付すると5%になる場合がある

期限後の納付だからといって、必ず10%になるわけではありません。

税務当局から納税の告知を受けることになる前に、自主的に納付した場合には、不納付加算税が5%となる場合があります。

仮に納付すべき源泉所得税が1,000万円であれば、5%は50万円です。

10%なら100万円ですから、50万円の違いになります。

この仕組みから分かるのは、納付漏れに気付いたときに放置しないことの重要性です。

「次の税務調査で指摘されたら対応すればよい」と考えるのではなく、ミスを発見した段階で速やかに事実関係を確認する必要があります。

早期発見と早期対応は、税務リスク管理の基本です。

不納付加算税が課されない場合もある

納付期限を少し過ぎただけでも、必ず不納付加算税が課されるわけではありません。

一定の要件を満たす場合には、不納付加算税が課されないことがあります。

例えば、法定納期限から1カ月以内に納付していることに加え、過去の納付状況などについて一定の要件を満たしている場合です。

また、納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合にも、不納付加算税が課されないことがあります。

ただし、「忙しかった」「担当者が忘れていた」といった事情があれば当然に認められるという意味ではありません。

救済規定を期待するのではなく、期限内納付を基本とする必要があります。

不納付加算税と延滞税は別物

源泉所得税の納付が遅れたときには、不納付加算税だけでなく延滞税も問題になることがあります。

この2つは性格が異なります。

不納付加算税は、法定納期限までに源泉所得税を納付しなかったことに対する加算税です。

一方、延滞税は、税金を期限までに納付しなかった場合に、その遅れている期間に応じて発生するものです。

そのため、同じ源泉所得税の納付漏れについて、不納付加算税と延滞税の両方が発生することがあります。

「加算税を払えば延滞税は発生しない」というものではありません。

給与から差し引いていても安心できない

源泉所得税では、もう1つ注意したいことがあります。

従業員の給与から正しい金額を差し引いていたとしても、会社が国へ納付していなければ問題は残ります。

源泉徴収業務には、

源泉徴収の対象かを判断する

正しい税額を計算する

支払額から所得税を徴収する

期限までに国へ納付する

という一連の流れがあります。

どこか1つだけ正しくても十分ではありません。

特に企業の内部統制では、「計算した」「給与から差し引いた」という段階で業務完了と考えず、納付結果まで確認することが重要です。

なぜ源泉所得税のミスは起こるのか

毎月の給与に関する源泉所得税であれば、企業内で業務フローが確立されていることが多いでしょう。

むしろ注意したいのは、通常とは異なる支払いです。

外部の専門家へ報酬を支払った。

海外へ利子を支払った。

海外企業との新しい取引が始まった。

一時的に特殊な支払いが発生した。

こうした取引では、日常的な給与計算の仕組みから外れるため、源泉徴収の要否そのものを見落とす可能性があります。

特に支払金額が大きければ、1件の判断ミスによる影響も大きくなります。

住友生命の事例から分かること

住友生命では、海外投資家に対して2023年9月に支払った社債の利子について、源泉所得税の納付漏れが指摘されました。

問題となったのは、民間国外債等の利子に関する非課税措置の手続きです。

必要な利子受領者確認書の提出が遅れたことで、源泉所得税の取り扱いが問題となりました。

追徴税額は、不納付加算税と延滞税を含め約14億9,000万円に上ったとされています。

ここで重要なのは、複雑な租税回避行為が問題となったわけではないことです。

必要書類の提出遅れという事務上のミスが、巨額の税務負担につながりました。

源泉所得税では、税率や税額の計算だけでなく、非課税措置を受けるための書類や期限まで含めて管理する必要があります。

高額取引は支払い前に確認する

源泉所得税のミスを防ぐためには、支払い後に確認するだけでは不十分な場合があります。

例えば1億円を支払った後に「源泉徴収が必要だった」と分かるより、支払い前に確認した方が対応しやすくなります。

特に、

通常とは異なる高額取引

海外への支払い

新しい種類の取引

専門家への報酬

利子や配当などの支払い

については、支払い前に税務担当者が確認する仕組みを設けることが考えられます。

税務部門が取引の存在を知るのが支払い後では遅い場合があるからです。

納付完了までチェックする仕組みが必要になる

源泉所得税の管理では、納付予定表を作るだけでなく、実際に納付したことまで確認する必要があります。

誰が税額を計算したのか。

誰が確認したのか。

誰が納付手続きをしたのか。

納付が完了したことを誰が確認したのか。

こうした役割を明確にしておくことが重要です。

担当者1人が計算から納付まで行い、他の誰も確認しない仕組みでは、担当者の失念がそのまま会社の税務リスクになります。

ダブルチェックは、税額計算だけではなく納付完了まで行う必要があります。

結論

不納付加算税は、源泉所得税などを法定納期限までに納付しなかった場合に問題となる加算税です。

原則として納付すべき税額の10%となり、税務当局から納税の告知を受けることになる前に自主的に納付した場合には5%となる場合があります。

さらに、一定の場合には延滞税も発生します。

そのため、源泉所得税の納付漏れでは、本来の税金以上の負担が企業に生じる可能性があります。

重要なのは、税額を正しく計算することだけではありません。

源泉徴収の対象を正しく判断し、必要な書類を整え、期限までに納付し、その完了まで確認する必要があります。

特に通常とは異なる高額取引や海外取引では、支払い前の税務チェックが重要です。

不納付加算税は、難しい税法解釈の間違いだけから発生するものではありません。

納付ボタンを押し忘れるような単純な事務ミスでも問題になる可能性があります。

だからこそ企業には、人の注意力だけに頼らず、期限内納付を確実にする仕組みが求められるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月28日朝刊 「書類遅れで14億円追徴 住友生命の教訓、地道なチェック不可欠」

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