オルタナティブ投資が個人にも広がると、新NISAで投資信託などを積み立てるだけでは不十分なのではないかと考える人もいるかもしれません。
機関投資家がPEや不動産などへの投資を増やしているのであれば、個人もオルタナ資産を積極的に持った方がよいように感じます。
しかし、新NISAを利用した資産形成とオルタナ投資では、そもそもの役割が違います。
大切なのは、どちらか一方を選ぶことではありません。
まず換金しやすく、幅広く分散された資産で資産形成の土台を作り、そのうえで必要に応じてオルタナ資産を組み合わせるという考え方があります。
新NISAは税制上の制度である
最初に整理したいのは、新NISAとオルタナ投資は同じ種類のものではないということです。
新NISAは、一定の条件のもとで投資による利益を非課税にする制度です。
一方、オルタナ投資は投資対象を分類する言葉です。
PEや不動産など、上場株式や債券といった伝統的資産以外への投資を指します。
したがって、
新NISAかオルタナ投資か
という二者択一で考えるものではありません。
税制上の制度と投資対象という違いを理解する必要があります。
資産形成の土台には分散が重要になる
長期的な資産形成では、特定の企業や資産へ集中するのではなく、幅広く分散することが重要です。
投資信託を利用すれば、少額から多数の企業や地域へ分散投資できる商品があります。
例えば、国内外の幅広い株式へ投資するインデックス型投資信託などを利用すれば、1つの商品を通じて多数の企業へ投資できます。
個別企業の成長を予測する必要もありません。
こうした分散された資産は、個人の長期的な資産形成の土台として利用しやすい特徴があります。
上場資産には換金しやすいという利点がある
上場株式や一般的な投資信託には、価格が変動するというリスクがあります。
しかし、必要になれば売却や換金ができます。
この流動性は個人投資家にとって重要です。
人生では予定外の支出が発生することがあります。
住宅、教育、介護などで資金が必要になることもあります。
そのとき、保有資産を現金へ戻せることには大きな意味があります。
長期投資だからといって、すべての資産の流動性を手放してよいわけではありません。
オルタナ投資には別の役割がある
一方、オルタナ投資には、上場株式や債券とは異なる役割を持たせることができます。
1つは、より高いリターンを狙うことです。
例えばPEでは、流動性リスクなどの追加的なリスクを引き受けることで、上場株式を上回るリターンを目指す場合があります。
もう1つは分散です。
不動産など、伝統的資産とは異なる収益源を持つ資産を組み入れることで、資産全体のリスクを分散できる可能性があります。
つまり、オルタナ資産は資産形成の土台そのものというより、既存の資産に別の性質を加える役割を持たせることができます。
土台より先にオルタナ投資を増やすとどうなるか
例えば、まだ十分な金融資産を形成していない段階で、資産の多くを途中解約できないオルタナ商品へ投資したとします。
その後、まとまった資金が必要になっても換金できない可能性があります。
また、少数の非上場企業や特定の不動産などへ集中していれば、十分な分散ができないこともあります。
高い期待リターンに引かれてオルタナ資産から投資を始めると、資産全体の流動性や分散が不足する可能性があるのです。
まず土台を作り、その後で必要な機能を追加するという順番が重要になります。
新NISAでは税制メリットも考える
新NISAには、投資による利益を非課税にできるという大きな特徴があります。
通常の課税口座では、株式や投資信託の売却益や配当などに税負担が生じます。
新NISAでは対象となる投資から得られる利益が非課税になります。
長期間運用するほど、利益に対する税負担の有無が最終的な資産形成に影響する可能性があります。
そのため、個人の資産形成では、期待リターンだけでなく税制上のメリットも含めて考える必要があります。
オルタナ投資は余裕資金との相性がよい
オルタナ投資、とりわけ流動性の低い商品に向いているのは、長期間使う予定のない資金です。
生活費として必要な資金。
近い将来に使う予定の資金。
緊急時に備える資金。
こうしたお金までオルタナ商品へ投資することは慎重に考える必要があります。
それらを確保したうえで、さらに長期間使わない資金があれば、その一部についてオルタナ投資を検討する余地が出てきます。
「余ったお金」というより、「長期間流動性を手放しても生活に影響しないお金」と考える方が分かりやすいでしょう。
オルタナ投資をしなくても資産形成はできる
機関投資家のオルタナ資産への投資比率が高まっているからといって、すべての個人投資家がオルタナ投資をしなければならないわけではありません。
上場株式や投資信託だけでも、幅広い地域や企業へ分散することは可能です。
さらに、債券などを組み合わせる方法もあります。
オルタナ投資は、資産形成に必ず必要なものではありません。
自分の投資目的を実現するために必要であれば利用するという位置付けで考えることができます。
商品ではなく資産全体を見る
新NISAの商品とオルタナ商品を1対1で比較するだけでは十分ではありません。
重要なのは資産全体です。
預金をどれくらい持っているのか。
株式や投資信託をどれくらい持っているのか。
不動産を保有しているのか。
近い将来に使う予定の資金はいくらあるのか。
そのうえで、オルタナ資産を追加すると資産全体のリスクや流動性がどう変わるのかを考えます。
新しい商品を追加すること自体が目的になってはいけません。
結論
新NISAとオルタナ投資は、どちらが優れているかを競うものではありません。
新NISAは投資による利益を非課税にする制度であり、オルタナ投資はPEや不動産などへの投資を指します。
個人の資産形成では、まず幅広く分散され、必要に応じて換金できる資産で土台を作るという考え方があります。
そのうえで、長期間使わない資金があり、高いリターンやさらなる分散という明確な目的がある場合には、オルタナ資産を組み合わせる余地があります。
重要なのは、機関投資家が利用しているからオルタナ投資をすることではありません。
自分の資産形成に不足している役割があるのかを考え、その役割を補うために利用することです。
オルタナ投資は資産形成の出発点ではなく、すでにある資産の土台へ必要に応じて加える選択肢の1つとして考えることが重要なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か