なぜ同じ非上場株式なのに人によって評価額が変わるのか 株主区分の基本編

税理士
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「同じ会社の株式なのに、株主によって評価額が違う。」

初めてこの話を聞くと、不思議に感じる人が多いでしょう。

土地や建物であれば、同じ不動産なら基本的に同じ評価額になります。しかし、非上場株式では、同じ株式であっても、その株式を持つ人の立場によって税務上の評価額が変わることがあります。

これは非上場株式の評価制度の大きな特徴であり、事業承継や相続を考える上で最初に理解しておきたいポイントです。

今回は、なぜこのような仕組みになっているのかを解説します。


株式そのものではなく「支配力」を評価する考え方

株式には、会社の利益を受け取る権利だけではなく、会社を経営する権利もあります。

株主総会では、

  • 役員の選任
  • 定款変更
  • 合併
  • 会社の解散

など、会社の重要な事項を決議します。

つまり、多くの株式を保有している人ほど、会社を動かす力を持っていることになります。

税務では、この「会社を支配する力」も株式の価値に含まれると考えています。

そのため、同じ株式でも、会社を支配できる株主が持つ株式と、経営にほとんど影響を与えられない株主が持つ株式では、価値が異なるという考え方が採用されています。


同族株主とは何か

会社を支配する立場にある株主を「同族株主」と呼びます。

一般的には、

  • 創業者
  • 創業者の家族
  • オーナー一族

などがこれに該当します。

これらの株主は、会社の経営方針を決定できる立場にあり、経営そのものに大きな影響力を持っています。

そのため、税務上も「支配権を持つ株式」として評価されます。

講義資料でも、相続税法上の評価では同族株主については会社規模に応じた原則評価方式を適用することとされています。


少数株主とは何か

一方で、少数株主は会社の経営を左右できない株主です。

例えば、

  • 親族から少しだけ株式を譲り受けた人
  • 元役員
  • 従業員
  • 少数の株式しか保有していない親族

などが該当することがあります。

こうした株主は配当を受ける権利はありますが、会社の経営を自由に決めることはできません。

税務では、このような株式は「投資として保有する株式」に近いものと考えられ、同族株主とは異なる評価方法が採用されています。


なぜ評価額が違うのか

会社を丸ごと買収できる株式と、わずかな持分しかない株式では、経済的な価値が同じとは言えません。

例えば、ある会社の全株式を取得すれば、

  • 社長を交代させる
  • 配当方針を変更する
  • 新規事業へ投資する

といった経営判断ができます。

しかし、全体の1%しか持っていない株主には、そのような権限はありません。

税務では、この違いを株価にも反映させています。

そのため、支配権を持つ株式の方が高く評価される仕組みになっているのです。


評価方法が変わる

同族株主と少数株主では、評価方法そのものが変わります。

同族株主は、

  • 類似業種比準価額方式
  • 純資産価額方式
  • これらを組み合わせた方法

などによって会社全体の価値を反映した評価を行います。

一方、少数株主は、一般的に配当還元方式によって評価されます。

つまり、「会社を支配する価値」を重視するのか、「配当を受ける価値」を重視するのかで、評価の考え方が異なるのです。講義資料でも、同族株主には原則評価、少数株主には配当還元方式を適用することが示されています。


売買価格にも影響する

この違いは、株式の売買にも大きく影響します。

例えば、少数株主が保有する株式をオーナー一族が買い取る場合、売る人から見た価値と、買う人から見た価値が異なることがあります。

そのため、「売る側では適正価格でも、買う側では低額取得になる」という税務上の問題が生じる場合があります。

講義資料でも、売主と買主で適用される評価方法が異なるケースでは、高額譲渡や低額譲渡の判定が複雑になることが説明されています。

この点は、非上場株式税務の中でも特に注意が必要な論点です。


事業承継では特に重要

事業承継では、後継者へ株式を集中させることが少なくありません。

この過程で、

  • 誰が譲るのか
  • 誰が取得するのか

によって評価額が変わる可能性があります。

つまり、「同じ株式だから同じ価格」という考え方では、思わぬ税務リスクを招くことがあります。

だからこそ、株主構成を確認しながら適切な評価方法を選択することが重要になります。


結論

非上場株式は、株式そのものではなく、「会社を支配する力」を含めて評価されます。

そのため、経営権を持つ同族株主と、経営への影響力が小さい少数株主では、同じ会社の株式でも税務上の評価額が異なることがあります。

この考え方は非上場株式評価の出発点であり、今後学ぶ原則評価方式や配当還元方式を理解するための土台になります。

次回は、同族株主に適用される基本的な評価方法である「原則評価方式とは何か」について、分かりやすく解説します。


参考

東京地方税理士会「非上場株式を譲渡・移転する場合の税務 自己株式を買取る場合の課税上の注意点」講義資料 江本尚浩税理士・東京国際大学非常勤講師

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