企業が子育てを支援するといっても、その取り組みが本当に充実しているのかを外部から判断するのは簡単ではありません。
育児休業制度があっても実際には取得しにくい会社もあれば、制度だけでなく長時間労働の削減や柔軟な働き方まで進めている会社もあります。
こうした企業の取り組みを一定の基準によって国が評価し、子育てを支援する企業であることを認定する仕組みが、くるみん認定です。
今後、新しい子育て支援企業の認定制度が検討されるなかで、まず理解しておきたい既存制度といえます。
くるみん認定の基本
くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づく制度です。
企業が従業員の仕事と子育ての両立を支援するための計画をつくり、実際に取り組んだうえで一定の基準を満たすと、厚生労働大臣の認定を受けることができます。
認定を受けた企業は、子育てサポート企業としてくるみんマークを使用できます。
重要なのは、単に育児休業制度を設けているだけで認定されるわけではないことです。
育児休業の取得状況や労働時間など、実際の働き方について一定の基準を満たす必要があります。
企業が制度をつくったかだけではなく、その制度が実際に利用され、仕事と子育てを両立できる職場になっているかを見る仕組みなのです。
一般事業主行動計画とは何か
くるみん認定を理解するうえで重要なのが、一般事業主行動計画です。
これは企業が従業員の仕事と子育ての両立を支援するために策定する計画です。
企業が何となく子育て支援に取り組むのではなく、一定期間の計画をつくり、その中で目標を設定します。
例えば、男性の育児休業取得を促進する、長時間労働を減らす、育児中の従業員が利用できる制度を整備するといった取り組みが考えられます。
計画を策定しただけで終わるわけではありません。
一定規模以上の企業には行動計画の策定や届出などが義務付けられており、計画に基づいて実際に取り組みを進めることになります。
その計画期間が終了した後、取り組みの結果が認定基準を満たしていれば、くるみん認定を申請できます。
つまり、計画をつくる、実行する、成果を確認する、認定を受けるという流れになっています。
育児休業取得率が重視される理由
くるみん認定では、育児休業を実際に取得できているかが重要になります。
特に注目されるのが男性の育児休業です。
制度上は男性も育児休業を取得できても、職場の雰囲気や業務上の問題から実際には取得しにくい企業もあります。
そこで、制度の有無だけではなく取得実績を見ることで、企業の子育て支援が実際に機能しているかを評価します。
男性が育児に参加しやすくなれば、女性だけに育児負担が集中する状況を改善することにもつながります。
女性が出産後も働き続けやすくなるため、企業にとっても人材の離職を防ぐ効果が期待できます。
育児休業取得率は単なる福利厚生の数字ではなく、企業の働き方そのものを見る指標になっているのです。
労働時間も認定に関係する
仕事と子育てを両立するには、育児休業だけでは十分ではありません。
育児休業から職場に戻った後、毎日のように長時間労働が続けば、保育園への送迎や家庭での育児との両立は難しくなります。
そのため、くるみん認定では労働時間に関する取り組みも重要になります。
残業時間を抑えたり、有給休暇を取得しやすくしたり、柔軟な働き方を導入したりすることが、仕事と子育ての両立につながります。
ここに、くるみん認定の特徴があります。
出産や育児という特定の期間だけを支援するのではなく、普段の働き方まで改善することが求められるからです。
子育て支援と働き方改革は別々の政策ではなく、実際には密接につながっています。
認定されると企業にどんなメリットがあるのか
くるみん認定を受けると、企業はくるみんマークを商品や広告、求人情報などに利用できます。
これによって、仕事と子育ての両立を支援している企業であることを外部に示せます。
特に大きいのが採用面です。
就職先を選ぶとき、給与だけでなく育児休業や柔軟な働き方などを重視する人もいます。
企業自身が子育てしやすい会社だと宣伝するだけでは、その実態を求職者が判断することは難しいでしょう。
国の認定制度があれば、一定の基準を満たしている企業であることを客観的に示しやすくなります。
子育て世代だけでなく、将来的に結婚や出産を考える若い世代への採用力にも影響する可能性があります。
離職防止にもつながる
企業にとって子育て支援が重要なのは、新しい人材を採用するためだけではありません。
すでに働いている人材を失わないためでもあります。
従業員が出産や育児を理由に退職すれば、企業はそれまで育成してきた人材を失います。
代わりの人材を採用し、一から教育するためには費用も時間も必要です。
育児休業を取得して職場に戻り、その後も無理なく働き続けられる環境を整備できれば、こうした人材流出を防ぎやすくなります。
人手不足が深刻になるほど、子育て支援は福利厚生ではなく人材戦略としての意味を強めます。
くるみんは企業内部の子育て支援を評価する制度
一方で、くるみん認定には明確な特徴があります。
基本的には自社で働く従業員に対する子育て支援を評価する制度だということです。
例えば、スーパーが子ども連れで買い物しやすい店舗をつくったり、住宅会社が子育て世帯向け住宅を開発したりしても、それ自体がくるみん認定の中心的な評価対象になるわけではありません。
ここが、こども家庭庁が2027年度の創設を目指している新しい子育て支援企業認定制度との大きな違いになります。
既存のくるみんが社内の従業員を中心に評価するのに対し、新制度では商品やサービスを通じて顧客や地域社会の子育てを支援する企業まで対象を広げようとしています。
企業の子育て支援という考え方そのものが、次の段階へ進もうとしているわけです。
結論
くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業を国が認定する制度です。
企業は一般事業主行動計画を策定し、育児休業の取得促進や労働時間の改善などに取り組みます。
そして一定の認定基準を満たせば、子育てサポート企業としてくるみん認定を受けることができます。
認定は単なるマークではありません。
採用力の向上、従業員の定着、企業イメージの向上などにつながる可能性があり、人手不足が進む日本では人材戦略としての意味も大きくなっています。
一方、くるみんが主として企業内部の従業員への支援を評価してきたのに対し、今後検討される新制度は商品やサービスを通じた社外への子育て支援まで評価しようとしています。
この違いを理解すると、政府が企業を活用した子育て支援をどこまで広げようとしているのかが見えてきます。
参考
日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 子育て向け商品・サービス提供企業に法人減税
厚生労働省 次世代育成支援対策推進法に基づくくるみん認定制度