NISA制度が始まって以来、多くの人が「まずは株式投資」「オルカンやS&P500に積立」という資産形成を始めました。長期的な資産形成という点では、とても良い流れだといえます。
一方で、資産が増えてくると新たな課題が生まれます。それは、「どう資産を守るか」という視点です。
現在のNISA制度では、個別の国債や社債は対象外ですが、一定の債券ファンドやバランスファンドなどを活用することで、債券への投資は可能です。
今回は、NISA時代だからこそ考えたい債券投資の役割について考えてみます。
NISAは株式だけの制度ではない
NISAというと、多くの人は株式や株式投資信託を思い浮かべます。
実際に人気商品の多くは国内外の株式を中心に運用する投資信託です。
しかし、NISAの本来の目的は「長期・積立・分散投資」を支援することです。
ここで重要なのは、「分散投資」です。
分散とは、地域を分けることだけではありません。
株式だけではなく、債券や現金など異なる性質の資産を組み合わせることも、本来の分散投資に含まれます。
債券は値動きを和らげる役割を持つ
株式市場は長期的には成長が期待できます。
しかし、その途中では何度も大きな下落局面を経験します。
暴落が起きたとき、株式だけで資産を保有していると精神的な負担は非常に大きくなります。
一方、債券は株式とは異なる値動きをすることが多く、資産全体の変動を抑える効果が期待できます。
つまり、債券は高い利益を狙うためではなく、資産全体の安定性を高めるために保有する資産なのです。
債券ファンドという選択肢
現在の制度では、個別の国債や社債はNISAの対象ではありません。
しかし、国内債券ファンドや海外債券ファンド、さらに株式と債券を組み合わせたバランスファンドには、NISAで購入できる商品があります。
こうした商品を利用すれば、非課税のメリットを受けながら資産全体のリスクを調整することができます。
特に投資経験が浅い方にとっては、自分で債券を選ぶよりも、分散されたファンドを利用する方が管理しやすい場合もあります。
年齢によって資産配分は変わる
20代や30代では、長い運用期間を生かして株式中心でも問題ないケースがあります。
しかし、退職が近づく50代、60代になると事情は変わります。
大きな下落が起きた場合、回復を待つ時間が限られるからです。
そのため、年齢やライフステージに応じて、徐々に債券などの安定資産を組み入れていく考え方も重要になります。
資産配分に正解はありませんが、自分の年齢や生活設計に合わせて見直していくことが長期的な資産形成につながります。
制度だけではなく運用全体を見る
NISAは非常に優れた制度です。
しかし、「NISAを使うこと」が目的ではありません。
本来の目的は、将来の生活を支える資産を着実に築くことです。
そのためには、NISA口座だけを見るのではなく、預貯金や企業年金、退職金、保険なども含めた資産全体を考える必要があります。
制度は資産形成を支える道具です。
その道具を最大限に生かすためには、全体最適の視点を持つことが欠かせません。
金利のある時代は債券の価値が変わる
長く続いた超低金利の時代には、債券の魅力はあまり高くありませんでした。
しかし、日本でも金利のある時代へ移行しつつあります。
金利が上昇すれば、債券の利回りも改善し、安定した収益を期待できる資産として再び注目されるようになります。
これからは株式だけではなく、債券も資産運用の重要な選択肢として考える時代になっていくでしょう。
結論
NISAの普及によって、多くの人が資産運用を始める時代になりました。
しかし、長期的な資産形成では「何を買うか」だけではなく、「どのように資産を配分するか」が重要になります。
債券は大きく資産を増やすための投資ではありませんが、資産全体を安定させ、長く運用を続けるための大切な役割を担います。
NISAという制度を上手に活用しながら、株式と債券をバランスよく組み合わせ、自分のライフステージに合った資産形成を考えることが、人生100年時代の安心につながるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年6月30日夕刊
株高の今こそ債券の出番 #十字路