高齢期の住まいを考える際、多くの人が気になるのが介護施設の費用です。
同じ「高齢者施設」といっても、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームでは費用の仕組みが大きく異なります。
なかでも重要なのは、どの施設が公的介護保険を中心とした制度型の施設であるか、あるいは民間サービス型の施設であるかという点です。この違いが、入居費用や月額費用の水準に大きく影響します。
本稿では、代表的な高齢者施設である特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームの費用構造とその違いを整理します。
特別養護老人ホームの費用構造
特別養護老人ホーム(特養)は、公的介護保険制度に基づく代表的な介護施設です。
社会福祉法人などが運営し、要介護3以上の高齢者が対象となります。
特養の費用は、大きく次の4つで構成されています。
1 介護サービス費
2 居住費
3 食費
4 日常生活費
介護サービス費は、介護保険の対象となる部分であり、利用者は原則として1割(一定所得以上は2割または3割)を自己負担します。
居住費と食費は施設生活にかかる実費部分です。
これらは所得に応じて負担軽減制度があり、低所得者の場合は大幅に減額される場合があります。
その結果、特養の月額費用は概ね次のような水準になります。
・低所得者 6万~8万円程度
・一般所得者 10万~15万円程度
民間の施設と比べると費用が低く抑えられるため、入居希望者が多く、地域によっては長い待機期間が生じています。
介護老人保健施設の費用構造
介護老人保健施設(老健)は、病院と自宅の中間に位置づけられる施設です。
リハビリテーションを中心に、在宅復帰を目指すことを目的としています。
対象は要介護1以上の高齢者で、医療ケアとリハビリを受けながら生活します。
費用の構造は基本的に特養と同じで、次の4つで構成されます。
1 介護サービス費
2 居住費
3 食費
4 日常生活費
ただし、老健は在宅復帰を前提とした施設であるため、入所期間は3か月程度を単位とした利用が一般的です。
月額費用の目安は、特養とほぼ同程度であり、概ね10万~15万円程度です。
ただし、医療的ケアやリハビリ内容によって費用が増える場合もあります。
また、長期入所を前提とした施設ではないため、終身利用の施設としては位置づけられていません。
有料老人ホームの費用構造
有料老人ホームは民間事業者が運営する高齢者施設で、費用構造は公的施設とは大きく異なります。
費用は主に次の2つに分かれます。
1 入居一時金
2 月額利用料
入居一時金は、数十万円程度から数千万円まで幅があります。
高級施設では1億円近い入居金が設定される場合もあります。
月額利用料は以下の費用で構成されます。
・家賃相当額
・管理費
・食費
・介護サービス費
月額費用の目安は施設のグレードによって大きく異なりますが、概ね次の水準です。
・低価格型 15万~20万円
・中価格帯 20万~30万円
・高価格帯 30万円以上
介護付き有料老人ホームの場合は、施設内で介護サービスを受けることができます。一方、住宅型有料老人ホームでは外部の介護サービスを利用する形になります。
民間施設であるためサービス内容の自由度が高く、設備や食事、レクリエーションなどが充実している施設も多いのが特徴です。
費用構造の違いが意味するもの
これら3つの施設を比較すると、費用水準の違いは制度の違いに由来していることが分かります。
特養と老健は公的介護保険制度を中心とした施設であり、費用が比較的低く抑えられています。
一方、有料老人ホームは民間サービスとして提供されるため、施設ごとに価格やサービス内容が大きく異なります。
この違いは、入居のしやすさにも影響します。
費用が低い特養は入居希望者が多く、待機者問題が生じています。
それに対して、有料老人ホームは費用が高い分、比較的入居しやすい傾向があります。
結論
高齢者施設の費用は、施設の種類によって大きく異なります。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設は公的制度に基づく施設であり、比較的低い費用で利用できます。一方、有料老人ホームは民間サービス型の施設であり、費用は高くなるものの、サービス内容や住環境の選択肢が広がります。
老後の住まいを考える際には、単に費用の安さだけでなく、介護度、生活スタイル、将来の介護状態などを総合的に考えることが重要です。
高齢期の住まいは長期間にわたる生活基盤となるため、それぞれの施設の特徴と費用構造を理解したうえで、自分に合った選択を検討することが求められます。
参考
日本FP協会
FPジャーナルONLINE
畠中雅子「高齢者施設の種類と費用に関する解説記事」
厚生労働省
介護保険制度の概要資料
