2026年4月から、新しい制度として「子ども・子育て支援金制度」が始まります。
少子化対策の財源を確保するための仕組みであり、健康保険料に上乗せする形で徴収される制度です。
名称に「支援金」とあるため、国から給付される制度と誤解されることがありますが、実際には社会保険料と同様に国民から徴収される財源です。健康保険の加入者であれば、子どもの有無にかかわらず原則として負担することになります。
この制度は企業の給与計算や従業員の手取りにも影響するため、実務上の理解が重要です。本稿では制度の背景、仕組み、そして家計や企業実務への影響について整理します。
子ども・子育て支援金制度の背景
この制度の背景には、日本の急速な少子化があります。
政府は2023年に「こども未来戦略」を策定し、児童手当の拡充や育児休業給付の強化など、さまざまな少子化対策を打ち出しました。その財源を安定的に確保するために創設されたのが「子ども・子育て支援金制度」です。
少子化対策は長年にわたり議論されてきましたが、財源問題が常に課題でした。今回の制度は、社会保険料の仕組みを利用することで、広く国民から財源を確保する設計となっています。
つまり、この制度の本質は
・少子化対策の恒久財源の確保
・社会保険方式による広範な負担
・子育て支援政策の財政基盤の安定化
という3点に整理することができます。
支援金の仕組み
支援金は、健康保険料に上乗せする形で徴収されます。
会社員など被用者保険に加入している場合は、給与から天引きされる形になります。
自営業者など国民健康保険の加入者は、国民健康保険料と一緒に納付する仕組みです。
対象者は健康保険の被保険者であり、次のような条件は関係ありません。
・既婚か独身か
・子どもの有無
・国籍
・雇用形態
つまり、健康保険の加入者であれば基本的にすべての人が負担する制度です。
2026年度の料率は0.23%とされており、労使折半となるため、従業員の自己負担は0.115%です。
また、この料率は段階的に引き上げられる予定であり、2028年度にはおおむね0.4%程度になる見込みとされています。
実際の負担額のイメージ
支援金は社会保険料と同様に、標準報酬月額に料率を掛けて計算されます。
例えば次のようなイメージになります(2026年度)。
月収10万円程度
自己負担額 約113円
月収30万円程度
自己負担額 約345円
月収50万円程度
自己負担額 約575円
月収70万円程度
自己負担額 約816円
個々の負担額はそれほど大きくないように見えますが、企業側は同額を負担するため、企業コストとしては無視できない影響があります。
たとえば平均賃金50万円の企業で従業員100人の場合、年間で数十万円規模のコスト増になる計算です。
企業実務への影響
この制度は企業の給与実務にも影響します。
まず、給与計算システムの対応が必要になります。
支援金は社会保険料と一体で徴収されるため、給与計算システムが新制度に対応しているかを確認する必要があります。
また、賞与からも徴収対象になる点にも注意が必要です。
さらに、育児休業中など社会保険料が免除される期間は、支援金も同様に免除される扱いになります。
企業としては、次の点を事前に確認しておくことが重要になります。
・給与計算システムの対応
・賞与計算の設定
・給与明細の表示方法
・従業員への周知
従業員への周知の重要性
支援金制度は給与から天引きされるため、従業員の手取り額に影響します。
制度を知らないまま給与が減少すると、企業への不信感につながる可能性もあります。そのため、制度の概要や負担額のイメージを事前に説明しておくことが重要です。
特に、次の点は誤解が生じやすい部分です。
・独身者だけが負担する制度ではない
・子どもがいなくても負担する
・会社が独自に決めた制度ではない
こうした点を丁寧に説明することで、制度開始時の混乱を防ぐことができます。
賃金規程への影響
企業によっては賃金規程への影響も考えられます。
ただし、支援金は社会保険料と同様に法律に基づく控除項目であるため、必ずしも賃金規程を改定する必要はありません。
多くの企業では
健康保険料
厚生年金保険料
雇用保険料
といった形で法定控除項目をまとめて記載しています。
この場合は、健康保険料の中に支援金を含めて扱うことも可能です。
ただし、制度への理解を促すために、給与明細などで内訳を明示する企業も増えると考えられます。
結論
子ども・子育て支援金制度は、日本の少子化対策のための新しい財源制度です。
社会保険料に上乗せする形で広く国民が負担する仕組みであり、2026年から本格的に運用が始まります。
個々の負担額は小さいものの、全国規模では大きな財源となり、児童手当の拡充や育児支援施策の財政基盤を支える役割を担うことになります。
一方で、給与からの天引きという形をとるため、企業実務や従業員の手取りにも影響します。制度の趣旨や仕組みを正しく理解し、企業としても従業員への周知や給与実務の準備を進めていくことが重要になります。
参考
企業実務 2026年3月号
寺島有紀「子ども・子育て支援金制度 給与計算・規程・社内周知のポイント」

