近年の日本では、長く続いた低金利環境が変化し、物価の上昇が家計に重くのしかかる状況が続いています。
食料品や光熱費などの生活必需品の価格が上昇する一方、家計の収入がそれに追いつかない家庭も少なくありません。
こうした状況のなかで、カードローンなどの無担保融資への依存が徐々に強まっています。
日本信用情報機構のデータによれば、2026年1月時点で貸金業者から3件以上の借り入れをしている人は151万人となり、12年ぶりの水準に達しました。
多重債務問題は2000年代に社会問題となりましたが、近年は再び注意すべき状況に近づきつつあります。本稿では、多重債務が増えている背景と、カードローンの仕組み、そして金利リスクについて整理します。
多重債務者が再び増えている
個人向け融資をめぐっては、1990年代後半から2000年代初めにかけて消費者金融の過剰貸し付けが問題となり、多くの自己破産者が生まれました。統計上のピークは2007年で、多重債務者は443万人に達していました。
この状況を受け、貸金業法の改正によりいわゆる「総量規制」が導入されました。
総量規制とは、個人が貸金業者から借りられる金額を年収の3分の1までに制限する制度です。この制度により、多重債務者の数は大きく減少しました。
しかし、足元では再び増加傾向がみられています。2026年1月時点で、貸金業者から3件以上の借り入れがある人は151万人に達しました。これは2014年以来の水準です。
背景として指摘されているのが、物価上昇による家計の逼迫です。生活費を補うための借り入れが増えていると考えられています。
既存利用者の借入額が増えている
カードローンの利用者数が急増しているわけではありません。
むしろ、既存利用者の借入額が膨らんでいることが特徴とされています。
ある調査では、カードローン利用者の平均借入額は約74万円となり、2年前と比べて2割近く増加しました。利用口座数は大きく増えていないため、一人あたりの借入額が増えていることがわかります。
生活費の不足を補うため、カードローンを追加で利用するケースが増えていると考えられます。借入先を増やしながら返済を続ける、いわゆる自転車操業に近い状態になる人も出てきています。
スマホ決済と少額融資の拡大
近年の特徴として、従来型の消費者金融だけでなく、スマートフォン決済サービスなどを通じた少額融資が拡大しています。
フリマアプリなどのサービスでは、分割払いや後払い、少額融資などの機能が提供されています。こうしたサービスの融資残高は急速に拡大しています。
スマートフォンだけで簡単に借り入れができる利便性は、資金調達のハードルを大きく下げました。インターネット経由であれば数分で借り入れが可能なサービスもあり、資金不足をすぐに補える仕組みが整っています。
一方で、こうした利便性の高さは、借り入れへの心理的抵抗を弱める側面もあります。
カードローンの金利構造
カードローンの金利は、住宅ローンなどと比べて高く設定されています。
無担保融資であるため、金融機関がリスクを織り込んで金利を設定しているためです。
消費者金融による無担保貸付の平均約定金利は、2025年末時点でおよそ15%台とされています。
この水準の金利では、借入残高が大きくなるほど利息負担も急速に増加します。
例えば、100万円を年15%の金利で借りた場合、単純計算でも年間15万円程度の利息が発生します。返済期間が長期化すれば、支払う利息の総額はさらに増えていきます。
金利上昇がもたらすリスク
近年、日本銀行は金融政策の転換により金利を引き上げる方向に動いています。
市場金利の上昇は、消費者金融の貸出金利にも徐々に影響を与えます。
金利が上昇すると、毎月返済していても元本が減りにくくなる可能性があります。
その結果、返済期間が長期化し、追加の借り入れにつながるリスクが高まります。
多重債務の問題は、単に借入件数の増加だけでなく、金利負担の累積によって深刻化する特徴があります。
結論
多重債務問題は、かつて日本社会で大きな課題となりました。
貸金業法の改正や総量規制の導入により状況は改善しましたが、近年は再び増加の兆しが見え始めています。
背景には物価上昇による生活費の増加、スマートフォンを通じた借り入れの容易さ、そして高金利のカードローンの存在があります。
借り入れは家計を一時的に支える手段にはなりますが、金利負担が重くなれば返済が長期化し、多重債務につながる可能性があります。
物価上昇が続くなかで、家計の資金管理や金融リテラシーの重要性はますます高まっているといえるでしょう。
参考
日本経済新聞
「物価高でカード借金増 多重債務者、12年ぶり高水準」
2026年3月6日 朝刊
日本信用情報機構 公表資料
日本貸金業協会 統計資料

