働き方改革5年の検証――労働時間規制は現実に合っているのか

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働き方改革関連法が施行されてから、2024年で5年が経過しました。
この法律は、長時間労働の是正や多様な働き方の実現を目的として導入されたものですが、制度の実態と現場のニーズの間には、依然としてズレがあると指摘されています。

2026年3月、厚生労働省は働き方改革の実態を把握するため、企業や労働者への調査結果を公表しました。そこでは、労働時間を「増やしたい」と考える企業や労働者が一定数存在することや、裁量労働制に対する制度上の制約への不満などが明らかになりました。

本稿では、この調査結果をもとに、働き方改革の現状と制度上の論点について整理します。


働き方改革と労働時間規制の枠組み

働き方改革関連法は2019年に施行され、日本の労働政策の大きな転換点となりました。主な内容は次のとおりです。

  • 時間外労働の上限規制の導入
  • 同一労働同一賃金の導入
  • 高度プロフェッショナル制度の創設
  • 年次有給休暇の取得義務化

特に注目されたのが、時間外労働の上限規制です。
これにより、原則として残業時間は月45時間・年360時間以内とされ、特別な事情がある場合でも年720時間が上限とされました。

この制度は長時間労働の是正を目的としていますが、業種によっては業務の実態と合わないという指摘もあります。


企業の16.2%が「労働時間を増やしたい」と回答

厚生労働省の調査では、企業327社のうち53社、割合にして16.2%が「労働時間を増やしたい」と回答しました。

特に回答が多かったのが

  • 運輸・郵便業
  • 建設業

といった業種です。

これらの業界では、次のような理由が挙げられています。

  • 天候など外部要因で作業が遅れる
  • 繁忙期に業務量が急増する
  • 工期や納期の制約が強い

つまり、業務の性質上、労働時間を完全にコントロールすることが難しいという事情があります。

働き方改革は長時間労働の抑制を目的としていますが、産業構造や業務特性によっては、画一的な規制が現場の柔軟性を制限している可能性もあります。


労働者側でも「もう少し働きたい」が一定数存在

調査では、労働者3000人を対象にしたアンケートも実施されました。

その結果、労働時間を

  • 増やしたい
  • やや増やしたい

と回答した人は315人、割合にして10.5%でした。

ただし、望ましい残業時間については

  • 45時間以下:93.0%

となっており、長時間労働を容認する意見は少数派です。

法定上限を超える残業を許容する回答は

  • 80時間超100時間未満:0.9%
  • 100時間以上:1.4%

にとどまりました。

この結果からは、長時間労働そのものを望む人は少ないものの、収入やキャリアの観点から、一定程度の労働時間増加を望む層が存在することが分かります。


副業・兼業の広がり

今回の調査では、副業・兼業の実態も明らかになりました。

副業・兼業をしている人は342人で、割合は11.4%でした。

政府は副業・兼業を

  • 労働者の所得向上
  • 人材の流動化
  • イノベーション促進

といった観点から推進しています。

ただし、副業の普及は、実質的に「労働時間の増加」を意味する場合もあります。
そのため、労働時間規制と副業推進政策の関係をどう整理するかは、今後の政策課題の一つといえるでしょう。


裁量労働制への不満と制度見直し

企業からは裁量労働制に対する制度上の制約についても意見が出ています。

特に指摘されているのが

  • 対象業務が限定的
  • 国際競争力の観点で不利

という点です。

裁量労働制は、労働時間ではなく成果を重視する制度ですが、日本では対象業務が限定されているため、利用が広がっていません。

政府は現在、裁量労働制の見直しを検討しており、

  • 日本成長戦略会議
  • 労働政策審議会

などで議論が進められています。

高市早苗首相は2026年2月の施政方針演説で、働き方改革の総点検を踏まえ、制度の見直しを検討する考えを示しています。政府は夏までに一定の方向性を示す方針です。


結論

働き方改革は長時間労働の是正という点では一定の成果を上げました。しかし、今回の調査からは、制度と現場の実態の間にギャップがあることも浮き彫りになりました。

特に

  • 業種ごとの業務特性
  • 労働者の収入ニーズ
  • 副業の拡大
  • 成果型労働への移行

といった要素は、今後の制度設計において重要な論点となります。

労働時間規制は、労働者保護の観点から重要な制度ですが、同時に経済活動の実態や働き方の多様化にも対応する必要があります。今後の制度見直しでは、画一的な規制から、より柔軟な働き方を可能にする仕組みへの転換が議論の焦点となる可能性があります。

参考

日本経済新聞
労働時間「増やしたい」16.2% 働き方改革、厚労省が企業調査(2026年3月6日)
厚生労働省 働き方改革関連法の施行状況に関する調査資料
厚生労働省 裁量労働制に関する制度資料

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